100 収穫祭の始まり
ついに100話到達です!
皆さんが見てくれるので続けることができました。
「聖狼族……ですか」
「そうです、私も実物を見るのは初めてですが」
「お父様、私この子飼ってもいいでしょうか?」
伯爵は少し考えてからゆっくりと口を開いた。
「ルーム、聖狼族は誇り高き森の守護者だ。そして彼らはとてもプライドが高い」
「お父様……どういう事ですか?」
「彼らはレベルが高く、器を認めた相手には従順だが、一度でも相手がそれに見合わないと見なすと容赦なく食い殺す獰猛さもある」
「!!??」
「ルーム、キミにはその覚悟があるのかい? 下手すれば食い殺される相手だよ」
「だだだだだ……だいじょうぶででですすぁわわわ」
ルームが相当怯えていた、まあそんな話を聞いたら誰だってビックリする。
「とはいえ……まだ赤ん坊だ。今のうちにしっかり愛情を与えて育ててあげるといいだろう、ルーム。お母さん代わりはしてあげれるんだね」
「ももももmもちろんですぁあわ!!」
ルームは気丈に振舞おうとしていたが、やはり聖狼族の凄さを聞いて腰が引けていた。
まあ実際のとこ、今のルームは下手な駆け出し冒険者よりよほどレベルが高く、オーガーも倒せる程だ。
双子が生まれたてでもレベル10相当だったとして十分それよりも強いが、彼女にはまだその自覚は無いようだ。
「まあいいだろう、その子達と一緒に旅をしておいで」
「お父様!?」
「詳しくは収穫祭が終わったら話す、それまで自由にしていいよ」
「お父様! ありがとうございますわ!」
ルームは嬉しそうだった。
しかし、一緒に旅をして来いという事は、ホームとルームの二人の許可証も出すという事だろうか。
「皆様、収穫祭の準備が出来ております」
バスティアンさんが私達を収穫祭に連れて行ってくれた。
「貴方方には来賓として特別席をご用意しております」
「えー! 私もっと自由に回りたいのにー」
「ルーム、僕たちだからこそしなければいけない事もあるんだよ」
まあ、ゲストというか来賓というかだと気楽に買い食いや食べ歩き、自由に遊ぶことは確かにできずに退屈なのだろう。
私は元々株主総会や新入社員の入社式、社員の結婚式に他社との交流会や雑誌インタビューなどでイベントやセレモニーの来賓としての立場は何度も経験している。
なのでこういう場合の立ち振る舞いは慣れたものだ。
「マママ……マイルさん、俺こういうとこ初めてなんだよ。俺どうしていればいいの?」
「あーら、別に何もしなくていいんですわよぉ。ただ座っていればいいだけですわぁ」
マイルさんは商会の一流商人としての経験があるのでこういう場合でも物怖じしていなかった。
つまりは来賓経験者は、私、マイルさん、レジデンス兄妹というわけだ。
「ユカ……私どうすれば……」
「大丈夫、ここに座っていればいいだけだよ」
そう、こういう場合はただ座っているだけでいいのだ。
別段何かをする場合は司会が私達に挨拶をお願いしますと言ってくる。
私にはぶっつけ本番でのお祭り事には経験があるのでアドリブも可能だ。
「ユカ様……随分落ち着いておられますね」
「まあね、こういう場合は焦らず座っていればいいと思うんだ」
まさか前世で経験があるなんて言うわけがないので、処世術を身に着けた程度に思わせておくことにしよう。
その後私達が椅子に座り、20分程後、音楽隊の演奏が始まった。
演奏が一通り終わった後、執事のバスティアンさんがタキシード姿で現れ、高らかに宣言をした。
「皆様。大変長らくお待たせいたしました! これよりゴーティ伯爵様主催、収穫祭を開催致します!!」
「「「ワアアアーーーーーッッ!!」」」
「「「ワーアアアアーーー!!」」」
割れんばかりの歓声と大観衆の拍手が沸き起こった。
誰もがこの収穫祭の開催を心から待ち望んでいたのだ。
そして、収穫祭が盛大に始まった。
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