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徒然枕物語 伍  作者: 緋和皐月
5/16

生きるということ

 

 多くの人から 家族から奥へ奥へと追い詰められて

 誰かの温もりが恋しくて いつも「誰か」を探してる


 しかし「誰か」は見つからない

 温かく見えた人間は 氷で出来た人形だった



「生きたいと願う人間に 自分の命を全てあげたい」

 そう思うことは罪では無い

 思うだけなら 罪でも無く 悪でも無い



 生きることが苦しくて 全てから逃げたい

 そんな思いに囚われる

 何度も何度も 囚われる

 逃げたい全てに 囚われる


 私の後ろを追いかける 不気味な黒い影は何ですか?

 私のことを嗤いだす あの恐ろしい声は何ですか?



 囚われたことの無い人間は 軽々しく言葉を紡ぐ

「生きろ それがお前の義務だ」と


 囚われてばかりの人間は その言葉を受け 生きようとする



 しかし しかし ああ しかし


 どこにも 逃げる道は無い

 どこにも 自分の居場所は無い

 どこにも 温かな愛1つ 落ちてやしない


 どうにかして生きていりゃ きっと幸せになる日が来ると

 幸せを掴むために生きろと

 幸せになった人間が言う


 幸せを知らぬ人間に 幸せを掴み損ねる人間に 幸せになれぬ人間に

 どうにかして 生きろと言うのか


 神が与える重い荷は 決して全てが平等で無い

 確かに平等に 人間というものをつくったろう

 しかし生まれ落ちた場所 生まれ落ちた身分など 学力が高くとも変わりはしない


 どうにかしても変わらない

 どうしたとして変わらない



 貴方は 幸せを知る人間ですか

 それとも 知らぬ人間ですか


 貴方は 幸せになれる人間ですか

 それとも なれぬ人間ですか



 辛い中 苦しい中 死んだ方が楽だと思えるほど

 悩みに悩んだ者が 生きたとして


 幸せになれる人間は 生きてて良かったと笑うだろう

 幸せになれぬ人間は 無理に生きてもどうしても中身は空っぽの箱となる



「生きる」ということ

 それはどういうことですか


 心が死んでいる人は

「生きている」と言えますか


 心が死んでしまうほど 苦しむ人に

 貴方は「生きろ」と言いますか


「世界には恵まれぬ人間がいるのだ」と

「生きたくても生きられぬ人がいるのだ」と

 貴方も そう言いますか


 恵まれぬ人間に会ったこともないくせに

 生きたい人の気持ちも分からぬくせに

 広い世界を見渡すことに怯えるくせに


 生きたいと願った死者たちに 自分の命をあげたいと

 泣いて思う それはいけないことですか


「生きる」ということ

 それは押し付けても良いものですか


 押し付けられるのは辛くても 押し付けるのは楽だった

 私の心は死にました 当然の報いです


 無理矢理「生きて」と頼んだ私

 優しい貴方は苦しんで 貴方の世界は消えてった



「生きる」ということ

 それは どういうことですか

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