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5~

   5


 我が星、地球を前に侵略者ではない証を立てなければ地球側は即攻撃に転じるであろう。

しかし、各国が連携を取れてるかどうかも不安要素があり、早とちりで攻撃に転ずる国もあるだろう。

何しろ統一感がまるでない国もあるのだから。

良く言えば自由であるが、自国の憲法や宗教ですら解釈の違いが出る。


そこで、通信手段を絞込み、限定地域にのみ発信し様子見とした。

同時にオリガー参謀長官を呼び、転送装置の性能を聴いた。

「ん?・・・うん。・・・目標地点が正確に解かれば出来るんだな?だが、そこに別の物があったら?・・・あはははっ、だな。・・・物は良いとして人は?」

「はい。人は技術部の者が言うには距離的問題と遮蔽物があると壁などに・・・」

「そりゃ大変だな。ということはまだ直線上で平らな面にしか飛ばせんということか。うんうん、じゃぁ悪党に罰を与えて追放の時は遮蔽物だらけのビルに転送したら面白そうだな、ヌヒヒヒッ」


怪しい笑顔を浮かべる鷹士に、別の恐ろしさを垣間見たオリガーであった。

今の現世での地球側の攻撃力はホーク側にとっては下の下の下以下であるので、別艦隊のガーネル大佐が率いる大部隊は帰らせても良いと判断。

その判断の直後に緊急報告が入り、あの撤退した敵の悪党集団を殲滅した御礼が届いたようだ。

食料は勿論のこと他の物資も無償提供が続くようで万々歳である。


新たな敵が現れないとも言えないので、ガーネル大佐には戻って防衛に務めるよう伝えた。

元気の良い返答ですぐに行動を起こしてくれるので有難い。


残ったのはホーク艦と他数隻であるが、十分な攻撃力がある。

そして通信先へのハッキングなどを済ませたので信号のみを送り、向こうに解析をさせていく。

その通信先に選んだのは鷹士の母国である日本であった。

どうせ、また結論も出ない会議とかで長引くのは目に見えていた。

その通信の信号を他国が傍受したとこでも同じことであろう。


それを見越して鷹士はソフィに伝える。

「ちょっと向こうに行って用事済ませてくるから。2日間くらいで戻るからここに居て。あっ、小型船とか要らんよ、俺ひとりで行くから」

と、聴いただけでは、どうやってと思ってしまうソフィであった。

だが、見てれば解るとだけ言って、その場の専用席で目を閉じ眠るようにした鷹士。

精神だけ飛ばす気かと思えた瞬間、鷹士の体から光が発せられ消えていったのだ。

思わず「え”ぇ”~っ?」と、声に出してしまったほどの驚きを見せるソフィであるが、機器類を見ていた他のものは気付いていない。オリガーはソフィの声で振り向きはしたが、不思議そうな表情を浮かべているだけだった。

「あ、んっん~。皇帝閣下はこの場で待機せよとの御命令だ。御自身はお休みになられに行かれたが、待機は2日後まで継続せよとのことだ、以上」


48時間の猶予であるが概算的に10分の1の時間になるかも知れないと思った鷹士は、現世の自分の部屋に戻る。

体の変化に気付き、洗面所で確認後に横になった場に戻った鷹士は置いてある時計を見て確かめる。

「おぉ~、やっぱりセーブしたみたいに、ちゃんと戻ってる。おっと、時間に余裕はないんだった」

あまり嘘は言いたくないが、この際は仕方がないので体調不良で休みますと会社に連絡しようとするが、さすがにメールじゃ礼儀に反すると思ったようだ。

しかも休日であるから送信しても誰もいないかも知れぬ。


だが、よくよく考えてみた。

ここで仮眠しただけでまだ3~4時間しか経っていない。

向こうではワープ航法も用いての移動。

端的な結論から言うと同じ時間経過となる。

「あ~れ?・・・ん~?」

波の上な成績しか取ってこなかった仇が今になってツケが回ってきたようだ。

だが、要領が良いのも加わり、向こうでの思考も相まって優先順位はすぐに決まる。


ずば抜けたとんでもない常識外の速度で移動し、係長である田村と補佐役の中村に連絡し直接会うことに。しかも正反対の位置にいるにも関わらず、田村に話したあとの1分足らずで中村との待ち合わせ場所に着いてしまう。街行く人には突然の突風が吹いたくらいにしか記憶に残らないが、移動した鷹士の着衣は乱れていた。さすがに普通のジャケットでは破れが発生してしまうようだ。

中村に気付かれて、来る時にバラ線が飛び出てて引っ掛かったと表現してみた。


田村には一方的に話したので疑問符の塊のようになっていたが、そのまま中村の方に向かったのだ。

同じことを話していくと、ジョークに取られたようだ。

「んふっ。急に緊急の用で呼び出しなので何かと思ってましたが、随分と突飛なこと言うんですね。そんなイメージありませんでした。まぁ、確かに先日、外国で目撃されたってニュースは見ましたけど。でゅふっ・・・それが管理官の部隊の無人偵察機の投影?でしたっけ?」

