序章 二人で一人の転生クリエイター
あけましておめでとうございます。
カクヨム投降に合わせて第一話から大きく修正しました。
今の第一話はそのままですがその前に序章を追加しました。
「この辺り一面を全てマグマにチェンジ!」
私は自分の足元以外の全てを灼熱の溶岩にマップチェンジした。
周囲四キロ程が一瞬で灼熱の海に変わる。
――GYAAAOOOOWww!!――
アンデッドの群れが瞬く間に溶岩に飲み込まれていく。
私の周囲にいたモンスター達の大半は溶岩の中で溶けてしまい、再生すらせず消滅した。
「な、何なのよアンタ……アタシちゃんの、アンデッドを全滅させたの⁉」
魔将軍アビスは私のスキルに驚愕していた。
私は転生者だ。そしてこの今の体の持ち主は、眼前の魔将軍の力のせいで眠ってしまっている。
だから私はその身体を使い、彼の代わりに戦っているのだ。
今この身体の中には私と、今の時代に転生したユカという少年が居る。
私達は二人で協力し、この世界を救うために戦っているのだ。
何故このような事になったのか……それは、話せばとても長くなるだろう。
そう、これはハズレスキルと言われた――床張り、それを使いこなして世界最強とも言われるようになった私と彼の物語だ。
元ゲームクリエイターの私と、今の世界で私の転生した少年ユカ。
お互いがその存在を知るまでには長い時間がかかった。
だが、それ故に私達はお互いの事を知り、共に戦うパートナーとなったのだ。
それを語るには……まずは私が死んでしまった時の事から話すべきだろうか……。
――薄暗い山道の峠の中をフルスピードで走り抜ける車、私が車を運転するのは数年ぶりだった。しかし私はどうしても今日中に目的の場所に行く必要があった。
なぜ車の素人の私がドライブインで休憩もせず運転しているのか、それはスタッフ全員のスケジュールで考えると私しか抜けることができなかったからだ。
数年ぶりの運転はかなりハードに感じる、疲労もピークに達していた。
「今日中に目的地にいかなくては!」
車の後ろには会社のみんなから託された書類が詰め込まれたトランクが山積みになっている。これをどうにか届けないと!私が焦っているのはそれが理由だった。
スマートフォンからいきなり戦闘突入のBGMが流れてきた!
勇壮なイントロが人気のわが社のゲームの人気曲ランキングトップの曲、――勇壮に立ち向かう――だ。私は通話ボタンを押してからハンズフリーで話し始めた
「はい板上です」
「板上さん! 今どこですか!?」
「外雨大丈夫ですか!」
「もうT県には入りました?」
「またバグが出たので戻り次第確認お願いします!!」
「俺はもう地獄の三丁目を超えたぜ……お前は今どこをさまよっている??」
スタッフの居残りメンバー全員が一斉に話し出した、そんなの一気に聞き取れるか!?
「わかったから全員一人づつしゃべれ!!」
「わかりました、すみませんチーフ」
「頼むよ」
「真下です、こちらはテストプレイ終了までほぼ終わりました。しかしやはり指摘のあったラストダンジョンが冗長でワンパターン化しているとのレポートが多数です」
「どう考えてもそのまま発売ルートだと間違いなく爆死大炎上確定だな、わかった!何が何でも延期させよう!」
「栗橋です、天気予報でT県の山間部は大雨洪水警報がつい先ほど出たとのことです、ですので気を付けてください」
「今のスタッフ状況では僕しか乗れない状態だから仕方がないよ、できるだけ気を付ける。そちらは攻略本用の4コマを早く完成させてくれよ」
「静谷です、移植用の携帯機テストでモンスターとの戦闘シーンを動かしてみたらカクカクでドットキャラが動いてます」
「携帯機用にもう少し容量を下げた方がよさそうだな、戻り次第調整しよう!」
「土岐田です、モンスターによるドロップアイテムの確立にバグ発生、町の中で話しかけるといきなり別の場所に飛ばされるバグが報告されました」
「戻り次第確認してすぐ修正する!ほかのバグの確認を頼む!だがなぁ、前回も同じようなミスあったからな、今度カツ丼おごれよ! 卵丼じゃなくカツ丼の特上だからな!!」
「鳥川だ、俺が行ければドライブは最高だったんだがな、まだ神の台本が出来上がっていないんだ、オイ!バッドラックとダンスするんじゃねぇぞ……!」
「わかったからお前はミニゲームのドライブゲームのシナリオさっさと完成させろ! 趣味丸出しにするんじゃないぞ!!」
全員の言いたい事を聞いた後、私は急ぎ気味に彼等と話した。