118 カッツェーエ・ヘクタールという男
今回は胸糞注意
◆◆◆
ここはヘクタール領にある最も豪華な建物である。
その中の部屋で複数の裸の女を侍らせた男がベッドで寝ていた。
『カッツェーエ・ヘクタール男爵』この屋敷、この領地の領主だ。
女は痣だらけですすり泣きをしていた、女達は寝る事を許されていなかったのだ。
自分だけは好き放題に時間を使い、他人が自由な時間を過ごすのは許さない。
それがこの男である。
女達は互いが互いを監視している状態だったのだ。
もし誰かが寝てしまったらそれをヘクタールに次の日の朝に報告しなくてはいけない。
もし報告が出来ていなくて誰かが寝ていた事がわかってしまうと全員が罰を受ける事になるのだ。
女達は仕方なくヘクタールが起きるまでそのまま寝る事が出来なかった。
次の日の朝、ヘクタール領の朝の定例の儀式が行われた。
屋敷の全員が我先にと集まっていた、その中で一人転倒してしまい最後に並んだ小間使いがいた。
「貴様。最後に到着したな!」
「ヒィッ! も、申し訳ござません!!」
最後に到着した小間使いは衆目の前で服を引きはがされ拷問官に何十回と棒で叩かれ続けた。
この仕打ちには男も女も若いも年寄りも関係ない、同じように見せしめで打ち据えられるのだ。
「お許しください! お許しください!」
「黙れ! ヘクタール様は時間を大切にされるお方だ! ノロマはヘクタール様への不敬と見なす!!」
これが定例の儀式である、何か前日のミスがあった者、遅刻した者を見せしめに処罰する事で恐怖を植え付けて絶対の忠誠を誓わせるのだ。
その為、誰一人として仲間意識など持たず、自分が助かる為に次の日の儀式の犠牲者を用意する為に誰もが誰かの仕事の邪魔をしている。
これがヘクタール領の常識なのだ。ヘクタールの意に添わぬ者は気分次第ですぐに処罰される。
理由なんてものは無い、そんなものはいくらでもでっち上げで後付け出来るのだ。
「いいか、お前達。ヘクタール様が大量の100以上の魔族を退治しなければ貴様らは魔族の奴隷にされていたか殺されていたのだ! 英雄ヘクタール様の為に奉仕できる事を誇りに思え!!」
ヘクタールは自身を救国の英雄だと言って領民を従わせている。
実際はウォール戦士長が全ての魔族を倒したのだが、平民に勲章や昇進といった名誉を与えたくない公爵派の貴族達がそれを隠ぺいした。
その為、いるだけで足を引っ張る小心者で無能の上官だったヘクタールに勲章と名誉を与え、救国の英雄に仕立て上げたのだ。
朝礼と称した見せしめの儀式にヘクタールが出てくる事はまずない。
ヘクタールは全て部下に任せて自身は午前中遅くまで寝ているのだ。
起きる時間は決まっていない、自身の好きな時間に起きて好きな時間に寝ているのだ。
◆
「不味い、こんな物しか無いのか!」
ヘクタールの食事風景である、彼は出された食事に少しだけ手を付けて直後に捨てさせた。
今年は凶作で領民には餓死者も大量に出ている状態でこの態度である。
不機嫌なヘクタールは新しく徴用されたメイド四人に目を付けた。
「貴様らは?」
「はい、東の村の者です、新たにこちらでご奉公するように仰せつかりました」
「四人か……」
「はい、私達四人が呼ばれました」
「仲が……よさそうだな」
「はい、村では四人で一緒になんでも色々としていました」
「……気に入らんなっ!!」
これがヘクタールの性格である、人が楽しそうだったり仲が良かったりするのが気に入らないのだ。
そしてヘクタールは木刀を三本執事に用意させた。
「貴様ら、これでその女を殴れ」
「ええ!? 何故ですか?」
「口答えは許さん、貴様らの村を潰すのなんて簡単なのだぞ」
「うぅう……」
木刀を渡された三人は仕方なく木刀で一人を殴った。
「ゴメン! マーシャ」
「痛いッ!!」
しかしヘクタールは気に入らないようだった。
「手ぬるいわ! 貴様ら……打ち据えるとはこういう事だ!」
そういうとヘクタールはメイドの一人から木刀を奪い、ニヤニヤ笑いながらマーシャを滅多打ちにした。