132 水と共に歩みだす村
強欲な悪代官のカンポは自らの持っていた食人植物に体内から発芽され、樹木と一体化してしまった。
「やったー! 俺達の村からカンポがいなくなったー!」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
「生きていて良かった……何度死のうと思ったか」
避難していた村人達はもう兵士がいない事がわかるとカンポの木の近くに集まってきた。
だが、喜んでばかりもいられない、カンポの体内から発芽した食人植物がどんなふうに暴れ出すかわからないのだ。
「みなさん、もう一度家に避難してください!」
私の指示で村人は全員が家に避難した。
食人植物の木は不気味な唸り声を上げていた、それはカンポの怨嗟の叫びなのだろうか。
私は食人植物の中心に鋭く遺跡の剣を抉りこんだ。
食人植物は成すすべもなく大量の血のような樹液を吹き出し、完全に沈黙した。
「これで終わったかな」
「ユカ……私に……まかせて」
「エリア……」
エリアが沈黙した食人植物に手を触れた。
「大地の聖なる力よ、汚れた存在をこの土地より消し去る力を我に与えたまえ……レザレクション」
エリアの触れた食人植物はその邪悪なエネルギーを浄化され、カンポだった木はただの不気味な顔の有るだけの巨木になった。
「今度こそ終わったな。この不気味な木、カンポの木とでも言われるのかな」
カンポの顔のついた木はもう何一つ反応しなかった。
これでこの村が本当に救われたのだ。
「みなさん、もう大丈夫ですよ。今度こそ終わりました」
村人達が全員家から飛び出し、カンポの木の周りに集まった。
そして村人みんなが涙を流し、お互いが抱き合い涙を流して喜んでいた。
「救世主様、ありがとうございます。これで主人の魂も救われます」
「きゅうせーしゅのおにーちゃん、おねーちゃんありがとう!」
私達を泊めてくれた親子がとても喜びながら私達に感謝していた、そして母親は涙を流していた。
しばらくすると村人が全員集まってきたので私は一芝居打つ事にした。
「村人達よ、私は創世神に遣わされた救世主である、これから奇跡を見せようぞ!」
私は仰々しく大げさに救世主のフリをして村の中央の井戸やフィートのポンプの有った場所に村人を集めた。
「目の前の枯れた土地に再び澄んだ水を与えん、目の前の土地を泉にチェンジ!」
「「「「「!!!」」」」」
村人の目の前で何もなかったはずの土地は豊かな水を湛えた泉に姿を変えた。
そして私は更に川の水をこの泉に届くように水路もマップチェンジで作ったのだ。
「これが我が奇跡である。村人よ、清らかなる水をいただき、一生懸命日々自然に感謝し、それぞれが自らのできる仕事をするがよい」
「神様……ありがとうございます!!」
「俺達の村、絶対前より良い村にして見せます」
村人達は深々と頭を下げて私に感謝していた、これでこの村の未来は安泰だ。
さあ次にする事は……村人の奪われた財産を取り返してみんなに返してあげる事だ。
私は泊めてもらった家の奥さんに声をかけた。
「奥さん、貴女は本当の村長の奥さんだったんですよね?」
「はい、そうです。私の主人が前の村長の息子でした」
「カンポの屋敷って元々旦那さんの家だったんですか?」
「はい、私の主人の家でした」
私の思った通りだった、では彼女は建物の中は良く知っているはずだ。
「奥さん、貴女の本当の家に行きましょう!」
◇
カンポの屋敷は村人から搾取した金で買った悪趣味な成金趣味の調度品で飾られていた。
「センス悪いね、でもこれ全部売れば村の復興の足しになるかもねぇ」
マイルさんがカンポのコレクションを鑑定してくれた。
私達はカンポのコレクションを全部持ち、一旦マーカーチェックを元に座標特定でワープ床を作り冒険者ギルドに戻った。
そして悪趣味な調度品は高額で冒険者ギルドに引き取ってもらえた。
引き取ってもらった高額な調度品は商隊が別の所に売ってくれる話になったので、私達は安心してリットル村にまたワープ床で戻った。