序章
初めての連載となります。
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王都の近くにある山の奥深く。緑の草木が生い茂り、道と言っても緑の中に出来た獣道を越えたところにその小さな古い家はある。
こじんまりとした小さな家。背のとても高い男性がそこで暮らすには厳しいサイズの、木でできた可愛らしい家。
そんな小さな家の近くには池があり、そこでは、ぱちゃぱちゃと長く優雅なひれで水音を立てて泳いでいる何かがいる。
畑では、葉が青々とした薬草が等間隔かつ種類別にきちんと並んで生えていた。
管理している人はとても丁寧な人だろうことが誰でも分かるように整理整頓されている。
家の周りには木や花が丁寧に程よく手を加えられた状態で存在していた。木には美味しそうな色をした実がたわわに実っており、花は大きなものや小さなものがそれぞれ纏められてそれぞれ綺麗に咲いている。
その庭は誰が見ても手入れされていると分かり、美しいと思えるものだったが、この庭が賞賛されるどころか人の目につくことはあまりない。
何故なら、この家に時間が有り余った人が訪れることはないからだ。
この家を訪れ、金を落としていく者は大抵夜にこっそりとやってくる。
身分がばれないようぼろぼろのローブを羽織ってフードで顔を隠したり、侍女や部下といった者に行ってもらったりと様々な方法で他人に知られないようにしている。
彼らはこの世界にたった1人しかいない彼女に願いを叶えてもらうため、大金を積み、何度も何度も訪れては頼んで彼女がやる気になってようやく彼らが望むもの、魔法の薬を作ってもらうのだ。
逆に、彼女の助けを求めてやってくる民達は昼間にドンドンとドアを急いで叩いて願う。
そんな民達に彼女は優しく出迎え、無償の貢献をする。
傷付いた者を癒し、病気の者に高価な薬を渡し、災害があればいち早く駆けつけ誰よりも働き、誰も知らないうちに帰っていく。
この小さな家、いや庵を訪れる者は皆、敬愛の感情をもって最後の砦であり、希望の星でもあるこの庵の主人のことをこう呼んだ。
“悠久を生きる善き魔女”と。
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