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内部の状況を映像等でも確認していくソフィとホーク。
息が出来る状況ではないのは敵の姿からも解った。
頭部を覆う物を被っていたので、制御装置を探すことに。
超小型飛行体を放ち、隅々まで探索しつつ壁などに張り付く。
奥へ行けば行くほど、次々と張り付いた物のおかげで内部構造も把握出来ていく代物。しかも自爆装置付きだから破壊も出来る。
敵の母艦もデカイので、複数の出入り口から侵入させていく。
別動隊が、攻撃されている星を探索もしていたが、それらしき星が見当たらない。そもそも肉体を持たない精神世界の者たちなのだから、そう簡単には見つからない。敵もたまたま寄ったのであろう。
複数あった惑星の周りを巡回していく探索部隊となった艦隊は、敵の砲撃をくぐり抜けて来たのだ。するとひとつの星から敵艦が飛び出してくるのを確認し砲撃して撃沈。その飛び立った場所に近寄っていき、暫く偵察していると直接呼びかけてくるようで受信するのはアイちゃん。データにあるのは微弱電波のみなのでどう答えるべきか詮索するAIのアイちゃん。解読したのを参考に助けに応じた返答を用意したが、先に理解可能な言葉で送信してきたのだった。
『ありがとう。救われました。ホーク様に感謝します。我々は精神のみのものですので、そちらからは姿が見えないと思います。しかし、存在は明らかです。サーチ機能の一部をお使い頂ければ・・・どうですか?見えますか?』
どの機能があるかも解かるようで、画面上に薄らとボヤけるように現れた。この通信でホークも存在を確認出来た。助けてくれたお礼と言わんばかりに敵の弱点である位置も教えてくれた。その通りに敵母艦内部を通り、コアを破壊し脱出。あとは出撃した敵艦などを破壊するだけになり、敵の母艦は明かりもなくなり動きも止まっていった。
完全破壊には至っていないが、敵も逃げ出すように出てくる。
交信を続けているのはアイちゃん経由でホーク自身が行った。
自分の経緯も知ったホークであるが、そのまま受け止める。
防御シールドもない星であったが、あったら何か居るのを証明するようなもので、何もないと思われるように敢えて装備しないようにした過去があったようだが、ホーク側の年月計算で数千年昔だという。
他にも精神召喚したのはいるかの質問にも正直に答える精神世界のラミウスという名の者。召喚の逆はしてきたが、成長と共に元の精神は薄れていく傾向があり、ホークのような成人の精神を別の者へと移譲させた場合が今回の事例のようだが、似た者同士だったのが肉体も融合してしまったと。その原因を探って色々試してると強靭な肉体に変貌していったとも説明するラミウス。
ホーク自身も現状を話し、意識せずとも防御可能で意識しないと注射も出来んと、自身の肉体の不便さも述べていった。横で聴いていたソフィは思わず笑ってしまいそうになるが必死に抑えていた。更に意識すれば一度行った場所に装置も使わずに転送出来るのは便利だが、妙に疲れると言うと、そう使わないほうが良いと注意された。あまりやると、精神と肉体の分裂が生じる恐れがあると言い、肉体の方が耐えられないであろうと。そうなると精神のみでは彷徨うことになり、物体にに入り込めるのはこちらのこの世界のみと。
結果的に突飛押しもない転送方法は止めた方が良いということで納得したホーク。念の為、アンドロイドの操縦する艦を10隻、この精神世界が存在する星の周りにステルスモードで配置しておくと。何か変更したかったらご自由にどうぞとしながら、敵に遭遇の場合などの命令をして去っていくホーク陣営。
BHを通らずにワープ航法で戻り、ホーク星のある銀河に入ると敵軍艦の残骸が目に入った。すぐに本部とも交信し報告を受けていく。避難していた住民に被害は一切なく元に戻っているようだ。
ものの3日ほどで戦闘は終了したが、あの敵がどこからやって来たのかは不明のまま。敵の巨大母艦は宇宙空間なので一定の速度で航行というか流されながら調べるためにホーク銀河に向かっていた。まだ内部にいるかも知れない敵に対しては戦闘用アンドロイドが対処もする。
やる気を出していたシル星の軍であるが、出撃せずに終わったのは良かったことである。不安もあったのはシルビアであるが、宇宙艦隊を任されているので表面上は落ち着いている。ホーク勢が付いている安心感のほうが上だったようだ。シル星の地上軍にもホーク側が援助している。その地上軍への指導で、ガーネルとマーガレットを行かせようかと検討もしたが、レベルの違い過ぎは良くないと判断し、第2惑星から大尉級を派遣させていた。
地球方面の分遣隊も撤退となるが、アインとマリーの艦隊は暫く残ることに。ワープで出現してくる敵が来ないとは言えない為の即攻撃に転じられる艦隊が必要であった。警戒区域にアイン、地球の拠点等に行き現況把握や首脳陣との話し合いにマリーの役割は変わっていないが、アインと交代したりアンドロイドに任せてる時もある。