「うっ・・・あはっ・・・信じてもらえないだろうとは思ったけど。兎に角、会社は休むから宜しく頼みます。で・・・ん~たぶん、2日後くらいにハッキリ出来るので、では」


中村も全く信じていないが2日間の休養と取ったようで、それは承諾した。

平ではないので申請書などは必要がないアバウトな会社で良かったとも思える鷹士であった。

その後、また尋常ではない速度で自宅に戻るが、マンションである為に他の住人も居る。

普通に挨拶をしてはいるが、誰もが不思議に思う表情を浮かべている。

最近の流行りなのかと思うオバさんもいるようだが、鷹士の着ている服はボロボロであった。


自宅内に入り、自分の服を見る。

「でゅあ~・・お気に入りだったのになぁ。縫い目が弱いんだよ、まったく」

と言うが、通常、普通に考えても耐えられるようには出来ていない。

軽くマッハ超えの速度で移動する際に普通のジャケットは選ばないものだ。

下に履いていたジーパンも穴だらけであったが、こちらはファッションとも取れる。

ジャケットの下に着ていた綿シャツは伸び伸びであった。


どうせ、向こうに行けば着ていた服に変わるはずと、またベッドに横になり目を閉じ集中する。

そして目を開けると思った通りの展開になり着衣に乱れもない。

また司令室に向かおうとドアを開けると、あの女性軍曹が片膝を着いて挨拶。

「へっ、陛下・・・何か不都合がございましたでしょうか」

という言葉に疑問符が浮かんでしまった鷹士であったが「いや特にない」とだけ言って司令室に向かった。


消えた場所、司令室の専用席に戻られるのかもと思っていたのはソフィであったが、司令室に入るドアから来たのは紛れもなく皇帝の鷹士であった。

驚きの表情を隠しきれないソフィだがすぐに片膝を着く挨拶を行った。

「もっ、もうお戻りになられるとは。2日間の待機、実行中であります」

暫く何かを考えているような表情で専用席に座ると、皆が任務に戻る。

何か言いたそうな雰囲気で横に立っているのはソフィであった。

「あ、あの・・・何か不都合がありま・・・」


途中まで言った彼女に手の平を向けて黙らせた鷹士が言う。

「さっきの軍曹の子と同じこと言おうとしてるけど・・・今、何時?」

とんでもない大失態を犯したのかと思っていた彼女であるが時間を聞かれて正直な時間を答える。

「あ~そう、うん、解った。・・・・・ああああぁぁーっ!そっかぁ~!解った」

少々、黙って沈黙の後に大声で発してしまった鷹士であるが、驚きと同時に失態があったとしたら責任は自分にあると思っていたソフィは即反応して片膝を着いて顔を下に向けて体を震わせていた。


だが、鷹士は笑顔で居た。

「あっはっはっはっ。そうだ、単純なことだった。・・・ん?どした?立っていいよ」

責められると思っていたソフィであったが違ってホッとしたようだ。

時間経過の差が生じなかったのは、単に同じ太陽系内にいるからであると確信を得たからである。


アッケラカンと元に戻るようにして落ち着きを取り戻していく鷹士。

「んっふふふ。あ~あか。で、どう?何か動きはあった?って、まだ2時間しか経ってないか。ぬははは。いやぁ~、スマンね。ちょっと時間に関することで間違えたよ。失敗、失敗。これならあんなに急ぐこたぁなかったなぁ。まぁ用事は済んだからいいか」

何か抑制が外れたかのように陽気になっている鷹士を見るソフィ以下の者も不思議そうであった。


まだホーク星のある銀河系と自宅のある地球間での移動の時間差は解明出来ていないが、深く考えずにありのままを受け入れることにしたようだ。


経過を見ていても単調な信号送信だけでは動きが見られないので、もう少し近付いてみようと思い司令官に伝える。司令官であるソフィが航行責任者に伝え、その後操舵士に伝えていく。無駄に多い伝言ゲームのように思えるが確実性はあるので、それを見越した素早い判断力と決断が要求されるのが最高指揮官でもある鷹士なのだ。


ステルスモードは現世の技術ではレーダーに映らない程度であるが、開発中であろう光学迷彩をより発展させ、投影技術も取り入れた繊細でリアルな立体映像のホログラフを使用するホーク側。

地球側では民間で出回るものにも搭載されてはいるが、まだ透けて見える立体映像である。


そんな科学技術を持ったホーク艦隊は、地球全体が良く見える位置にまで接近する。

普通の肉眼では点程度の大きさであるが、ホーク艦隊に搭載されているズーム鏡とサーチ機能を使用すれば遥か彼方の星や360度展開の視野角で死角なし。その小型版も小型無人偵察機にも付けられているのだから、向かうところ敵なしとはこういうことであろう。


火星の脇を通過しても地球側に動きがない。

地球側の通信等は全て傍受し解析されている。

火星の裏側に居ても小型無人偵察機があるので電波域にも問題はない。


地球側の某国では民間人でも様々な電波などを拾って解析してる者も居るはずであるが、お堅い役人に届いてもタライ回しか無視されているのだろう。

こうなると、衛星のひとつでも撃ち落としてみるかという策略もあったが、それでは友好関係は築けない。電波砲を使用して一斉停電させてみるEMPもあるが、それも駄目である。


いきなりの警告を発しても信じないであろうが、似た方法で電波ジャックをさせる鷹士。

地球側では衛星を介しての情報の遣り取りもしてるので、そこにジョーク交じりの絵柄で挨拶を盛り込ませジャックさせてみることに。

よくある地球側でのエイリアンの人相で手を振っているものを盛り込ませていく。

鷹士のユーモアが通じるかどうかは解らぬが、艦内司令室では笑いを堪えている者もいた。

確かにアホみたいな策略で発信位置の特定もわざと出来るように送信させた。

だが、高度なステルス状態を保った艦隊を見つけることは不可能であるから、必死に探すのが目に見えるようだった。


専用席で微笑む鷹士はテーブルも備わっているのでオヤツを用意してもらい、まるで映画を見るかのように寛いでいた。


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