4杯目:再会
「やっぱりこれは持っていった方がいいよな。」
朝食を終え自分の部屋に一旦戻ったヒロトはショットガンを手に取り、ヘルベアーと遭遇した時のことを思い出していた。あんな化物が他に何頭もいるとは考え難いが、他にどんなモンスターや危険が待ち構えているのかわからない。準備は入念にしておいたほうがよい。
近距離戦用はショットガンでいいとして、超接近戦用と中距離戦用の武器が欲しい。それと防具。ヒロトは必死にイメージをし、ザ・アルティメットを発動させた。すると床に刀身1m程の剣とハンドガン、それと新しい学ランの制服が具現化された。
「え?なんで学ラン?」
ヒロトは学ランを手に取り、再度ザ・アルティメットを発動させ究極のチュートリアルを投射させる。
【究極の学ラン】
究極レベルの防御力と耐熱耐寒防刃機能を持った学ラン。ヒロトが一番着慣れたものが基盤に選ばれた。ズボンのポケットは異空間ポケットになっている。
「なるほど、だから学ランな訳か。で、この異空間ポケットっていうのは・・」
ヒロトは究極の学ランに着替え、ズボンのポケットに手を入れてみた。
「な、なんだこれっ?」
ポケットの中に手をいれると、普通なら自分の脚の感触やらそれこそズボンの感触があるはずなのに、そこには何もなかった。何に触れることもできなかった。
「ここに何でも入るってことか?この剣もはいるのか?」
剣を左ポケットに突っ込んでみると、すんなりとポケットに入ってしまった。同じようにハンドガンとショットガンも右ポケットに入った。完全に入ったあと、もう一度取り出す時もどういう理屈か分からないがハンドガンかショットガン、自分が意識したほうが手に吸い付くように取ることができた。
「それも マスターの 魔法?」
一部始終を見ていたテトラは驚いた。そこにあったものが無くなったり現れたりする。見たこともない魔法を使うヒロトにテトラは興味津々だった。
「魔法っていうか・・能力?というかドア開いてた?」
「うん 開いてた マスターが着替えてるの ばっちり見てた」
「えぇ・・ちょっと恥ずかしいから、今度からそういう時は声かけてよ。」
「わかった それより 森に行く準備 出来た?」
「うん、じゃあ行こうか。」
森の洞窟にはヒロトとテトラで行くことになった。あいなはギルドの仕事があり、琴葉はまだ起きてこないからだ。テトラは見た目が幼女なので一緒に危険な森の中に行くことに抵抗を覚えたヒロトだったが、あいな曰く、テトラは森を熟知しておりモンスターと遭遇しても魔法で対応出来るとのこと。それでテトラがヒロトの部屋まで迎えに来たのだ。
あいなに見送られ、ヒロトとテトラは森までやってきた。若干躊躇いがちになるヒロトとは違い、テトラはすたすたと森に入っていく。
「そんなに不用心にいって大丈夫なのか?急にモンスターに襲われたりしないの?」
「大丈夫 モンスターの気配は しない」
「気配って、そんなのもわかるのか。」
「いつか マスターにも わかる」
前を歩く幼女に置いていかれないようヒロトは必死についていった。
「これでギルドのマスターだなんて、笑い話だ・・」
「あまりゆっくり歩くと 悪い虫に襲われる このくらいの速度が ベスト」
「まぁ、がんばってついていくよ。それよりさ、もしかしたらその辺にオレのカバンが・・」
「しっ・・」
テトラが急にしゃがんでヒロトに伏せるよう指示を出した。ヒロトは急いでテトラの後ろにつきしゃがむ。
「どうした?」
「向こうの方に モンスターの気配 誰かが 襲われてる」
「まずいじゃん、助けに行かないと!」
「マスターは ここにいてもいい テトラ ひとりで行く」
「心配してくれてるのか?大丈夫だ、オレも戦えるぞ。」
正直ヒロトは若干の恐怖を感じていた。それも仕方のない話、見たこともない大きさのヒグマのようなモンスターに殺されそうになったばかりなのだから。しかし一人で行くという幼女にたいし、じゃあここで待ってますとは言えなかったのだ。
「そう でも 無理はしないで・・」
先程より少し早歩きになったテトラに付いていくヒロト。二人は音が徐々に自分たちの方に近づいてくるのを感じた。テトラは杖に魔力を、ヒロトはショットガンをポケットから出し構える。すると木の陰から盗賊風の中年の男が姿を現した。全身いたるところから出血しており、左腕はちぎれてなくなっていた。
「だっ・・大丈夫ですかっ?」
声は出せたが脚が前に出ない。気持ちでは手を差し伸べたつもりだったが、血まみれの人間を目の前にしヒロトの体は硬直してしまったのだ。
しかしこれは幸運であった。男が一歩前に出た瞬間、その頭上から巨大な黒いものが覆いかぶさり男の上半身を噛みちぎったのだ。一瞬聞こえた男の断末魔の声がヒロトとテトラの耳に突き刺さる。上半身を失った男の下半身は血を噴き出しながら2,3歩歩いて地に倒れた。
危険を感じとってもヒロトは依然として動けなかった。武器や防具は確かに準備してきたかもしれないが、気持ちの準備まではできていなかったのである。そして男を噛みちぎった張本人を見て、さらにヒロトの恐怖心は高まる。
「ヘルベアー・・」
読んでくれている方々に感謝を込めて。