地球側はマリーが代表のように思ってるが、然程に姿も変わらない容姿を羨ましくも思っていた。地球側から見たら20代前半にもみえてしまうからであろう。ホーク側のナノテクノロジーの勝利とも言える。
ホーク星での公務もあるが、余計なものは極力省略してるので皇帝と女王は暇も多い。それでも上手く稼動してるのである。殆どを自動化してるのもあるが、惑星間同士の交信もリアルタイムで出来るのは有利。その暇を持て余しているのか、遊びに大いなる時間を食い潰していたのは第2惑星の王、ガーネットだった。自制しろと送ったので最近は大人しくなっているが、いざという時の対処は早いので大目に見ている。一方、第3惑星の王のバークレイはというと、3分の1の地域で常に戦闘が行われている状態な為に息抜きもそうは出来ないようだが、切り替えは早いようだ。
暇のようでも逐一報告は上がってくるので処理はするソフィ。
その処理の中で判断出来かねないものはホークにも報告される。
十分な検討が必要なのもあれば、即断もあるのは地球にいた頃と然程変わらない。どこの世界でもある程度の諍いはあるもので、意見や思想の違いはあって当然だ。そこを強引に推し進めると独裁主義となってしまうので妥協案は常に必要である。
ただし、その妥協案を高く設定し、徐々に低くしていきながら相手側の妥協案を捩じ伏せていく戦略もしているので利益は守られる。本当の妥協ラインはもっと下でも良いのだがと思っているのはホーク側である。
住民に慕われているのは、以前の官僚に甘く住民に厳しい法律を撤廃したのもあるが、宇宙防衛等も含む戦闘での勝利の日は税収を解除したりと住民の懐具合にも優しい。税収で得られた資金は莫大であり、戦艦などの修理や開発、街の修繕にも使われているが、殆どがアンドロイドやマシンによるものなので人件費が浮いている。リサイクルも頻繁に行われ、敵軍のものもリサイクルしてるので莫大な予算も必要ないので裕福な星とも言える。
住民の裕福度もそれぞれであるが、貧困社会がない素晴らしい世界でもある。最低賃金法もあり、逆に年間最低報酬額や最少労働時間も決められているので企業が守らないと制限が掛けられてしまうのである。最悪の場合は操業停止で潰れる。潰された場合の従業員は他の企業へ優先的に斡旋される。ホーク陣営関連企業に入社出来れば安定収入を得られるが、生活面まで管理されることになる。自由がないように思えるが、管理されるので不安は一切なくなる。
企業ごとホーク陣営の関連会社になりたいとこもあるが、そう容易いものではない。関係性はあっても直属にはなれないのは食品関係会社。精々、ホーク陣営御用達の看板を下げられる程度である。逆にホーク陣営内からコックが民営に渡ることもあるので、人気店はそれも多い。
地球で食していたものをホーク星で食す為に、修行に出させたコックもいるほど。その時は人間ソックリのアンドロイドを派遣しているが、地球側には知られていない。そのアンドロイドの人間用IDも織り込み済みなので地球側のシステムでは完璧に見える。艦隊が訪れるよりも前から精巧なアンドロイドが潜入してるとは気付きもしない。
その地球の太平洋の中心付近にはもう巨大な拠点が出来ている。
まだ襲撃してくるテロ紛いな連中もいるが、武器や防御のレベルが違い過ぎる為に何の抵抗もしなくても安全が保たれている。その逆に友好関係を築きたい者が入港を申し出てくるのもいつものこと。フリーパスな許可は未だに誰ひとりとして出していないが、地球とホーク星との法律の違いを理解しないと無駄である。地球側ほど複雑ではないが、違反者には地球より厳しいとも言える。よって入れるエリアも限定的になっている。
見た目は然程変わらないのでホーク陣営側は地球の各所に出向くこともある矛盾もあった。地球人にホーク側への制限をしときなながら、ホーク側は自由に行き来しているのだから。見分けが付かないから仕方ないが、より高度な科学技術を持っているので下手に情報は渡さないようにしている処置でもあった。重力反転装置などは莫大な金額で取引されているが、持ち出せるような大きさではない。レーザービーム装備な物は小型のものもあるのでエリア内で制限。地球人の持ち出しは不可である。
国扱いであるが見物は年中行われているので賑やかでもある。一応地球側のパスポートは必須で、一度入るとナノテクノロジーな超小型のチップを内蔵されるが、皮膚に触れた程度にしか感じない。他の拠点も国扱いだが最高機密レベルになっているので、拠点のあるその国の許可がまず必要である。
衣服の問題もあり、ホーク側では年中夏のような陽気な為、友好拠点を太平洋上にしたのもある。衣服の生成もナノテクノロジーが活用されているので、如何様な形状にも変更可能だが長袖はない。地球側では1人で数着は必要だが、ホーク星での将校は3着もあれば充分なのだ。将校の制服用と戦闘用は兼用されているが、他には礼服用と休日用のラフな容姿が用意されている。
