130 悪代官をぶっとばせ
エリアは心から怒っていた、村人を薬漬けにして私利私欲で金だけでなく心まで奪い取るカンポとフィートが許せないからだ。
「ユカ……エリアちゃんなら出来るの?」
「はい、エリアなら出来ます」
「みんな……私に……やらせてください」
村人達を見ていた私達の前にフィートとカンポが現れた。
カンポは食べかすを髭にソースと一緒につけていた。
コイツらは村人が飢えているのに自分達だけは贅沢三昧をしているのだ。
「おやおや、ご苦労様です。どうやって水を引いてきたかはわかりませんが、無駄な努力でしたね」
「フィート、お前の顔はもう見飽きた、さっさと姿を消せ!」
「おやおや、負け犬のマイルさん。私はまだまだこの村でやる事がありましてね」
「何だと!?」
フィートがニヤニヤしながら見下してきた。
「もう村人は自分の水差し無しには生きていけない、でももうこの村に財産と言えるものは何もない……さあ、次はどうすると思いますか?」
「まさか……!?」
「そう、お察しが良いですね。男はご褒美の水欲しさにレジデンス領で盗賊を、女は娼館に叩き売るんですよ。搾り取れるところが無くなれば人材になってもらえばいいのです」
「ファッファッファ、流石はポディション商会、そしてワシはこの村の家を全部潰して木材として売れば良い、何も無くなった後はヘクタール様に頼んで別の村で同じ事をするだけじゃ」
コイツらは救いようの無い腐れ外道だ、人を人とも思わないモンスターと変わらない。
「悔しいですか? でももう無理―! 一度死人カズラの麻薬を口にしたものは一生その呪いから抜けれないのですよ、ハハハハハ」
「外道が……」
まるでドラマに出てくる麻薬で一般人からしゃぶりつくすチンピラそのものだ。
だが、コイツらはエリアのレザレクションの能力を知らない、だから一度アリ地獄に嵌めた相手は死ぬまでしゃぶれると思っているのだ。
「まったく、水を元に戻されたと聞いた時にはどれだけ肝を冷やしたか、ワシをビックリさせた罪で死刑にしてやる」
「ふざけるな、お前達の目論見は全て潰してやる! 盗賊達と同じ地獄へ行け!」
「なんだと!? 貴様があの盗賊団を潰したのか!? あれだけ綿密に作戦を立ててやったのに」
フィートの顔に焦りが見えた、今ならこいつらの鼻っぱしらを叩き折ってやるにはいい機会だ。
「エリア! 頼むよ」
「はい! 水に宿る聖なる力よ、悪しき水に蝕まれた弱き人々を助ける力を我に与えん……レザレクション!!」
「!???」
エリアのレザレクションの光が村全体を包んでいく、エリアの思いの強さがそれだけ強いのだろう。
辺りに広がった温かい光は村人を包み、体内を蝕んだ悪しき呪いを全て浄化した。
「あれ?俺達は何をしていたのだ?」
「私達……どうしたのかしら」
エリアのレザレクションのおかげで村人達は正気を取り戻せた。
その直ぐ後、マイルさんが水差しを手に村の中央の高台に立った。
「アンタたちはそこのフィートに麻薬の入った水を飲まされていたんだよ!これを見るんだ」
マイルさんが水差しを地面に叩きつけて割った。
「どうだい、この水差しの中に入っていたのは死人カズラの種とその粉の袋だ。一度体に入れると呪いで死ぬまで蝕まれるんだよ!」
村人達がざわざわとし始めた、そしてその怒りはカンポとフィートの方に向けられた。
「クソッ、マイルめ。オレの計画をぶっ潰しやがって、絶対許さんからな!」
フィートは小型の転移魔法装置で一人だけ逃げた。
「貴様ら……ワシの村を滅茶苦茶にしやがって、絶対許さんぞ! 全員死ね!!」
カンポが村にいた兵を全て集めた、その数は全体で100人程だ。
「お前こそ、年貢の納め時だ!!」
私は時代劇を見ていて一度言いたかったこのセリフを言ってみた。
このセリフが出たらここからはオシオキの時間だ。