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117 これがヘクタール領

 関所を通過した私達はついにヘクタール領に足を踏み入れた。

 まあ普通に考えるとほんの1メートルどころか1センチ向こうが別の地域ってのはそれほど実感がわかないはずだ。


 現実問題の県境国境はまだしも、ゲームでそれをわかりやすく目で見えるように作ったのは“ドラゴンズ・スターⅡ”での邪教の大神殿の存在する雪と氷の世界だ。


これはゲームの容量がまだあまり多くなかった頃の物なので本来のフィールドの色だった緑色を一切使わず、全部白色に置き換えたものだった。

 これは“ファミリードライブ”のゲーム性能的に4色パレットの52色までしか使えないので白黒を入れて54色、透明を入れて55色という制限の中での苦肉の策だったのだ。


 まあ次回作の“ドラゴンズ・スターⅢ”ではもう少し容量が増えたのでフィールド自体の砂漠や氷原は作りやすくできたのだが。


「ユカ様? 何を考えておられたのですか?」

「い……いやね、ついに敵地まできたな、と思ったんだ」

「その通りですわ! ヘクタールに苦しめられている人達を助ける、そここそが今の(わたくし)達のするべき事ですわ!」


 ルームの目が燃えていた。

 彼女はヘクタールの領民が何の罪もないのに虐げられている事が許せないようだ。


「早く行って一人でも多くの人達を助けよう!」

「承知致しましたわ!」



 先程、私は領が変わっても土地はそれほど変わらないはずと思っていたがそれは大きな間違いだった。

 ヘクタール領に踏み込んだ私達の見た物は普段レジデンス領ではまず見かけない物ばかりだったのだ。

 最初に目についたのは行き倒れた人のモンスターに食い荒らされた骸骨だった。

 モンスター自体は伯爵領でも出るし、モンスターにやられる人もいる。

 しかしそれは覚悟のある冒険者か行商人のものであり、もし見つけられたら別の誰かが埋葬するのが暗黙のルールだ。


 しかし行き倒れの骸骨はどう見ても軽装すぎて冒険者や行商人のものには見えなかった。

 まるで、着の身着のまま逃げようとして力尽きたようにしか見えないのだ。


「惨い……」

「エリア……」


 エリアはいきなりの惨状にとても悲しそうな顔をしていた。


「許せない……」

「ホーム」


 ホームは目の前の骸骨を見て怒りを感じているようだ。


「……この人、埋めてあげよう」

「そうですね……ユカ様」

「あーしも手伝うよ」


 私達は行き倒れた骸骨を道から外れた草むらに埋めてあげた。

 持っていたものはほとんどなく、金目な物は小さなペンダントだけしかなかった。

 これを墓標にしても誰かに持って行かれるかもしれない、私はそう思いペンダントも一緒に埋めてあげる事にした。


「ヘクタール領に着いた途端これか……」

「ユカ様、先を急ぎましょう」

「そうだね、急ごう」


 私達は近くの村を探す事にした。


「俺が近くの村を探してみるよ」


 そう言うとフロアさんはその辺りにいた鳥を使い、空からこの辺りを調べた。


「あったぞ、この先まっすぐこの道を進んだ所に村がある」

「わかりました、そこを目指しましょう」


 私達は一番近くの村を目指す事にした。



 村を目指し歩いていた私達は道端で倒れている母親と泣いている子供を見かけた。


「大丈夫ですか!?」


 しかし返事は無かった、子供は泣いたままだ。

 私は親に駆け寄り、その体を起こしてあげた。


「大丈夫ですか!? しっかりしてください」

「み……水を、その子に水をくださ……」

「わかりました! しっかりして、しっかりしてくださいっ!!」


 しかし母親は子供の水を頼み、それっきり事切れてしまった。

 私はすぐその子に持っていた水筒の水をあげた。


「はい、水だよ」

「おにいちゃ……ん。あり…が……とぅ」


 子供は水を飲むとそのまま息絶えてしまった。


「これがヘクタール領かよ……ふざけんな……!」

「ユカ様……」


 私はやるせない怒りをどこにぶつけていいのかわからなかった。

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