134 リットル村の昔話
リットル村でのお祭り騒ぎは夜遅くまで続いた。
そして私達はカンポの屋敷だった元村長さんの屋敷で休ませてもらう事になった。
その日の夕食は祭りみたいなものだったので村の真ん中に出来た泉の近くに大きな鍋を用意して村人全員で芋煮会のようなものを行った。
村人はみんなが久々にお腹いっぱいに食べる事が出来たのでとても満足そうだった。
そして、村の新たな用心棒になってくれた森の猛獣のボスとその仲間には鶏や豚の良質な肉を差し出し、彼らにも非常に満足して貰えたようだった。
そして当面の食料の確保が出来るように私達は冒険者ギルドで鶏を二十羽程確保し、餌になる穀物も用意しておいた。
「目の前の土地を平らな地面にチェンジ!」
私が平らな地面を用意し、そこに村人達が鶏小屋を作った。
これでひよこが育てば卵と鶏をコンスタントに確保できる。
当面はそれを元にすれば村人の食糧事情は解決するはずだろう。
そしてその鶏を猛獣のボスに与えると村の治安解決も出来る。
「ユカさん、猛獣のボスには森のイノシシとかを取るように指示しておきましたよ」
「フロアさん。ありがとう、助かるよ」
これで村人の当分の食料は確保できた。
魚は川が上流から水を確保できたのでこれも問題は無いだろう。
これからはこの村が発展すれば収穫も確実にできるし工業などの産業にも取り組める。
「救世主様、本当にありがとうございました」
「いや、ボク達はきっかけを作っただけです、これからの村は皆さんで盛り上げて下さい」
きっかけが重要、これは私がゲーム作りで学んだ人生経験と言える事だった。
実際“ドラゴンズ・スター”は『新日本電設』の子会社だった時にファミリードライブというゲーム機用のゲームプログラムを『新日本電設』の建築用新型コンピューターシステム開発の実践訓練といった名目でスタートした子会社『トライア』における最後のチャンスとして作ったゲームだったのだ。
『トライア』それはお客様、新日本電設、開発者の三者のつながりを意味するトライアングルと実験や試験を意味するトライアルから取った社名である。
その後、新日本電設とは子会社から独立したが、最初は良かったもののゲームと連動したロボアニメ企画頓挫からのその後鳴かず飛ばずだったゲーム部門の最後のチャンスで作ったゲームが“ドラゴンズ・スター”だったのだ。
“ドラゴンズ・スター”は記録的大ヒット、そしてその後シリーズ化し、ファミリードライブの携帯機ギアボーイ用RPG“モノクロームサーガ”のミリオンヒットで『トライア』は業界大手になる事が出来たのだ。
これもきっかけと言える、鳴かず飛ばずのままチャンスが与えられなければ後の『トライア』の栄光はあり得なかったのだ。
「そうですね、救世主様。これからは亡き主人に代わり私が村を盛り立てていきます」
「おにーちゃん、おねーちゃん。ぼくもママをたすけるよ」
村長の奥さんは村人のみんなに肩を支えらえて村長の代理をする事を引き受けた。
この村がこれから悪くなる事はもうないだろう。
これで私達は安心してこの村を旅立つ事が出来る。
「あの……救世主様はちょっと勘弁してもらえますか、やっぱりユカでいいです」
「承知致しました、ユカ様。これからの旅、お気をつけてください」
私達は村人に盛大に見送ってもらった。
さあこれからヘクタールの収穫祭を兼ねた就任式典に乗り込むぞ!
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リットル村に昔から伝わる童話。
昔々、リットル村で水をひとりじめする悪い代官が村人たちをいじめていました。
しかし神様の使い『ユカ様』が現れ、悪い代官とその手下を不思議な力で退治しました。
悪い代官は悪い力で木のモンスターを使い村を滅ぼそうとしました。
しかしユカ様とその仲間たちはその代官を不思議な力で木にしてしまいました。
代官をやっつけたユカ様は村の真ん中にきれいな水の泉を作りました。そして村人たちにがんばって仕事をしてこの村を幸せな村にするように言いました。
そしてリットル村はとても幸せな村になりました。 おしまい。