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151 気まぐれ魔女の戯れ

 私達は貴族の取り巻きの兵とヘクタールの親衛隊に囲まれた。

 しかしこの程度の兵隊、あの大量の盗賊に比べればザコも同然。

 少し良い武器を持っただけのレベル10前後の連中しかいない。

 それに公爵派貴族の中で一番強かったはずのロビーネはもういない。


 つまり私達が負けるわけがないのだ!


「ぶった……コイツ、ワタクシを打ちましたわ! ふざけるな田舎貴族! お前なんて! お前なんてー」


 激昂したローサがホームに取っ組みかかろうと飛び掛かっていた。

 しかしホームはローサを軽く躱した。

 勢いよくホームに飛び掛かろうとしたローサは熱く焼けた鉄板の上に転倒した。


「ギャアアアアアーーーッ!!!」

「ローサァアアアー!!!」


 肉の焼ける臭いがする、ローサは前面の鉄板に倒れ込んだので体の前面を大火傷してしまった。


「痛いー、熱いーーー」

「ローサァーーー」


 血も涙も無いはずのパティオ子爵が涙を流しながらローサの下に駆け寄った。


「イグレシア枢機卿殿、貴方ならローサを救えますよね」

「え、ええ。神よ、汝の僕たる我らに力を、ヒール」


 ローサはイグレシア枢機卿の魔力で一命はとりとめた。

 だが、大火傷を負った彼女は二度と見るに堪えない姿になってしまった。


「貴様ァ! よくも私の可愛いローサを」

「自業自得ですよ、彼女は前も見ずに僕に飛び掛かってきたんです」

「殺す! 貴様は絶対に殺す!!」


 半狂乱のパティオ子爵がやたら滅多にホームに切りつけてきた。

 しかし、レベル的にはロビーネの方がよほど上だと言える。

 パティオ子爵は人間狩りの名人だ、だがそれはあくまでも低レベルの一般人を追うだけの事であり、歴戦の死闘を繰り広げたホームに比べれば児戯に等しい。


「人間狩りのパティオ! その腕奪わせてもらいます!!」


 一閃でパティオ子爵の右腕を斬り捨てたホームの魂の救済者(ソウルセイバー)が光り輝いた。

 幾多の人間を狩ってきたパティオ子爵の右手は斬り飛ばされ、その手は焼けただれた鉄板の上に落ちた。


「私の、私の腕がぁー」

「パティオ殿!! 今お救いしますぞ、ヒール」


 イグレシア枢機卿の魔力でパティオの腕は止血されそれ以上のダメージにはならなかった。子爵の血も赤かったのだが動揺した連中はそれすらも気が付かなかったらしい。

 だがどうやら枢機卿とまで呼ばれるイグレシアが使えるのはせいぜいヒールでしかない。

 エリアの力がどれくらい桁外れなのかという事を私は確信した。

 そのエリアは先程ローサに打ち据えられて瀕死の子供の前にいた。


「聖なる力よ、この傷つきし小さな者を癒す力を我に……レザレクション!」

「!!??」


 エリアはレザレクションで瀕死だった子供を傷一つ無いように治癒した。


「魔女だ、この者は神の意志を冒涜し命の定めを弄ぶ魔女だ!!」


 イグレシア枢機卿はエリアの膨大な魔力によるレザレクションを目にし、かなり動揺しているようだった。


「魔女を殺せ 魔女を殺せ!!」


 ヘクタールの親衛隊と貴族の私兵達がエリアを取り囲もうとした。

 しかしそんなエリアを守ったのはシートとシーツの二匹の狼だった。

 そしてフロアさんは屠殺される前だった牛や豚等を奮い立たせ、仲間を食べた貴族にその怒りをぶつけさせた。


 さて、私も本気を出すかな!


「貴族の前にいる領民達の床を高い場所にチェンジ! そしてその前に壁を作成!」


 私は貴族の人質に取られない様に領民達を壁で囲んだ上で手の届かない場所に床の高さを変更した。


 その光景を見ていた鳥がいる。

 その目に映された光景は魔術で遠く離れた謎の城の水晶玉に映されていた


◇◇◇


「退屈しのぎに何か面白い事は無いかと見ておったが、思った以上に面白いねェ、あの子達」


 水晶玉を見ていた妙齢の女性は年齢を感じさせない若々しさで微笑んでいた。

 そして彼女は空中に浮かせていた自身の杖を手元に手繰り寄せ、杖を構えるとクルッと杖を回転させた。


「さて……(わらわ)も手を貸してやるかねェ……流星よ、ここに有れ」


 謎の女性は鳥のいた場所から攻撃地点を把握し、絶大な魔力を空に向けて放った。


「さあ、誰が避けられるかねェ、コメット……フォール!」

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