129 みんなの水を取り戻せ
『イラプシオン・コルムナ』
これは火山の噴火にも等しい火柱が巻き起こる火炎系最強魔法だ。
「やりました……わ」
ルームは魔獣使いの杖にすがりつく形でかろうじて立っていた。
それをホームが支える形で横に立っている。
「GYAAAAAOOOOOO!!」
お化けカズラは髑髏のような球根から断末魔の叫びをあげて炎上していた。
周りの骸骨がどんどん炭になり砕けていく、それほどこの魔法の火力は計り知れない物なのか。
そして三分程燃え続けたお化けカズラは欠片も残さず焼失した。
「やった!!」
みんなそれぞれが勝ったと心から実感している。
もうこの辺りにモンスターの気配は感じられなかった。
私達はお化けカズラに勝ったのだ。
そして、お化けカズラの存在した場所を見ると、明らかに人の手で盛り土をした後が見られた。
これはカンポが手下に川をせき止めさせたものなのだろう。
土で出来た小さなダムか堤防のようになっていた。
「カンポの奴、私利私欲の為にこんな事までするとは」
「それで更にお化けカズラまで用意したんですね、僕は絶対許せません!」
「まったく……領民を何だと思っているのかしら! 私許せませんわ!!」
私はこの堤防を壊す事にした。
「堤防の盛り土を平らな地面にチェンジ!!」
私のマップチェンジスキルにより、盛り土でせき止められた堤防は一瞬で姿を消した。
そしてせき止められていた川は勢いよく下流に向かい流れ出したのだ。
「これであの村の水問題は解決するな」
「ユカ……良かった」
エリアが何か考えているようだった。
「エリア、やはり何か心残りがあるんだね」
「うん……ここにいる報われない魂を救ってあげたい」
「エリア、お願いするよ。これはエリアにしかできない事だから」
「ユカ……わかった……」
エリアは両手を広げると目を閉じて空に祈りをささげた。
そして私達も犠牲者の為に手を合わせて祈った。シートとシーツも大人しく座っている。
「母なる大地の力よ、この地に留まる報われない魂に安らぎを与えたまえ……レザレクション!!」
エリアのレザレクションの光が辺り一面に広がった。
「「「アリガトウ……アリガトウ……(ムラヲタノミマス)……」」」
魂の光が天高く昇っていく、お化けカズラの犠牲になった人達は救われたのだ。
「ユカ様! 僕の剣が光っています!!」
ホームの持つ魂の救済者にいくつもの白い光が吸い込まれていた。そして剣は不思議な音を出して一瞬激しく点滅して再び沈黙した。
「ユカ様! 凄いですっ、剣から僕に力が沸いてくるようです」
「きっと救われた魂がホームの剣に力をくれたんだね」
「そうですね、この力でより多くの人を助けましょう!!」
ホームの顔に自信が現れていた、やはりこの剣は彼の為に存在すると言って間違いないのかもしれない。
「さあ、村に戻ろう!」
◆◆◆
「カンポ様! 大変です、川に水が流れています」
「なんじゃと、これではワシの計画が台無しではないか!」
「カンポ様、大丈夫ですよ。村人は水差しの水無しにはもう生きてられませんから、ただの水が戻ったところで何の影響もございません」
「むう、肝を冷やしたわい。早く村人から搾り取るとこまで搾り取って村を潰さんと」
外道たちは川に水が流れた事に右往左往していたがすぐに落ち着きを取り戻し、贅沢な昼食を取っていた。
◆◇◆
村に戻った私達は村人の反応に呆然とした。
「何だこれは、誰一人として川の水に見向きもしない」
「これが死人カズラの麻薬の力だよ……一度取り付かれるともうそれしか考えられなくなる」
村人は無気力そのものだった。
ただ水差しの水を飲んだ時だけおかしくなったように楽しそうになり興奮してそれからまた無気力になる、そんな異様な光景が広がっている。
「ユカ、私ならあの人達を助ける事が出来ます!」
「エリア……」
エリアの目に決意が見える、普段冷静で穏やかな彼女が心から怒っていた。