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6~

   6


 ジョーク画像を送信後の動きは、案の定慌てているのが見えるように、情報の錯乱があるようだ。

もしかしたら、どこかの政府専用回線があったかも知れないので、敵というより犯人を探せとなってるかも知れぬ。


単に潜り込ませただけでなく電波ジャックなので、一定時間はずっとアホみたいな画像が挨拶しているのである。

次にしようと思ったスリル満点な策略を思いついた鷹士は、分遣隊のアイン中佐に繋いでもらい、地球の重力場と距離を計算させてビーム砲の出力調整もさせていく。地球目掛けて発射しつつ反れていくようにする為だったが、それに匹敵する物体があった。


それは隕石である。

わざと隕石群がある場にビーム砲を打ち込み、地球側にいくつか飛んでいく軌道を計算させつつ、際どさはない距離で打ち落とせるように仕向け、地球側に危険警報を与えつつ安心も与える策略。

分遣隊の数隻の艦で位置に着き、出力調整をしたビーム砲で隕石を跳ねさせ、その後照準を合わせたまま地球側に向けて隕石は移動していった。


今頃、某宇宙局でも警報が鳴り響いているのであろうと思いつつ、そこに居ない鷹士は「んっくっくっくっ」と笑い声を漏らしていた。この時も絶対に敵には回したくない人物の堂々1位に入ると部下達からも思われていたが、面白さは解ってくれているようだ。

すぐそこに居るソフィでさえ、微笑みを浮かべていたのである。

キツイ、ジョークであるが他人の不幸を喜ぶのは良くないことだ。


地球側の慌てっぷりも手に取るように解る。

何しろ、鷹士はちょっと大きめのがいいと指示していた。

よって、地球側が察知した時には既に遅しで衝突すれば人類滅亡間違いなさそうで、対抗手段の検討の時間すらないのだ。緊急発射で核ミサイルを撃とうにも位置特定から軌道計算、起爆の距離や破片上になった場合の想定もしなくてはならないのだから。


