115 いざ! ヘクタール領へ!
ターナさんに最高の装備をもらい、いざという時の為の移動用のワープ床も冒険者ギルドに設置した私達はヘクタール領に向かう事にした。
「その前に……ここにもマーカーチェックをつけておかないとね」
「ユカ様……それは?」
私が用意したのは盗賊の住処で見つけたレアアイテム『マーカーチェック』だった。
これは簡単に言うと今の座標点がどこかを別の場所を起点にして調べる事の出来るレアアイテムである。
盗賊達はこれを使い、襲う商隊の位置を魔獣使いに的確に調べさせる事が出来たのだ。
「これはマーカーチェックさ、これがあれば今いる場所と印をつけた場所がどこかを調べる事が出来るってわけ」
「ユカ様、凄いですわ!!」
まあ実際にこれを使えば離れた場所にワープ床を作ってもここにすぐ戻ってこれるわけだ。
クーリエの神殿にあったワープ床はこのマーカーチェックがデフォルトであり、入口出口で設定できる優れモノだったのだが、遺跡の崩壊で使えなくなってしまった。
「ここにゴーティ伯爵の城からのマーカーチェックを座標入れて……ヨシ!」
「ユカ様……これは何をしたのでしょうか?」
「ホーム、今から伯爵の城に行くよ」
「え??」
私達は全員でワープ床に踏み込んだ。
◇
「ここは?」
「けっほけほっ、カビ臭いですわ! ここはお父様の城の物置ですわっ!!」
「本当に……一瞬で来れてしまいました」
レジデンス兄妹はワープ床を踏んだ事により歩けば一週間近くかかる距離を一瞬で城に戻れた事をビックリしていた。
「これは……悪用すればどんな事でもできる危険な能力だ!」
「お兄様。落ち着いて」
「……わかってるよ、でも……反対に正しく使えば攫われた人達を一瞬で全員助ける事も出来る」
実際、それは盗賊の住処で私達がやった事だ。
盗賊の奴隷や売り物にされていた人達を私達はこのワープ床を使う事で助け出す事に成功した。
「ユカ様! 行きましょう。この力で一人でも多くの苦しむ人達を助ける為に!」
「ホーム、そうだね。急ごう!」
私達は再度ワープ床を踏み、冒険者ギルドに戻ってきた。
「ユカさん、大丈夫ですか?」
「うん、これで準備は出来た! さあヘクタール領へ向かおう!!」
私はマーカーチェックの座標をリセットし、冒険者ギルドを拠点に座標を0.0に設定した。
私はこれを見て“ドラゴンズ・スターⅠ”で用意した『王女の祈り』を思い出した。
『王女の祈り』はクリア必須アイテムの『勇気の印』を手に入れる為に座標を調べるアイテムだった。
勇気の印の有る場所は攻略本等に載るまではだれもが悩むものであり、座標軸を祠の賢者に聞いた後、城から東76.南91の地点にある『ねこのひげ』を手に入れる為の物だった。
この意味不明の座標を調べる事と、さらに意味不明な『ねこのひげ』というアイテムを手に入れる苦行、これこそがクリア必須アイテム『勇気の印』の為に必要だったのだ。
ノーヒントから会話で探してマップの座標から目標物を探す。
これをRPGゲームに取り入れたのは私が初めてだったのかもしれない。
「ユカ様。それは何をしたのですか?」
「ルーム、これは伯爵の城に設定していた座標軸のリセットをしたんだ、これでこの冒険者ギルドを拠点に今度はヘクタール領にワープ床を作るってわけさ」
「凄い……ユカ様は何でもお出来になるのですねっ!!」
まあこんな芸当、元ゲームクリエイターでなきゃ思いつかないだろうな。
この作戦がうまく行けばヘクタール領の住民をここに移動させて助ける事も可能だ。
「なんでもは出来ないけど、出来る事は色々と考えてるよ」
「流石ですわ! 私も出来る事でお手伝いしますわ!!」
最近、ルームの私に対する態度がなんだかとても積極的に感じる。
そんな私を見ているエリアの表情が何だか複雑な感情に見えた。
「さあ、みんな、出発するよ!」