107 兄と妹のコンビネーション攻撃!
◆◆◆
双子のシートとシーツは二匹でお互いの死角を庇うように左右前後反対になるように体を重ねた。
「ギャギャギャー!!」
先程蹴り飛ばされた二体のゴブリンも戻ってきた。
先程の回し蹴りではダメージは与えられていても致命傷には至っていなかったのだ。
四体に戻ったゴブリンは二体二体に分かれてシートとシーツに攻撃してきた。
棍棒をやたら滅多に振るってくるゴブリンが一体、先程蹴りを食った奴だ。
こいつは先程蹴りを入れられたことを恨み、シーツ目掛けて棍棒を何度も振り回してきた。
「クウウルルルル!!」
シーツの長所はブランカから受け継いだしなやかさだ。
彼女はその棍棒を受け流すようにステップを踏み、ゴブリンの足を目掛けて足払いで転ばせた。
「ギャッ!」
転んだゴブリンの上にまたがったシーツは倒れたゴブリンの首めがけて噛みついた!
シーツは噛みついたまま力任せに首をねじった。
「ギギェーーッッ!!!」
首を折られたゴブリンは死亡した、残りは三体。
シーツは死んだゴブリンを足で踏みつけると残りの三体を睨みつけた!
「グルルル……」
シートもシーツだけに任せてはおけないと戦う準備は出来ている。
しかしシートは自ら噛みつく事はしなかった、まだ自分の力では相手を倒しきれないとわかっているのだ、これが聖狼族の戦いの遺伝子なのだろう。
「ギャゲーー!!」
シートはこの瞬間を待っていた!
相手が棍棒を叩きつけてきたタイミングを狙って体を躱したのだ。
叩きつけた棍棒を躱されたゴブリン目掛け、シートは噛みついた。
まだ歯が無いので直接のダメージは与えられないが、レベル10相当の力による顎の噛みつきは万力で挟んだような力だ。
シートに噛みつかれたゴブリンの腕は骨にひびが入りゴブリンは痛みで棍棒を落としてしまった。
「ギギャギャー!!」
ゴブリンにもモンスターながら仲間意識はある。
シートに噛みつかれた仲間を助けようと二体が棍棒を振りまわし、もう一体は石を投げつけてきた。
ガッ!!
「ギャウゥゥ……」
シートは投げつけられた石も棍棒も避けもせずそのまま全部のダメージを受け入れた。
ここで下手に噛みつきをやめると反撃を喰らうのが分かっていたからだ。
シートは噛みついた手を離さなかった。そして下にゴブリンを叩きつけたのだ。
ボギャッ!!
ゴブリンの腕の骨が折れた、コイツはもう戦力外だ。
腕の折れたゴブリンは手を抑えながらゴロゴロと痛そうに転がりまくっていた。
「ガオオオーーン!!」
小さな獣王は力強く吠えた! それは自らを鼓舞するものであり、また妹と一緒に戦う意思の表れだった。
「グゥウウウウウ…… アオーーン!」
シーツもそれに答えた! 兄と一緒に戦う為だ!
その二匹の声を聞き、ユカ達が追い付いた。
◆◇◆
私は戦う双子を見つける事が出来た、しかし二匹ともあちこち怪我をしている。
相手はゴブリンだ、何体かはすでに死んでおり、二体は戦闘不能で転がっている。
「シート! シーツ!」
飛び出そうとした私をフロアさんが手を出して止めた。
「ユカさん、ここは手を出さないでください。これは銀狼王の子供達が超えるべき最初の試練なのです」
「……わかりました」
私達は双子の狼がゴブリンと戦っているのを見守る事にした。
既にゴブリンは残り二体まで減っている、双子の狼がそこまで自力で戦ったのだ。
「グゥゥゥ……」
そこにいたのは小さいながらも誇り高き銀狼王ロボそっくりの銀狼とその妻ブランカそっくりの白狼だった。
「キャン! キャン!!」
シートとシーツの双子はタイミングをうかがっていた。
残りは二体、こちらも双子なので二対二の対決である。
最初に動いたのはシートだった。
シートはゴブリンには飛び掛からず、全く違う木に登ったのだ。
地面にいるゴブリンはシーツが翻弄していた。
そして、木の上に立ったシートはゴブリン目掛け勢いよく飛び降りた!