152 降り注ぐ流星
私達は貴族の取り巻きを次々と倒した。
所詮は少し良い装備をしただけの有象無象に過ぎない。
何度も強敵と死闘を繰り広げた私達とは経験が違うのだ。
唯一若いと言っても良かったパティオ子爵は右腕を斬り飛ばされてリタイヤ。
他の貴族はブクブクに太った肥満体や服薬でガリガリの戦力外しかいない。
「ひいいいいいー! 金なら、金ならいくらでもやるっ」
「何が望みだ? 土地ならいくらでもくれてやる、だからワシを助けろ」
自己保身のクソ貴族どもは我が身可愛さに私達に取引をもちかけてきた。
コイツらの安っぽいプライドなんて所詮その程度である。
「貴様! ヘクタール、何だこの有様は!!」
「ひいいぃぃ、申し訳、申し訳ございません」
ヘクタールが他の貴族にコメツキバッタの様に涙と鼻水を垂れ流しながら平謝りしている。
「もういい、貴様は改易だ。公爵閣下にももう伝書鳩は送った」
「それだけは、それだけはご勘弁をっ!!」
所詮腐敗貴族の社会も上には逆らえない、どこの腐敗組織も全く同じだ。
私は『トライエニアックス』の株主総会でこれと全く同じ光景を見た事がある。
前総責任者だった『トライア』副社長の堀口氏はスポンサーの横暴により自身の意図とは全く関係ない作品にされて大赤字になった“劇場版ドラゴンズスター”の件により株主総会でやり玉にあげられて土下座を強要されたのだ。
その後、堀口氏は更迭、その後どこかの部署の閑職に回されてしまった。
ヘクタールはもうオシマイだろう。
だがそれで彼の罪が許されるわけではない。
公爵派の腐敗貴族は今のうちに全員一網打尽にする必要があるのだ。
「クソおおおお、何故オレがこのような事にぃぃぃ!」
ヘクタールはポケットの中から指輪を取り出した。
「これはポディション商会のフィートから献上された死者の指輪だ!」
「!!? あれは!」
「貴様ら全員くたばれ……! オレだけでは破滅せんぞ!」
ヘクタールが死者の指輪を右手の指にはめた、そしてどす黒い光が辺りを包んでゆく。
「クハハハハ、死ね、全員死ねぇ!」
どす黒い光が倒れたヘクタールの親衛隊や貴族の私兵を包み込んだ。
そして死んだはずの兵士は再び立ち上がった。
「ヒイイイイイー」
残っていた公爵派貴族は我が身可愛さに全員がその場を一目散に逃げだした。
ヘクタールの身体がどんどん色が変わっていく、そしてその血は青い色になっていた。
「そうだ、やはりオレは選ばれた青い血の貴族なのだ! クハハハハ!」
ヘクタールの兵と貴族の兵は意志を持たないゾンビとしてよみがえった。
そして死者の指輪は処刑された死刑囚の白骨をも復活させた。
「フン、死人でもオレの為に働け、死んでも働けぇ!」
だが、白骨たちは私達ではなくヘクタールに襲いかかった。
「何故だ、クズ共、貴様の敵はあそこにいるぞ!」
この白骨達はヘクタールの横暴で処刑された者達だ、当然私達に恨みがあるわけではなく誰よりもヘクタールを憎んでいる。
「ギャアアア」
ヘクタールの左手が骸骨達に折られた、そしてその腕からは青い血が垂れ流されている。
「貴様ら、オレは王だ、死者の王ナノダ!!!」
ヘクタールが指輪の魔力を高めた、すると白骨達は自らの意思を失いその場に崩れ落ちた。
「クハハハハ、王ニ逆ラウカラダ、貴様ラハ死ンデモオレノ奴隷ダ」
どうやらヘクタールはもう人間ではないらしい、そしてヘクタールは死者を集めて巨大な骸骨のゴーレムを作った。
「何だアレは!?」
「死ヌガヨイ!」
巨大骸骨が私達に襲いかかろうとした!
その時、遥か空の彼方から収穫祭会場めがけて流星が降り注いだ。
「ユカ様! 皆様集まって!! プロテクトドーム!!」
ルームが降り注ぐ流星を察知し、私達全員と領民を守る為に光のドームを作った。
流星は辺り一面をことごとく打ち砕き、骨のゴーレムも粉々になった。