119 脆く崩れ去る友情
次回からまたユカたちの話に戻ります
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ヘクタールは血の付いた木刀を振るい続けた。
「クハハハハ! クハハハハハハッ!!」
「痛い! 痛い! やめて!! やめてぇー!!」
新人メイドのマーシャの悲痛な叫びが辺りに響いていた。
しかし誰一人として彼女を助ける者はいない。
「どうだ、お前達。これが叩くという事だ、さあやってみろ!!」
ヘクタールは血の付いた木刀を三人のメイドの一人に渡した。
「マーシャ、我慢してっ!」
少女は木刀の広い部分でマーシャを思い切り叩いて横倒しにした。
それを見ていたヘクタールの眉がピクリと動いた。
「貴様、何をしている……」
「え……何って」
ヘクタールは彼女から木刀を取り上げ三人のメイドを一人10回ずつバシバシと打ち据えた。
「貴様らが何をしようとしたかはわかっている。この女を倒して起き上がれなくすればもう叩かずに済むと思ったのだろう……美しい友情だな、反吐が出る!!」
そしてヘクタールは木刀を投げ捨てた。
「拾え、その女が一度倒れるごとにお前達三人を10回叩く。それが嫌ならそいつを横にさせずお前らが叩け」
恐怖と痛みで支配された彼女達に選択肢は無かった。
三人のメイドはマーシャを一人が後ろから羽交い絞めにして残りの二人が木刀で叩きだしたのだ……。
「お願い、みんな、やめて! 私達親友でしょ……お願い、やめて! 痛い! 痛いー!!」
三人のメイドは後ろから羽交い絞め位にする役、叩く役二人で疲れると交代して代わる代わるマーシャを叩き続けた。
マーシャが倒れると自分達も打ち据えられてしまうからだ。
「クハハハハハハ! 良い! 実にいい!! 友情を壊すのは最高の気分だ!!」
ヘクタールは四人の仲のいい新人メイドが自らの命惜しさに一人を残りの三人で打ち据える惨状を愉悦の表情で眺めていた。
「ふむ、そろそろ食事をするかな。おい、ヘクタールを持ってこい!」
「はい、ただいまお持ち致します」
このヘクタールという人物、弱い人の苦しむ顔を見ないと食欲が沸かないのである。
彼がいつも朝食を不味いと言っているのはその為なのだ。
ヘクタールが持ってこさせた食事は自らの名前を付けた薄切りのパンで焼いた肉を挟み込んだ片手で食べられる物だった。
これは拷問を見ながら酒を飲み片手で食べられるようにヘクタールが考案した食べ物だ。
それに自らが片手で領民を虐げながら食事が出来るので公爵派の貴族にも大好評なのだ。
「美味い! やはりクズの苦しむ顔が一番の調味料だ!」
三人のメイド達は一心不乱に元親友だった相手を木刀で叩き続けていた。
マーシャはもう声を出すだけの体力すら残っていなかった。
ヘクタールはそんな彼女を見てニヤニヤとしていた。
「おい召使、いつもの物を三人分用意しろ!」
「かしこまりました」
召使はコップに入った三人分の飲み物を用意した。
「さあ、お前達。疲れただろう、喉を潤すがよい」
「「「……ハイ」」」
三人のメイドは焦燥しきっており、もう何も考えられなかった為、飲み物の中身が何かすら知らずにそのまま飲み干した。
「!!??ウアアアッ!!」
飲み物を飲み干した三人のメイドの動きがその直後すぐにおかしくなった、この中に入っていたのは快楽を感じる薬だったのだ!
「さあ! お前達、その目の前のブタを打ち殺せ!」
「フフフ……ハイ」
「キャハハハハハッ」
「うふふふふふふふ」
「!!! …………ンー!! ンンーーー!!!」
目の焦点の合っていない三人の少女はもう何も考えず快楽を感じたまま目の前の元親友を笑いながら叩き続けた。
良心の箍の外れてしまった三人はマーシャが絶命しているのも気が付かず、彼女だった物が肉塊になるまで叩き続け、踏みつけたりして笑い続けた。
「クハハハハハハ! 面白い見世物だったぞ! 後始末はそいつらにやらせておけ」
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薬の効果の切れた三人は目の前の叩き続けた肉塊が元親友のマーシャだった物と気が付いてしまい、全員が嗚咽の後絶叫して人格と自我が崩壊した。
そしてまた、ヘクタールの言いなりに非道な事を平気で行う三人の奴隷が生まれたのだ。