鷹士が言うまで隕石追撃も出来ない。

「さぁーて、そろそろいいかな。もう少し待ってみようかな。ぬふふふふっ。・・・ヨシッ、撃て!」

この一言で砲撃が始まり、隕石は木っ端微塵で地球に落下することはなく、地球側では上空で派手な花火が上がったように見えるであろう。

分遣隊のアイン中佐には「おぉ、良くやった」と言い、アインは喜びの笑みで居た。

ソフィも、もう隠さずに笑顔で居て胸を撫で下ろしていた。

誰もが緊張していたようだが、鷹士の余裕ぶりのせいもある。


緊張どころじゃなかったのは地球側だ。

妙な画像での挨拶に始まり、巨大隕石の突然の到来、慌てふためき危うく核ミサイル発射の起動に手を下そうとしてしまった某国の大統領も居たようだ。

その某国の宇宙局では皆が揃って「え”っ?」となったのが隕石砲撃で消滅の瞬間である。

どこの国だと一斉に調査に入るが、画像解析をすると地球上には有り得ない兵器が使われた模様と憶測も飛び交う。

超電磁砲もまだ試作段階という発表ではあるが、実際は発射実験も成功していた。

しかし、どう見ても色付きのレーザービームに見えたので某国が隠していた最新兵器ではないと確信されていた。


多言語があるのはホーク星も同じであるが、何故か普通に話せていた鷹士。

自動翻訳機でも仕込まれていたかとも思うが、通じるならいいという感覚。

地球語も鷹士の助言で暗号通信であろうと翻訳されていく。

その中で拾った通信を司令室に流していく。

【今のなんだ?オマエの国じゃないのか?・・・なにぃ?ウチは撃ってないぞ】

【通信が妨害された形跡も・・・】/【え?何?もう大丈夫なのか?】など。

司令室内は隠れて悪戯した気分で笑顔が絶えなくなっていた。


そこへソフィが意見を申してくる。

「あ、あの・・いいんですか?陛下の母星ですよね。お言葉ですが少々、やり過ぎ感も。ですが、・・・んふふっ。失礼しました」

さすが、ド級のSのソフィも楽しんでいるようだが一応は言ってることも確かであった。


そろそろ外に目を向けてくれてもいい頃合、と思っていた鷹士の策略は見事的中する。

地球側の電波望遠鏡と通信内容から、迎撃発射された位置の特定に動いているようだ。

「ん?・・・おぉ、よーし来たかぁ。じゃぁ、このままあの灰色っぽいとこまで行って」

と、月が肉眼で確認出来る距離まで詰めるホーク艦隊と合流していくアインの分遣隊。


この時代の現世では月に基地が出来ているが、まだサーチ能力は弱く攻撃可能な武器も装備していない。姿も見えない超大型艦隊のホーク艦が近付いても気付かないのである。

逆にホーク艦からは月の基地内にいる人物まで特定出来る熱探知もある。

まさかここでも悪戯を仕掛けるのではないかと思っていた部下達。

「ん?・・・何?・・・また悪戯して欲しいの?君たちぃ~・・・やるか?ぬひっ」


こういう時の頭の回転は物凄く早い鷹士は、策略を出す。

オリガー参謀長官は呆れているようだが、同時に目の付け所が違うのを尊敬していた。

月基地に出した悪戯は攻撃性の全くないサーチライトを使用した。

只照らすだけではなく、姿を見せずにするのだからと、小さな明かりから徐々に大きくさせて月基地には何かのビーム砲から発射された光と思わせるようにした。


地球上で用いるLED照明と似ていて熱源は微量だが明るさは抜群の代物。

操作する者の腕に掛かってるとプレッシャーを与えるが、所詮は悪戯。

もしもの時に備え照射するのは小型無人探査機で、それを横から眺めるのがホーク艦。

まずは、点程度の明かりから始めるが、月基地では察知し本部のある地球にも報告される。


徐々に光は近付くが、外に逃げるわけにもいかない月基地内の人達。

ホーク艦では熱探知で動きも観測出来るので怯えつつ逃げ惑う姿も映る。

前回の隕石時も、艦内に配信されていて緊張感の和らぎに繋がっていた。

だが、別の緊張感は生まれているようで、まだ撃たないのかという不安要素が含まれていた。


もう逃げても無駄と解った時点で祈りを捧げている者も居れば蹲っている者もいる。

完全に破壊されると思った瞬間、光は月基地全体を照らしたあとに消えていくのである。

ホーク艦の司令室内は上半身で楽しみを表現する者が大半で、ソフィですら腹を抱えんばかりになっていた。

「おいおい、皆。そんなに人の恐怖を笑っちゃ悪いだろう。って、俺が言ったんだけど」

鷹士も上手くいった悪戯に大喜びで笑ってしまっていた。

操作した技師とアインの分遣隊にも特別手当としての褒美を取らせるのであった。


皇帝である鷹士が、ここまでユーモアも持ち合わせていたのは皆は初であったが、改めて着いて行く忠誠を立てていくのであった。相変わらず礼儀は堅苦しさがあるが、良しとした。


