フィルと占い
大賢者の孫娘であるフィル。
普段の行動からは想像も付かないが、案外、教養豊かなところもある。
それを証拠に占学にも通じており、タロット占いなども得意だった。
先日もメイドのシャロンが水難事故に遭うと予言し、白百合寮の娘たちを驚かせたものである。
シャロンが洗い物をしているときに水道管が破裂し、水浸しになってしまったのだ。
以来、フィルには霊的な力があると、学院の中で話題になっていた。
昼休みになるとフィルの机に行列ができる。
「フィルさん、どうか私を占って!」
フィルは渋い顔をする。
「爺ちゃんが言っていたの。占いは気軽にするものじゃないって。占いは結局当たるも八卦、当たらぬも八卦なの。凶報を信じて悪い方向に進んじゃう人もいるし」
「お礼にクッキーを持ってきました」
女生徒がそう言った瞬間、すでにフィルはクッキーにかぶりついていた。
「もしゃもしゃ、がぶがぶ、でも、爺ちゃんは言っていたの。占いを生かして善き方向に行く人もいるって。それでなにを占えばいいの?」
「恋愛運!」
女性とは顔を上気させながら言う。
どうやら意中の男子がいるようだ。
フィルは水晶玉を取り出すと、怪しげに魔力を送り込む。
「えこえこあざらし……えこえこあざらし……」
呪文の詠唱は適当であるが、占いの力は抜群で、水晶玉に女生徒と男子生徒の顔が映し出される。
両者、微笑んでいた。
どうやらふたりの相性はぴったりのようである。
それを伝えると女生徒はとても喜んでいった。残りのクッキーをすべて置いていく。
「占いだけでこれだけお菓子を貰えるとは、街はやっぱりいいとこなの」
とクッキーを食べていると、フィオナの担任がやってくる。
フィルが占いで商売していることを咎める。
「フィルさん、魔法を使って商売をしては駄目です。めっ! ですよ」
「おお、そうなのか」
フィルはいい子。素直に従うと、水晶玉をしまう――前に担任の恋愛運を占ってみた。
明日、お見合いをすると言っていたからだ。
フィルが興味本位に調べた結果は「凶」であった。
どうやらお見合いは失敗するようだ。
フィルは連休明けに担任の機嫌が悪くなると確信したので、そのことをクラスメイトに伝えると、クラスメイトは担任をいたわるようになった。
連休明け、担任は傷心を隠さなかったが、クラスメイトたちのフォローでクラスは荒れることがなかった。フィルはお礼のお菓子をもらいご満悦になった。