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地球側にある程度の技術提供はしたが、重要な基幹部分はホーク側のみぞ知る。その外側をどう固めようとしようが地球側の自由。車輪のない移動手段の交通も浮遊度は地面から高くても30cmに抑えられている。進路上に異物があっても同じであり、避けるか乗り上げるかである。自動制御も備わっているので事故は減っている。
この交通網のシステムもホーク側による支援。
ホーク側にとっては何世代も前の過去の異物的なコンピュータ制御なので難なく変更可能だった。人間の脳の大きさがあるだけで演算能力はス-パーコンピュータを遥かに超えるので場所も取らない。しかも、アンドロイド、拠点、戦艦、本部、支部とも同時に遣り取り出来、ある程度の感情も備わるAIのアイちゃんは日々尚も進化している。
アイちゃんのおかげで出来た物もあり、ホーク星では当たり前のように利用している空間画像表示システムであった。それまではタブレットなりを持ち歩いていたが、手首などに備えたバンドがある限り、周辺認識を兼ねてその人物の前方へ投射可能としている。その装備も超小型化され、米粒ほどの物質をどこかに装着しているだけでも良いが、皮膚下への装備も行われ、今では認識用も兼ねている。その信号は宇宙空間にも届き、全ての隊員や住民にも義務付けられている。今のところ、その信号を妨害される行為は確認されていない。
逆に信号発信を妨げる装置はホーク軍のみにしかないが、戦闘時の隊員への上官命令で一時的に遮断することはある。更なる上官からの承認は必要。
毎度のことながら、元々庶民的なホーク。
ソフィやマリアンヌ、アイン、マリー、時にガーネルまでも連れて他の惑星や地球にも訪問し、視察という名目で現地を楽しんでいたりする。ゴツイ体のガーネルにアロハシャツを着せたり、アインに英国の格好やマリアンヌにゴスロリな格好をさせて笑い合いソフィにも笑顔が見える。1銀河の最上位階級の者達とは知らない現地人なので、気前の良い上級のお客様としか認識していない。本人達は心から楽しめている良い光景である。
小さな争いはあるが、平和的な日々は続いているホーク銀河。
地球側のほうはまだまだ改善の余地が多いにあるが望みは捨てぬことである。
そして更なる異界の門のBHの向こうで見ていたのは、ホークこと大熊鷹士をこの世界に入れた者たち。ただの召喚実験のはずが、とんでもない強さに変貌していくホークを見て見ぬふりで様子見していたが、悪に染まることなく終えているので良しとした。
宇宙空間内の争いを収めるための実験が、とある者のふとした「あっ」なミスから始まっていたとは誰も知る由もない。第1銀河のホーク銀河、第2のシル星群、第3なリンド星系、第4は人類が生息する太陽系、そして姿は見せぬ第5の銀河系内に、その者たちは生息している。ホーク銀河の科学技術よりも遥かに発達した世界で肉体を持たぬ精神世界。だが、そんな世界でも不注意は存在するようだ。
世の中に完璧な者はいない。
その完璧を目指す者はいるが、完璧なものとはその場、その時代、それぞれの自身の中にだけ存在するものとも言える。本当の完璧さとは、間違いが備わっているほうが完璧なのではないだろうか。間違えれば正す、償う、やり直す。変化出来ることも完璧の中に備わるべきものだろう。その時に正しいと思っても時が過ぎれば間違っている時もあろう。時には修正も必要なのだ。修正無き完璧は存在しない。完璧とは予想であって現実ではない。現実は切磋琢磨だ。
その修正を試みようとしていた第5銀河の者だが、ホークの意思までも強く強化されており、跳ね除けられてしまう。と、そんな時に別次元からの来襲とも思えるべく異変が起こる。どんなに発展した世界のものでも予測が難しいのは別世界のものである。自分たちの常識に当て嵌めようとするのが、そもそもの間違い。
精神召喚をしての実験だったが、肉体が融合してしまったのが元のホークと大熊鷹士。地球では鷹士ひとりであったのだ。第5の銀河内では物体はあれど精神を閉じ込めているだけで、人間という肉体はない。代わりに別の惑星にいる人間に精神を取り込ませて一体化させて生きる技術を持っていた。だが、それは第5の銀河内でいう新生児である。別の惑星で生命を宿された新生児に精神を宿す神のような所業を行っていた。自分らは肉体を持たず、精神のみな為に死が訪れない。だが、収まる物体が破壊されれば死と同等。魂のみでは浮かんでいるだけで何の操作も出来ないのだ。
そんな世界に武器はない。
体感もなく感情だけが彷徨っているとも言える。
その世界の中だけで存在するものでも意見の食い違いは起こっている。ただし、表情もないので怒りというものも長くは続かない。物体も少なく動きもないに等しい世界なので、訪問者が来ても何もない世界と思われ素通りされるのがオチだ。
