154 人質を救え!
食屍鬼やゾンビは帝国騎士団が抑えてくれている。
そして領民達は騎士団の人達が近隣の村まで避難させてくれた。
私達はヘクタールの屋敷に向かって囚われている人質を助け出す!
幸い、ゾンビや食屍鬼は動きが緩慢だったのでコイツらよりは先に人質を助ける事は出来るだろう。
「急いでヘクタールの屋敷に向かおう!!」
「了解です!」
私達は急いでヘクタールの屋敷に向かった。
屋敷の中には従者達がいて働いていた。
「皆さん、ここは危険です! ボク達が必ず助けますから信じてください」
「救世主様、わかりました。私達は貴方様を信じます」
従者達は私を救世主だと認識しているので説得は早く済んだ。
しかし、ここにいるのは全員が宿舎の人間とは限らない、実際ヘクタールの兵が侵入者だと認識した私達に攻撃をしてきた。
「茨の呪縛」
マイルさんは庭の草木や植木を使い、ヘクタールの兵士を捕えてくれた。
急いで人質を助け出さなくては!
私達は一階、二階を調べた。しかし人質はどちらの階にもいなかった。
「地下だ! みんな地下に急ごう!!」
私達はヘクタールの屋敷の地下室を従者の人に鍵を開けてもらい探索する事にした。
しかし追手が来ると困るのでマイルさんとフロアさん、シートとシーツは上の階に残ってゾンビ達を迎え撃つことになった。
◆
地下室はひんやりとしており、辺りには異様な瘴気を感じる空気が漂っていた。
「ユカ……ここはとても辛い場所です。せめて私の力で……」
エリアは意識を高め、祈りだした。
私達の周りだけだがエリアを中心に空気が少しだけ正常になったので歩きやすくはなった。
地下室を進むととても広い場所に出た。
ここは元々の地下洞窟に少し手を加えて地下牢にした場所のようだ。
上の屋敷よりよほど広い空間がある、確かにここなら何十人何百人でも収容可能だ。
少し奥まで歩くとそこからは人の気配を感じた。
「誰だ!」
「スリープ」
ルームの魔法で監視役は眠ってしまった。
そして私は監視役の懐から鍵を取り出し、人質を檻から出した。
「ホーム様、お久しゅうございます」
「アマニュエ! 無事だったんだね」
「ええ、私は無事です、ですが大勢の者が空腹や病気に耐えれず……」
「そうか……助けに来れなくて済まなかった」
「いいえ、いつか伯爵様からの助けが来て下さるのを私は信じておりました」
ホームは無事領民達と再会できていた。
そしてエリアはこの場所でも祈りを捧げていた。
「思い半ばに力尽きた悲しき魂に安らぎを与えたまえ……レザレクション」
「おお、これは奇跡だ」
「まさしく聖女様……ありがとうございます、ありがとうございます」
エリアのレザレクションで助けが来る前に力尽きた魂達は浄化され、天に昇って行った。
だがこの地下洞窟からはこの場所以外にもいくつもの瘴気が漂う場所がある。
しかし今はそれに構っている場合ではない。
私達は人質を引き連れ、地下室を脱出した。
一階に出てきた私達は丁度マイルさんやシート、シーツ達がゾンビや食屍鬼の群れと戦っている場所に鉢合わせた。
「遅いよ、こっちも必死だったんだよ!」
「グルルルル!」
食屍鬼、ゾンビ達は倒しても倒しても再生する。
このままではじり貧だ、だからとワープ床で人質を逃がしたとしてもワープ先にゾンビ達が来たらもっと大変な事になる。
「ユカ。私に任せて……」
「エリア、君なら出来るの?」
「ええ……邪悪なる戒めに囚われし者達よ、その因果を解き放ちあるべき姿へと還れ……レザレクション!」
「「「グギャアアアアァア!!」」」
エリアのレザレクションによる浄化はその場にいた食屍鬼、ゾンビを全て消滅させた。
「みんな、ここを脱出するよ!!」
私達はゾンビのいない方向の村に人質とヘクタールの従者を連れて脱出する事になった。