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悪魔の選択

 能力の凄さに驚嘆する誠と怯えるマスティマ、右手は悪魔のそれに変貌し、

遥か先に離れた岩をも一撃で破壊してしまうという人外の力が如実に表れていた。


「これを...俺がやったって言うのか!?」

「っふ」


肩に手を乗っけたのは誠だ。

含み笑いを浮かべながら俺の俺の元へやってきた


「お前のその力を使えば悪魔に勝てる...間違いない」

「そ、そうか」


アーモンドは俺を悪魔と勘違いしているものだと思っていた。

しかしそうではない、俺の本来の姿が悪魔のものだと言うことがこれではっきりと分かった。

誠は疑う予知もなく人間おれの本来の能力が悪魔のものだと勘違いしているのだ。


「どうやら今日の戦いでお前達には戦闘に参加してもらう事になりそうだ」

「参加って...俺とアーモンドがか?」

「そうだ、初実戦でお前達を失う危険は勿論あるがそれ以上に天使の数が残りわずかなんだ、これ以上失わないためにも俺達と一緒に悪魔と戦ってくれないか?」

「た...戦ってくれって言われても俺は...」

「勿論リスクがでかいのは分かる、だが悪魔と戦うにはどうしても天使の力より大きいものを持つ、人間(おれたち)の力が必要なんだ、俺もできるだけお前たちを守って戦う事を誓う、だから頼む」


 ここまで頼まれたら断る訳にもいかないだろうか。

だが戦いよりも不安なのはアーモンドの目の色だ。

その眼はどこを見ているかも分からず、中身を覗こうとすれば先が見えない程の遥か奥にある虚ろな目である。

悪魔の力を隠している彼女にとっても誠が勘違いしていたのは幸運だと思えるが、それでも都合が悪い何かがあるのだろうか。


「いいわ、あなたの言う通り今は悠長な事を言ってる場合じゃないのよね」

「分かってくれるか、すまないな」


真っ先に同意の返答を返したのはアーモンドだ。

彼女が行くというのならば俺も同行せざるを得ないという事か……。


「わ、分かったよ……仕方ないな……俺もついていくよ」

「本当か!? 守るとは言ったけど悪魔の力はお前たちが考えてるよりよっぽど恐ろしい者だぞ? それでもいいんだな?」

「行く前からびびらしてどうするのよ、それにさっきも言った通り時和の力があれば大丈夫だわ」

「確かにそうだな……パワーだけなら俺の何倍もある、戦闘において早めに慣れるためにはどうしても実践を詰まないとダメなんだ」


どうやら俺は妙な期待を込められているようだ……。

喧嘩なんて学生時代まともにしてこなかった俺に一体何ができるというのだろうか。

なんやかんやで今日の夜再びこの場所に集合するよう命じられ、それまで部屋で待機との事だった。


部屋に辿り着いたときに真っ先に見えたのはふかふかのベッドだ。

俺は靴を脱ぐと同時に目を瞑りベッドに走って向かった、

しかしベッドに倒れる前にふかふかとした感触が顔全体を覆ったのだ。

それを両手で触ると出っ張ったような柔らかい物が二つ、顔の横に置いてあり、

まるで谷間のようなクッション二つに挟まれている感触があった。


「なんだこれ……」


目を開けるとそこには何も映っておらず、透明の空間である。

しかしクッションの感触は消えないまま、俺はその透明の空間ごと、その二つの出っ張りを揉み続けていた。


「はあ、もう~、バエルは本当にせっかち屋さんなんだから、そんなに私としたかったのなら言ってくれればいつでもしてあげたのに……」

「わー!!!」


現れたのはアーモンドである、確か彼女の能力は透明人間になる事だったか。

彼女は俺をベッドに連れ込むかのように手首を引く。

確かにベッドにはいこうとしていたが、若いムチムチした女の子と行くのは訳が違うのだ。


「さてこのまま話をしようか……」

「……」


気付けば彼女の胸の上でうつ伏せになって寝ていた。

両手腕は包み込むように俺の背中に巻き付いている。

これが悪魔なら種類はサキュバスなんじゃないかとも思ったが、

元は人間の身体なのだから勘違いしない方がよさそうだ。


「それで話って……」

「今日の夜の事よ、悪魔退治に行くって話」

「ああ、そういやお前の仲……俺達の同胞を殺して本当にいいのか?」

「フフッ殺すのは悪魔な訳ないでしょ、あの醜い天使と誠っていう人間よ」

「っな……」


それは予想もしない言葉だった。

もし彼女が天使達と戦争を始めるにしてもこんなにも早いものだとは思わなかった、

でも一体何故こんなに早く動こうと思ったのか。


「本当は内部からじっくり壊していきたかったけど今日ので全部ばれちゃうからね~」

「今日のでってあの能力の事か? だったら誠は勘違いしてくれてただろ……? なのにどうして!?」

「はははっ、勘違いしたのは人間だからよ、もしあなたの能力が大天使共の耳に触れたらとんでもない騒ぎになるわ、それに若干あの目障りな天使はあなたの能力について疑いをかけていたかもしれないわね」

「あの天使って……マスティマか……」


アーモンドが俺に能力がいかにもあるような言い方だったから何とかしようと思ったが、

どうやらそれは失敗だったようだ。

それにしてもアーモンドがあの時に求めていた能力は他にあるというのだろうか、

それさえ分かれば誠と組んでこの悪魔を追い払えるかもしれないのだが。


「あの目障りな二人を潰した後一旦悪魔城に戻るわよ、戦力は少しでも削っていた方がいいからね~それにあの人間の言い草だと天使の力はもうあまり残ってなさそうだし」

「あ、ああ……」


俺は今とんでもない選択肢を迫られているんじゃないだろうか。

もし今ここでアーモンドを殺しさえすれば悪魔の暴走を止められるだろう、

だが果たして彼女を殺せた処で残りの悪魔全てを殺す事が出来るのだろうか。

それは最後の最後まで決まる事の無いような答えだった、

もし天界が崩されれば天国にいる俺の両親や友達は今のような平穏な暮らしはできない訳だ。

それでも俺は悪魔側に付くべきだというのか、自分だけのために。


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