食事も料理済みなものは見た目は変わらないが、元は大いに違いがある生物もいるのがホーク銀河内である。味の好みもそれぞれであるが、ホーク側は肉そのものの味を追求しているので、調味料の豊富さは地球側のほうが優勢。まさか恐竜のような肉食獣を好んで食べているとは地球人は知らない。そもそも、そんな巨大な生物がいるとも知らずにいるのだ。星の大きさも違えど収めている範囲も違うのである。
この太平洋上の拠点にはアインやマリーも休暇で訪れる。
拠点内には店舗も増えて、ホーク星に限らず他のシル星のものも売られていた。意外とシル星のもののほうが売れ行きが良く、地球人の好みに合うようだ。相場は地球側をリサーチした結果であるが、大量転送も可能なので運賃は格安に設定されているので商品も安く販売されていた。観光者は3つの銀河内のものを見ることが出来るが、気の遠くなるような距離のものとは気にもせず、目の前にある商品に目を輝かせていた。
地球側では未だに核開発をしてるようだが、そのようなミサイルを何発打ち込まれようと小石が当たる程度にしかならない防御力を持つホーク側。逆に地球側の環境が悪化してしまうほうが問題なのだ。折角、ホーク側が環境を整えても自身で壊してどうするということである。
宇宙空間に念の為のコロニー接続での第2の地球も建造中なホーク側。刻々と進んでいる火星付近もあり、地球人の移住も視野に入れていた。最悪な太陽消滅時でも、コロニー内は人工光もあるので問題はなく、そのコロニーごと移動可能なので他の惑星の軌道上に配置も出来る。
囚人用コロニーは地球の軌道上にあるが、極悪人が多いので最悪の場合は放置であろう。地球側では人権がどうのという話しも出るであろうが、宇宙空間に所有権は存在していないようなものである。
同じ星の中での意見の違いはどこにでもあるようだが、文化の違いによるものと宗教の違いによるものが衝突するのが大半な地球。ホーク銀河内では君主制であるが、共和制も取り入れているので民が主権を握っているともいえる。民が不快なら君主が改正実行に及ぶのである。
良からぬ民には厳しい制裁が待っているが、普通に暮らす民には過ごしやすい平和な星でもある。暴れたい輩にはバトルトーナメントも年に2回は開催される。元レジスタンスのマーガレットは前回の優勝者であるが今はもうホーク陣営の地上部隊の要になっている。ガーネルのお気に入りでもあるため直属の総長とも言えるであろう。
そんな季節もまたやってくると、血の気の多い輩が集まるものである。
参加者の多くは自分が一番強いと思っているようだが、ホーク側の特殊部隊員などとは格が違う。ソフィは更に格が違い、ホークはもう別格もいいとこだ。マリアンヌでさえ、ホークの血を受けたあとからの訓練等でレベルアップしているので特殊部隊員でも敵わないほどの成長ぶり。ホーク、ソフィ、マリアンヌの3人が揃うと一銀河も滅ぼしそうである。そのホークの血液の培養も成功すれど、耐えられる人体を持つ者は極めて少数。ガーネルも行い訓練中であるが、自身の脳の判断が追い付かずに体が暴走することが多いようで抑制から始めていた。
今回はシル星も含め、第2、第3の惑星の者も参加可能にした一大イベントに。尚、シル星は女性君主であるが強き男も参加する。だが、技のキレは女戦士のほうが上位のようだ。ホーク星内でも強き女戦士はいる。予選で目を見張ったのは、グダグダと戦う前から言っていた男を一撃で仕留めた女もいたのだ。思わずグッドサインを出してしまったのはホーク。
「アハハハッ、いいね!一撃だぞ。今回はこの者に賭けようかな」
ソフィもマリアンヌも一緒に見ていたが、同じ気持ちのようだ。
他にも速さを強調して迫り来る輩に一撃で倒す者もいて、動体視力に長けた者のようだ。逆に互いに脅し合いばかりで一向に戦闘に入らない焦れったいのもあった。当然、観客からヤジも飛ぶが、出場者には聞こえない。聞こえて観客に向かっては惨事にもなり兼ねないからである。殆どの観客は大画面での映像で閲覧している。観客同士の争いも一線を越えれば執行官によるスタンガン攻撃を受ける。
このトーナメント試合はホーク陣営公認のギャンブルであるが、掛金の上限が設けられており、個人の資産能力にも考慮されているので賭けに負けて資産ゼロにはならないよう組み込まれている。公認なのに生活苦になって貰っては困るのだ。よってどんなに資産があっても上限が決まっているので大儲けにはならないが、数多く賭けに勝てば元の数倍にはなるであろう。その上限も個人差があり、賭けに参加するには登録も必要。よって、登録のない者は賭けは出来ずに閲覧のみ。
今回は誰が勝者になるのか。
4つの星で同時開催されたのである。




