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109 男爵からの招待状

 シートとシーツを連れた私達は伯爵の城に戻る事にした。


「ワン! ガウゥ!」

「キャン! キャキャン!!」


 二匹(ふたり)は尻尾を大きく振りながら足取りも軽く走っていた。

 始めての戦いで勝利した事で自分に自信を持てたのだろう。


二匹(ふたり)とも元気になったね、エリアありがとう」

「……うん」


 エリアは少しうつむき気味だったが嬉しそうだった。

 実際エリアのレザレクションが無ければシートとシーツは怪我の後遺症がどこかに残っていたかもしれない。

 赤ん坊の怪我は一生成長に響く可能性があるのだ。


「ユカさん、二人はもう十分戦えますよ。俺が保証します」


 まあ生まれた時からレベル10相当の強さだ。

 それに実際の戦いの経験も積んだ、この辺りの敵なら十分戦えるだけの強さといえるだろう。

 レベル10といえば普通の一人前冒険者と同じくらいの強さといえる。

 シートとシーツは生まれた時からそれだけの強さなのだ。

 だが私達のパーティーは私がレベル44、他の人達は大体平均20前後といったところだ。

 双子が少し反抗したりしても十分大人しくさせられるだけの力はある。

 しかしルームは少し腰が引けていた、まああの双子の戦いぶりを見ればいくら見た目が可愛くても実際強いとわかる。


「ルーム……顔色悪いよ、大丈夫?」

「おお……兄様、だだ大丈……夫ででですわ」


 ルームが双子から少し距離を離して歩いていた。


「まったく……強がらなくてもいいのに」

「ななな、何をいいいいますのの?? わ(わたくし)ここ怖く……ありりませせんわ!」


 結局城に着くまでルームはシートとシーツに触れるどころか数メートル離れたままだった。



「皆さん、お帰りなさい!」

「アニスさん、ただいま」


 双子はアニスさんに大きく飛びついた、流石にアニスさんも大きな双子に押されて後ろに転倒してしまったが、大したけがは無かった。

 シートとシーツは賢いのだろう、敵と味方の区別がついているので飛び掛かるにも力の加減をしっかり考えていた。


「フフフ……二匹(ふたり)共くすぐったいですよ」


 シートとシーツは嬉しそうにアニスさんをペロペロと舐めていた。


「ユカ様、皆様、旦那様がお待ちです」

「伯爵様が?」

「はい、皆様。旦那様の執務室に御越しくださいませ」


 私達はシートとシーツをアニスさんに見てもらう事にして伯爵の執務室に向かった。


 コンコンコン


「どうぞ、お入りください」

「失礼します」


 伯爵は私達を迎え入れ、ソファーに座らせた。


「実は皆様にこれを見ていただきたいのです」

「これは……?」


 伯爵が出したのは簡易式の封緘に入れられた一枚の用紙だった。


「これは……略式用の封緘だねぇ、正式な印璽の封蝋が使われていない」

「ほう……流石はマイルちゃん、気が付きましたか」


 どうやらこれはヘクタール男爵から送られてきた略式の封緘のようだ。


「まったく……私を怒らせる為にここまでするかね」

「わざわざ爵位まで間違えて送ってくるとはね……」


 伯爵は怒るよりもあまりの稚拙さに呆れていた。


「お父様、この字……見た事がある様な気がします」

「ふむ、ルーム。よく気が付いたね」


 封緘の中の紙は普通の紙より少し上等な紙だった。

 その中にはこのように書かれていた。


―――――――――――――――――――――――――


親愛なる辺土伯、ゴーティ・フォッシーナ・レジデンス殿



 さて、今年は生憎の天候が続き、凶作に見舞われたがいかがお過ごしか。


 来る来月の新月の晩に、恥ずかしながら私の就任記念を兼ねた収穫祭を行う事となった。

 王都より公爵以下貴族諸侯各位もお招きしての催し、多忙とは思われるが貴卿も来られたなら無上の喜びと存じ上げる。


 これを以って収穫祭への招待状と代えさせていただく。貴卿の良き返事をお待ちしている。

 草々。


 なお、先日、不幸にも盗賊に捕らえられた貴卿の領民を救出し、我が領内にて預からせて頂く。現在は無事である。

 使いのものをよこしていただけたならそこで貴卿の領民を引き渡す準備も進めておく旨、取り急ぎお伝え致したく。

 民を何より大切にされる貴卿へ、時候の挨拶より先に何よりお伝えしたかったことを急ぎ書かせていただいた無礼はどうか許していただきたい。


 『カッツェーエ・ヘクタール』

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