13 冒険野郎Aチーム!?
オーガーを倒した事で私は一気にレベルが2つアップした。
オーガーの経験値はそれだけ破格のものだったのだろう。
私は自分のステータスを確認してみた。
ユカ・カーサ
レベル 6
HP 120/120
MP 75/75
まずまずのものだろう、ゴブリンくらいならソロで戦えるくらいの強さにはなった。
しかし冒険者として登録するには、ようやくEクラスの最底辺といったところだ。
レベル8の壁はかなり高めなのだ。
レベルアップ痛がビリビリ痛む。
さっきよりもレベルが一気に上がったからだろう。
この痛みはかなり、全身にズキズキと響いた。
「さて、帰ろうかな……臭っ!!!」
オーガーの体液が私の目の前に血だまりとして塞いでいた。
この血からはかなりキツい臭いが漂っている。
私はこれをどうにかよけて帰るしかないのだが、道はここしかないのだ。
こんな時こそスキルを使うべきだろう。
「ハァアァ! 目の前の血だまりを普通の地面にチェンジ!」
私の手から放たれたマナは目の前の血だまりを覆い、そこにはオーガーのグシャグシャになった死体以外はきれいな土の床になっていた。
やはりこのマップメイクが私の本当のスキルなのだ。
これをマップエディターの経験を生かす事ができれば、確実に最高に使いこなせる私の為のスキルにできる!
私はそう確信した。
MP10/75
しかしこのマップメイク、一度使うとMPの大半を持っていかれるのが難点だという事も今後は考えなくてはいけない。
それだけ消費MPが甚大なのだ。
仕事で使えないという意味が今になって分かった。
本来なら1メートル四方の床を貼るのに、常人のMP全部を使い果たしてしまうのだろう。
想定ではあるがレベル1の常人は通常mpが10程度しか無いと思われる。
そりゃあ一日に一度しかマップメイクのMPが使えないわけだ。
私は今後の課題を考えながら家に帰ることにした。
そのついでにオーガーの角と爪だけは戦利品として持ち帰る事にした。
不幸中の幸いか、私にべったりと染みついたオーガーの血や体液はすごい臭いを放ち、森のモンスターが その臭いをオーガーだと思い、襲ってこなかった。
そして無事村はずれまで戻ってきた私は、小さな溜池でオーガーの体液を洗い流した。
洗い流した溜池がどす黒く濁り、とても生活用水としては使えないレベルになっていた。
「ハァァァ! 濁った溜池を綺麗な水の池にチェンジ!」
この能力はかなり使い方次第ではなんでも可能だろう。
濁った水は一瞬で綺麗な真水に戻っていた。
そして私は何事もなかったふりをしながら家に帰り、ぐっすりと寝ることにした。
◇
「母さん、ボク、隣の町に行きたいんだ。冒険者ギルドに登録する」
「そう、無理しちゃダメよっ」
母さんは反対もせず、私のわがままを聞いてくれた、しかし夕方までには帰ってくる約束だ。
私はお弁当を持ち、数時間歩いて冒険者ギルドまでたどり着いた。
道中に出てくるはずのモンスターは、オーガーの爪や角の臭いに怯えて一匹も姿を見せなかった。
「登録お願いします」
「あら、かわいい坊やね。冒険者になりたいの?」
「はい、登録お願いします」
ギルドの奥の方にいた荒くれが私を見ると、指さしながら下卑た笑いで馬鹿にした。
「おいおい坊主、ここは働く大人の場所なんだよ! ガキは帰ってママのおっぱいでもしゃぶってろ!!」
テンプレな会話ってこれを言うのか、シナリオライター手を抜きすぎじゃないか?
と、私はワンパターンな会話しかできない荒くれ達に、怒るよりも呆れてしまった。
「よしな! ガキをいじめて楽しいか?」
「え……! アンタらもう帰ってきたのかよォ!?」
ギルドがざわざわし始めた。
どうやらこの冒険者は凄腕の冒険者のチームらしい。
『冒険野郎Aチーム』
リーダーを中心に、凄腕のレベル15以上の冒険者たちだけで作られたスペシャリスト集団。
依頼とあれば皇帝ですら殴るといっている、凄腕の冒険者集団だ。
彼らはギルドの受付嬢の前に、大きな革袋をいくつも並べだした。




