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148 貴族だけが楽しい収穫祭

 三人の元メイドを冒険者ギルドに保護してもらった私は宿舎に戻ってきた。

 そしてその後は特に問題もなく部屋の鍵を閉めて全員が就寝できた。


 そして次の日、ヘクタールの従者達が私達を起こしに来た。


「皆様、お食事の準備ができております。どうぞお越しくださいませ」



 食堂についた私達は昨日とは比べ物にならないきちんとした朝食を目の前にした。

 どうやら昨晩ヘクタールのシンパを全員排除した事で全員がきちんとした食事がとれているようだ。

 食堂の中ではわずかながら会話等も聞こえた。

 私は目の前の食事を見て無理して私達にだけ良いものを食べさせて自分たちは我慢しているのだと悪いなと思っていたが、どうやらそうではなさそうだ。


 今朝の食事は従者達もきちんとしたスープや野菜、パンを食べる事が出来ていた。

 全員昨日の夜までとは顔つきも目の輝きも違う、やはり恐怖では人は縛れないのだ。

 食堂の担当は朝食の私達の分には卵をつけてくれていた。これは気持ちばかりのお礼なのだろう。

 朝食を終えた私達はヘクタールの従者によって収穫祭のメイン会場に案内された。


「救世主様、お気をつけて」

「うん、皆さんも無理しないでくださいね」

「はい、私達は貴方様方がこの地を解放してくれると信じます」


 ヘクタールの従者達は私達を信じてくれている。

 これは必ずこの土地をあの悪魔から解放しなくてはいけない。

 その為にはこの場の状況を確認しなくてはいけない。

 そして私達は収穫祭の会場に到着した。



 収穫祭の会場は中央に巨大な鉄板が置かれてあった。

 その上には吊り下げ式の木でできたクレーンのような物が存在する。

 真ん中で何か物を焼くためなのだろう。

 そしてその会場は低い場所と高い場所で場所分けがされてあった。

 低い場所は地べたそのもの、高い場所は貴族の為の椅子が用意されていた。

 椅子には既に何人もの貴族が座って談笑している。

 それ以外の者達は地べたで働かされる為集められた恨めしそうな目で貴族を見ている領民達だった。


「これから収穫祭が始まるみたいだな」

「そうですね、僕達はどうすれば?」

「とりあえずは言われるように動いて様子見だね」


 ヘクタールの取り巻きが私達の前に現れた、コイツは従者や監視者よりも立場が上のようだ。


「ゴーティ辺土伯のご子息ご令嬢様、貴方方は特別席でどうぞ」

「僕は来賓として招かれました、その僕の従者は何故そちらの席ではないのでしょうか」

「またまた御冗談を、家畜と人が同じ席に座る等という事は神を冒涜する事になりますよ」

「……承知した、連れていけ」


 ホームとルームの二人はこみ上げる怒りを我慢し、貴族の為の特等席に案内された。


 そして収穫祭が盛大に始まった。


 よくわからない音楽、そしてヘクタールの偽りの功績をさぞ立派に紹介した後、最悪の余興が始まった。


「貴族の皆様方、大変お待たせいたしました。只今より罪人の処刑を行います」


 ヘクタールの近衛兵達が縄で縛られた人達を檻の車の中から連れてきた。

 この場にいるのは宿舎にいた人達とは別の連中のようだ。


「助けてくれー!」

「俺は無実だ!!」

「税金を払えないからって死刑は嫌だー!!」


 後ろ手に縛られた罪人達はそれぞれが毛皮のマントを着せられ、その上から灯り用の油をかけられていた。

 そして彼らはそのままクレーンに吊るされて中央の鉄板の上まで移動させられた。


「ウワーァ!!」

「熱い! 熱い!!」


 貴族達はそれを見て笑っている。


「皆様、この者達はヘクタール様に逆らった者達です。従わなかったもの、税金を滞納した者、全て貴族に仇なした者、すなわち神に逆らった者達なのです!」


 いかにも偉そうな法衣を着た男がでっち上げた罪状を読み上げ、見せしめの死刑を行った

 油まみれのマントを着せられた死刑囚はマントに引火し、その火は吊り下げられたロープを焼いた。

 ロープの焼けきれた死刑囚は熱く焼けた鉄板の上で火だるまになって暴れ狂っていた。

 だがそれもすぐに終わり、力尽きた男はその場で骨になるまでにそう時間はかからなかった。


「さあ、皆様楽しんでいただけましたか!」


 貴族達からは喝采の拍手が巻き起こっていた、だがホームとルームの二人は微動だにせず目の前の惨状から目を背けずにその怒る目にしっかりと焼き付けていた。

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