そしてついに出たかと思ったのは通信傍受内での発言であった。

【やはり、地球外生命体は存在するのでは?】

【あの時の巨大宇宙船の仕業ではないか?】

【侵略されるのか?・・・いや、逆に救われたのか?】

【おい!位置の特定はまだか?】

と、全てに疑問符が付いている通信であり、発見には至っていない証拠でもあった。


悪戯行為もここまでにしておくかと思った矢先に生じた緊急報告。

「右舷前方150万K!未登録戦闘艦察知!」

探知士による声が司令室内に轟く。


何もないこの銀河系と思っていたが、自分らの域の艦隊ではないようだ。

ホーク星が収める銀河系内では全ての艦に登録を義務付けているのだ。

だが、ここで下手に戦闘を起こすと地球にも被害が及ぶかも知れない。

だが、距離的に言うと遥か彼方であり地球に被害が及ぶ前に仕留められそうであった。


鷹士は元の皇帝である鷹士に変わったようで表情も一変していた。

分遣隊のほうのアインも同じ座標に発見していたので命令を待つ。

すぐにソフィに伝えていく鷹士。

「アインには左右に分けて配置。この鑑は未名鑑の下弦に回るように潜行。信号は一切打つな。無人機を3機、未名鑑の左右と正面でSモード」

本当の緊張感が皆に生まれ、戦闘になるかも知れない気が逃れないでいる。


徐々に近付くわけではなく微妙に反れてはいるが確認しない訳にはいかない。

先行したアインの分遣隊艦隊と、更に先を行く無人偵察機。

地球側からしたら遥か彼方であるが、ホーク艦隊ならものの数十分で追い着く距離。

しかも相手が止まっていたらであり近付いていたら時間は短くなる。

通常航法の最高速度で行ったら数十分の距離だがワープ航法を使うと数秒である。


未登録戦艦、即ち敵軍であることが確率も高い。

逆に別の種族で友好関係の目的なら然程の問題ではない。

信号すら発してこないが、それはホーク艦隊が高度なステルスモードであるからだ。

見えないとこに適当に信号を打つ艦長はいない。


しかし更なる追い打ちを掛けるかの如く、アインの艦隊からも同時に報告が入る。

「未名鑑周辺に多数戦闘艦発見!・・・あぁ~っと、戦闘能力皆無の様子」

不思議に思った鷹士は、更なる調査を命令した。


数分後、アイン分遣隊艦隊から送られてきた映像には、見事に破壊された戦艦が多数散らばっていた。登録してある艦隊でも信号すら発信出来ぬ程の破壊度であった。

2回目に送られてきた映像と共に報告が入る。

「この残骸は我が艦隊のガーネル大佐が率いる艦隊が殲滅した敵軍のようです。ここまで逃げていたようです。もう少し調査します」

これを聴いて皆はホッとしたようで、鷹士も言葉を発する。

「ふぅ~。良かった。そっか、ゴツイ大佐、シッカリやってくれてたんだな。任せて安心だ。だが、今後・・・邪魔だな、それ。あ~、アイン中佐?その残骸、リサイクルで宜しくぅ」


残骸を回収し資源に変換していく機能まで付いた、優れものの艦も持っているホーク陣。

これで跡形もなく、何事もなかったかように綺麗な宇宙に精製されるのである・清々するの意味も含む。


そしてホーク艦は折り返してまた地球に近付いていく。

後方を任せている部隊の艦隊はマリー少佐が率いる部隊がいる。

そのマリー少佐は交渉も上手いので地球に降り立ち、首脳陣と交渉させる手も検討している鷹士。

しかし、相変わらずの地球側は意見統合もなく各国は右往左往しているようであった。

まだ初日なのでいいかとも思っているが先手必勝は既に悪戯で使ったようなもの。


ホーク艦内にはあらゆる設備が整っており、遊技場まで備えてある。

皇帝である鷹士には専用のルームの他にも様々な専用施設が設けられているが、構わず一般兵士用にも繰り出してしまう。最初は突然の訪問に驚く兵士達であるが、礼儀だけは忘れずに行いつつも慣れてきた頃には一緒に食事や遊びもしていく為、慕われている皇帝である。

そんな場を見つけたソフィは必ずと言っていい程、ドSで悪魔的な表情を浮かべ両手を腰に添えて入口に立って兵士達に威圧感を与えていた。それでも鷹士の前では片膝を着く礼儀はしていくのであった。


ずっと後方待機中だったマリー少佐率いる艦隊に命令が下される。

単に待ってられない鷹士が自分の目で見たい一心で出撃したのだが、驚異に値する敵軍も居ない田舎のような銀河系なので、あとは任せたいようだ。

何か地球側からコンタクトがあったら報告し、攻撃があっても決して撃ち返すなと付け加え、ホーク艦は帰路に着く。アインの分遣隊がその場で支援する形で残り、マリー少佐は責任重大な任務を任され緊張感は膨れ上がっていた。その中和にアイン中佐が宥めつつ、命令実行を速やかに行えるよう手助けもしていく。

上下関係がハッキリしてるようで、戦闘時以外では階級違いであっても大事にする優しい面が現れていた。


帰路に着いているホーク艦で鷹士は、一休みをするが意識して留まるようにし地球側の平凡なサラリーマンにはまだ戻らぬようにした。


ホーク星で任せているのはジャーマン大将。

見た目は頑固なジジイであるが、鷹士と同類の猫好きであり、飼い慣らしてる猫達に会うと顔が綻ぶのである。このジャーマン大将とは内密に情報を取り合う仲でもあるが、女戦士を顔とスタイルだけで選び、将校に抜擢しようとする時もあるエロジジイな面もあるのが困りものなのだ。

しかし、そんなエロジジイであっても戦略性は抜群なので地上の全部隊の統括を任せている。


ホーク星に辿り着く頃には2日目に入り、地球側からも何らかの動きを期待している鷹士である。

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