だが、今回の訪問者は違うようで、物体を破壊してしまう。
この世界での敵になるが、その敵側は隠れているのではという思いから物体を破壊しているだけである。精神のみなので移動は容易く目に見えるものではないのが幸い。
破壊衝動の強い者の精神に訴えるも聞く耳持たず。
これもまた文化の違いから来るものなのか。
逆に強制してるのはこちらではないかと思う者もいる。
急な訪問者の中には、この精神世界の遣り取りの微弱な波動を検知する技術を持っている者もいた。殆ど野生の勘に近いようだが、技術力は侮れない。しかし、内容までは解読できないので、広範囲にヘルプを求めてみる。
宇宙空間の広範囲に監視機器を放っているホーク陣営。
微弱な電波も捉えるので、発信位置の測定も超光速。
動きが収まっていたブラックホールのBH付近から捉えた電波はすぐに本部へも送られるが、受信した電波はかなりの微弱な為に通信士止まりでデータにもならなかった。AIのアイちゃんはデータにはない違った周波数でもあると認識し保留していく。地球からの受信、傍受も多く、シル星との間にも確立させているので膨大な量である。友好関係を築いているホーク銀河内は勿論のこと、シル星内の番組なども送るようになったのでチャンネル数も膨大で楽しみは増えていた。
第5銀河内を逃げ回るしかない精神世界の連中は、最後の手段と思えるべき手法を強行した。それは失敗と思われた精神召喚の技術を用いてホーク自身に直接情報を届けることだった。他の精神召喚では新生児に対してのみであったが、成人への実験はホークこと大熊鷹士が初だったのだ。新生児に送ったとこで理解に到達するほどの脳内物質も発達していない。精神は送っても育った環境によって元とは大きく変わるものだ。
違う環境、違う考え方、見たことない光景でも、とりあえず受け入れてみるのがホーク。地球にいた頃も、横柄な上司、話しが通じづらい新入社員、世間の目や耳がある中での生活もしていた経験から様子見を習得しているのだ。どうすれば良い方向に向けられたり仕向けることが出来るかを瞬時に判断出来るよう鍛えて来たとも言える。それが今では強過ぎる男になっているが、弱きを助ける精神は柔軟に持ち続けている。
休暇中のホークの脳内に直接の信号が届いたような感覚はあるが、ホーク自身は「ん?」と思っただけであった。他の誰かが噂でもした程度にしか思わず、その場の楽しみに没頭していく。
専用艦の補修はまだ掛かるので、ソフィの艦に乗船となるがソフィ本人はこのまま補修せずに一緒に居たいと、表面上に出さずに思っていた。補佐官のマリアンヌはそんなソフィの態度を見ていても御執心なのは解っていた。そのマリアンヌ自身はというと参謀のオリガーに気があるようだ。アイン大佐とマリー中佐も同じ地球方面分遣隊だったので仲が良くなっていた。意外なのはゴツイ体のガーネル少将が元レジスタンスでもあるマーガレットがお気に入りのようだ。これも類は友をよぶであろうか。
暫くして休暇を明けさせたホークが本部に戻ると、通信部から報告があり、アイちゃんが警告で知らせてきたようだ。解読された受信内容には『助け求む・暗黒来た・被害甚大』と座標も付け加えられていた。その座標軸はまだ探索もしていないBHの向こうに位置していた。これは、他の惑星方面では捉えておらず、何故かホーク星を目掛けて送信されていた。しかも、この微弱電波は地球のほうへも送信されているという。地球側の設備では雑音扱いになっているが、等間隔で送信されていた。送信されたであろう時間等を見ると、ホーク自身が受けた感覚の時を思い出す。
すぐに捜索隊が編成され、送信先を調べさせることに。
無人機をBH内に突入させ、アンドロイドの操縦で戦艦も潜らせる。探索は以前にもしてるが、今回は向こう側に異変が見るからにあった。リンド星があった場に他の無人の星もあるが、そことは位置が違う。BHを通ると一気に通過距離が増していた。推進力もパワーアップされた艦なので、BH出口からの脱出も出来たが、光景は以前と違い、複数の惑星が点在していたのだ。そのうちの1つから発信されてるようだが、見たこともない宇宙艦がいた。ステルスモードになってはいるが、位置を直ぐに悟られ攻撃を受けてしまうホーク側の戦艦。防御シールドのおかげで直撃は免れるが、近寄るものは全て攻撃する野蛮な種族のようだ。
超光速移動で他の惑星の影に隠れるホーク側の艦。
縦長の烏賊のような形状の敵母艦。大きさも結構あるが、そこから出撃してくる艦隊は全長200mに満たないが、リンド星の敵のように数が多く、その艦隊からも機影が複数散布するかのように出てくる。いきなりの戦闘状態に突入するがホーク側も一隻ではなく次から次へと投入していたので応戦していく。等間隔で連なっているので通信も確立出来ている。
