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156 炎の中の救世主

 前世の私はクリエイターだった。

 色々と手掛けたが、その中でも数作目からの“ドラゴンズ・スターシリーズ”のシナリオ、脚本は私の手がけた物だ。

 最初の頃は『トラノコプロ』のプロアニメ脚本家に脚本を頼んでいた事もある。

 キャラクターデザインの人はその縁からの紹介だった。


 だが、数作目からは自社ブランドの価値を高める為に社内で大体の作品を仕上げる事になった。

 堀口さんから最初に脚本を任された時は死ぬほど大変だったが楽しい物でもあった。

 私が主にしたのは『王道の中のどんでん返し』いきなり大ピンチになりつつもきっかけをどこかに用意していてそれを元に形勢逆転するシナリオだった。


 つまり、今回もそれをリアルにやろうとしているのだ。

 私の頭の中には現在ドット絵に転換された自身の姿がイメージされている。

 救世主であるはずの私が捕まり、誰も助け出す事が出来ない、どう考えても大ピンチである。

 しかしレジストベルトに銀狼王のマント、このSS級装備はこの程度の火では焦げすらつかない。

 私が無事なだけではインパクトが弱いのだ。

 救世主の奇跡、それは身に着けた物すら全くの無傷である事。

 後は時間の経過を待つだけだ。


「くっくっくっく、偽りの救世主め、もう骨まで焼けたかな……」

「救世主様ぁー! わしらのために、何という事じゃ」

「ユカ様……酷いですよ、僕達に相談すらなく……」


 炎の中でかすかに人の声が聞こえる。

 そして炎の燃える音が少し弱まってきた、どうやらかけられた油が燃え尽きたようだ。


 私はあえて動かずにその場に立ち止まってみた。

 そして炎は消えた、しかし下は熱い鉄板が燃え滾っている。


「な、何故だ!? 何故火が消えた!!!???」


 さて、そろそろ演出開始かな。


「邪悪なるものよ、我は救世主なり。このような邪悪な炎で我を燃やせると思うな!」


 私は仰々しく燃え滾る鉄板の上から大声で叫んだ。


「ひええええ! これは細工だ、何か細工があるに違いない!!」


 インチは燃え滾る鉄板の傍に来て私の足元を調べようとした。

 その時、なんとインチの服の裾に火が燃え移ったのだ。


「インチ様!!」

「ぎゃあああー!! 熱い! 熱いー!!!」


 インチは火だるまになり、自らが服を脱げずに踊り狂った。

 自業自得である、インチは炎に包まれてその場に倒れ込み、力尽きてその場で火葬されてしまった。

 馬鹿である、策士が策に溺れたわけだ。


 私は鉄板から降り、人々に語り掛けた。


「インチは死んだ、彼はヘクタールと同じ公爵派貴族の手下だった!」


 しかし、インチは見た目だけは善政をしていたようで私達は村人に囲まれてしまった。


「よくもインチ様を、俺達はインチ様のおかげでまともな生活が出来てたんだぞ」

「それは違う!!」


 村人を否定したのはホームだった。


「みんな、よく考えてくれ。本当に善政を布く人物なら何故このような処刑道具を用意している?」

「それは……罪人を処刑する為かと」

「善政を布いていて税金が払えない者がいないならこのような見せしめの処刑道具は必要なかろう! お前達は騙されていたのだ!」

「その通りです、私達は救世主様に救われました。そのような方を殺そうとするとは」

「この方は本物の救世主です、燃え盛る炎の中で全く無傷だった。このような奇跡を起こせる人間なんているわけがない!」


 演出は大成功だ、炎の中で無傷だった見た目は誰しもに私の凄さを見せつける形になった。

 説得された村人達は持っていた武器を投げ捨て、私の前に跪いた。


「救世主様、申し訳ございませんでした」

「大丈夫だ、それよりも頼みたい事がある」


 私達は村で一番速い馬を用意してもらい、急いでヘクタールを倒す為に戻る事にした。

 村には万が一の時の為にシートとシーツが残り、私達がここに戻るまでは番犬として村人達を守ってくれる事になった。


 さあ、急いでヘクタールの所に戻ろう!

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