123 祝福の時
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私は街道で行き倒れていた水を求めて事切れた女性と水を飲んでから亡くなった子供の事を伝えた。
そしてその女性と子供を街道の外れの草むらに弔った事も伝えた。
「そうでしたか、姉と子供の最後を見取ってくれたのですね」
「ボク達にはそれだけしかできませんでした……」
「いいえ、あなたたちは優しい人です、姉もきっとあなた達に感謝しています」
母親はペンダントを私達に見せた。
「これはまだこの村が豊かだった頃、父親がレジデンス領の収穫祭に連れて行ってくれた時に幼い姉と私に買ってくれたものです」
「そうでしたか」
レジデンスと聞いてホームとルームが複雑な顔をしていた。
悪い話で父親の話を聞いたのではないのだが、この土地でレジデンスの名前を聞くとは思っていなかったのだろう。
私はペンダントを持った人物には二度会った事になる。
一人は白骨化した行き倒れ、もう一人が彼女の姉というわけだ。
このヘクタール領で金目の物を持っていると盗賊に奪われる、そう考えるとペンダントくらいしか持てないのだろう。
「それで、姉のペンダントはどこに」
「埋めました。墓標にしても誰かに持ち去られるくらいでしたら一緒に埋めてあげた方がいいのかと思いまして」
「そうでしたか……」
母親は涙をぬぐっていた。
「かあちゃん、泣いてるの?」
「なんでもないよ、さあ、ごはんにしようかね」
「かあちゃん、もううちなにもないじゃん、ひもじいよぅ」
彼女は台所の隅のカビの生えたカチカチのパンと腐ってカビの生えたクズ野菜を取り出した。
「こんな物しかありませんが、せめて何か食べてください」
こんな状態でも私達に何かを食べてくださいというのか、自分達は我慢しようというのだろう。
「ユカ……私……この人達を助けたい」
「エリア……」
エリアは壺の中で腐って食べられないクズ野菜に手を広げた。
「大地の力よ、目の前の力を失いし物達に再び生命力を与えたまえ……レザレクション!!」
エリアのレザレクションでパンと野菜は新鮮そのものとも言える状態に戻った。
「!! これは、祝福の時。私達が祝福の時の物をいただくわけにはいきません!!」
「祝福の時? それは何ですか?」
「え? 祝福の時をご存じありませんか。収穫された物が最も祝福された時の事です」
まあ賞味期限みたいなものだろうと私は考えた。
「祝福の時をいただく事の出来るのは神に最も祝福された貴族だけなのです。それ以外の者が祝福の時の供物を口にすると創世神の怒りにより次の年は凶作になると言われております」
そんなのハッキリ言って迷信もいいところだ!
単に貴族が賞味期限の間に美味しい物を独り占めする為だけに作ったルールだろう!
「そんなの関係ありませんわ! 私たちは領民と共に収穫を祝います。去年は生憎の凶作でしたが今までにそんな神の怒りなぞ存在しませんでしたわ!!」
「貴女様は……どなた様ですか?」
「私は『ルーム・レジデンス』レジデンス領の『ゴーティ・フォッシーナ・レジデンス』伯爵の娘ですわ」
「も、申し訳ございません! 貴族様とはつゆ知らず無礼な物言い、何卒お許し下さいませ」
母親が頭を何度も地面に叩きつけて謝ろうとしていた。
「やめてくださいませ! 私は貴女に謝られる筋合いはございませんわっ!!」
彼女のひれ伏しよう、このヘクタール領では貴族が絶対なのだろう。
平謝りされてルームは困った表情をしていた。
「ルーム、僕が今日は食事を作るよ。干し肉とかならカバンの中にあるからね」
「お客様、しかし我が家にはもう水がありません」
「ユカ様、お願いできますか」
「うん、大丈夫」
「奥さん、そこの床をお借りしてよろしいですか?」
「え……ええ、お休みになるならどうぞお使いください」
私は床に向かい手を広げてエネルギーを集めた。
「目の前の床を綺麗な泉にチェンジ!!」
「これは!!! 奇跡なのでしょうか……」
彼女は目の前の床にいきなり新鮮な泉が出た事にとても驚いていた。