BH自体がワープ帯になってるようだが、ホーク陣営は緊急戦闘を宇宙艦隊に発令。ホーク自身もソフィ艦に乗り込み、作戦本部とする。未知の敵であるから、一応は微弱電波の受信先の特定もされているとして、ホーク銀河内にも準備をさせ、地球方面分遣隊も増強させた。
あまり嫌な予想は当たって欲しくないが、アイちゃんによる察知機能が働き、その嫌な予想は当たってしまう。異常検知をホーク星近くの宇宙空間に捉えた後に、敵の別艦隊がワープで現れたのだった。承認コードもなく、やはりいきなりの攻撃だったので、すぐに反撃するのは発進直後のホーク側の艦隊。
敵の砲よりも早い砲撃によって粉砕していく。
その敵もシールド保持してるようだが、前面に厚く展開してるのか側面からの攻撃で怯んだ。口径変動が出来るホーク側の艦隊によって数が多かろうが一斉砲撃で蹴散らす。それでも逃れる艦や機体があり、ホーク星の地上目掛けて攻撃するのもいるが、星全体を包む防御シールドは大変タフなのだ。突っ込もうとする敵は自爆で大破するほどの防御力。それなのに地上からの攻撃は宇宙空間にも届く優れもの。
問題は住民に知られてしまう戦闘であるが致し方ない状況だ。
すぐに地下空間への頑強な扉が開かれ、住民を迅速に避難させる地上部隊。遥か上空で花火が上がってるようにしか見えない距離ではあるが、敵は特攻してくる手段も使っている。硬質なガラス面の一部に集中して衝撃を与えているようだが、逆に硬さが増す防御シールドであった。
第2、第3惑星のほうからも出撃し、シル星からも艦隊の協力が出された。シル星の艦隊もホーク陣営のおかげで強化されている。地球方面の分遣隊はアインとマリーに任され、火星付近で待機。小型化された最新艦であるが全長は500mに達する。こちらはアンドロイド隊員もいるが人間の隊員も常駐している。艦内で自給自足が出来るのも受け継がれている為、何年でも大丈夫。
一方、ソフィ艦は以前通りの艦体で補修しただけなので、大きさは変わっておらず全長3000mにも達する。内部に別の戦闘艦も備わっているので二重構造にもなっており、自給自足は勿論、娯楽室も完備している。ソフィの専用室、マリアンヌの補佐官室は隣同士であるが、ホークは当然のようにソフィの部屋内に急遽設けられたパーティションによって区切られたスペースに。ホーク自身は庶民派なのでソファで充分と思っていたが、皇帝にそんなとこに寝られてはとクッション性豊かなベッドも用意されていた。
戦闘時には関係がないが、以前の位置が確保され、ホークの横にソフィが付き、そのすぐ後ろに補佐官のマリアンヌ。画面上にオリガーが映り、参謀とアイちゃんの戦略が瞬時に伝わる。ホークから直接アイちゃんへの命令も下していたのは専用艦の時、今回は以前のようにソフィに伝えていく。その命令等を聞くのも嬉しそうなソフィであった。
全砲門80%の威力に設定させ、敵は一匹残らず殲滅せよと命令。
一瞬で敵を捉えてロックオンしていくのはアイちゃん。
ソフィの合図とマリアンヌの復唱で一斉砲撃が始まる。
命令の確認も兼ねているが、判断の速さはホークに掛かっている。
そのホークはもっと先の予想される状況を考え、ソフィとも相談する。
ワープで移動してくる敵は出口で一斉攻撃され反撃も許されない状態に陥る。異常検知のパターンが分かれば、アイちゃんに察知されロックオン攻撃。地球上にある艦体と違い、巨大な米粒状の艦体の全面に武器が装備されているのでどの位置でも攻撃可能。主力砲の大口径砲も何連も装備してるのは上級将官艦だからである。
BHの向こうでも徐々にホーク側が優勢に。
ソフィ艦もBH内に突入し、計測も兼ねていく。
いつこのBHが消滅しても、位置を把握しとかないと帰投も出来なくなってしまうからだ。そのBHから出た時に初めて見た敵の母艦というか巨大な物体に驚きはするホーク達。
「おぉ~デカイな。・・・的がデカイと撃ち甲斐があるじゃないか」
「艦体が出て来て、その艦体からも戦闘機のようなのが出てくるようです」
「そうか・・・じゃぁ本体を狙おうか。ソフィ・・ふふっ。思いっきりぶっ放せっ!全開だ」
ニヤリと微笑みを浮かべて「イェッサーッ!」と言い、縦長の敵陣に総攻撃を掛けるソフィ艦。防御シールドがあろうとお構いなく攻撃するので、敵艦が出てくる際に緩まるシールドも見逃さない。自軍の艦隊はソフィ艦の砲撃の邪魔にならぬよう配置されていくのはアイちゃんのおかげ。その自軍の艦隊は散らばった敵艦を狙い撃ちつつ、母艦も狙う。
敵側も巨大な艦が現れたのを知ったのには時既に遅しである。
しかし以外に頑丈な敵母艦。敵艦の出入り口は破壊すれど、攻撃はまだ止まぬので、内部への侵入も示唆していくホーク。破壊した出入り口からが妥当であるが、その内部にはまだ敵艦がいると推測される。よって、無人機を送り込みつつ戦闘用アンドロイドも突入していく。




