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地上部隊はジャーマン大将、ガーネル大佐が判断する。
ジャーマンは地上編成部隊の統括指揮官な将軍になり、このガーネルも少将に昇進している。准将という階級は廃止されているが、責任は大きくなり、扱う部隊数も増える。若き英雄は必要とされていないが、実力のあるものは次々に昇進させていた。部隊も小、中、大とあるが武器の種類と隊員数が変わる。特殊部隊に配属されるには少佐以上の階級を要する為、この部隊内に大尉以下は存在せず、ひとりひとりの実力は申し分ない。1人で中隊分を負かすほどだ。5人でチームを組むのが基本だが、時と場合によってアンドロイドも着く。
本部直属の特殊部隊はまた格が違うので、他の隊員の憧れ的存在でもあった。その部隊の更に上に位置するは女王直轄部隊と皇帝警護隊であるが、女王でもあるソフィと補佐官のマリアンヌ、ホーク自身が特別に強いので警護の必要性があるようでないような感じであるが、手を煩わせないための部隊だ。
よって、特区に入り本部に奇襲なんぞしようと思っても瞬殺であろう。そこに辿り着く前に門番でさえ倒せない。余程の重火器装備でも反撃を食らって御終いであろう。誰もそんなことをしようだなんて思いもしない鉄壁な者が巡回しているのである。
敵の星のリンド星に動きがあったが、まだ出撃するほどではない。考えを変えたようにも見えず、次の襲撃への準備であろう。境界線である防護ラインを越えそうなら、こちらも迎撃するまでである。
暫しの平和を楽しむが、そんなことが起こっていたとは全く知らないのが住民である。ホーク星の第2層に当たる地下では急ピッチで防護強化がされていた。今現在でも敵の高出力砲に充分耐えられるが念の為である。ホーク星の外周でもバリアなシールドも強化されているが、地上から上空を眺めても変化は見えないので、いつもと変わらない。地上の兵器も新型に変えられ、広範囲かつ精度も上げられていた。本当なら地上に兵器がない光景が望ましい。
戦闘継続中の第3惑星にも出向き、実際の目で確認するのはソフィとマリアンヌ。ホークは第2惑星に出向き、商業関連を視察しつつ、避難民への労いもする。将校や隊員らはホークを知っているが住民への認知はまだの地区もある。執行官が片膝を着いて挨拶するのを見て、初めてお偉いさんが来たのだと認識する。いつもは厳しい表情で目を光らせている執行官が、顔を上げることも出来ずに片膝を着き、僅かながら体を震わせていたりする者もいた。どれだけ凄い人なんだと思う住民は、皇帝と聞かされてもピンと来ない。見た目は軍服ではない時もあるから、一般人にも見えてしまう時がある。だが、漂うオーラは解るようだ。
その後3ヶ月が過ぎようとした頃。
遂に敵のリンド星から次々に出撃する艦体を補足した。
リンド星の周辺に夥しい数の戦艦らしきものが集結していたのだ。
敵軍も最初のは様子見のような感じだったのか、大群を用意しての出撃らしい。ホーク側は防護ラインを越えるまでは臨戦態勢を維持するよう命令されている。
ホーク側のAIによる解析によるとリンド星全域からの出撃のようで、通信も解析された結果は総攻撃とのこと。逆に、解析出来るならとホークはハッキング&クラッキングを指示。敵のシステムを破壊せよと第1次指令を発動。
と言ってすぐに上手くいくわけでもなく、敵も防護処置を施していた。徐々に迫る危機に対してホーク陣営は緊急指令を全軍に発令し出撃を整える。ホーク銀河内は第2、第3惑星の王が指揮を執りつつ、ソフィが最高指揮権を持つ。そのソフィはシル星の防御も兼ねるがホークの指示の下で行われた。
第2次開戦勃発は、やはりというか敵側が放った高出力砲だ。
幸い、先に放って置いた廃船に当たるので被害はないに等しい。
こちらも血の気の多い隊員が先走って無人機を飛ばしたり、アンドロイドが搭乗する機体で応戦をする。画面上でしてるのでゲーム感覚のようだ。
だが、初期の頃とは違い、敵も一応は学習能力を持ってるようだ。ただ、突き進むのではなく戦術を持ってくるようであった。四方に散開し、側面からの攻撃も仕掛けてくる。威力抑制をしていたホーク側であるが、全面解除をさせて応戦に応じさせるホーク。
まだ第1防衛ラインなので余裕はあるが、突破される場合も想定していた。敵軍にはステルス機能がないようで、補足も容易であるが数で攻め込むつもりのようだ。面構えは爬虫類系だが、虫のように大群で群がってくるので広範囲速射砲で迎え撃つホーク軍。スプレーのように放つから一気に片付けられるが、飛距離が乏しい。砲身を絞っての発射で遠距離も放てる技術革新で大型艦は狙い撃ちが出来る。
意外と今回は最前線が苦労していた。地上戦とは違い上下左右のどこからでも攻撃してくるし遮る遮蔽物もない空間。破壊されたものは盾にもならず、逆に飛ばされて邪魔にもなってしまう。そんな中でも司令官はぶっ放せと命令を下す。何の規制もされていない今、最前線に立つ司令官には重い責任はあれど、全面対決を楽しんでいるかのようだ。
ホークのもとには忙しなく情報が入ってくるが、全てを1人で処理してるわけではない。AIを【アイちゃん】と呼ぶホークは信頼をしている。感情までも備わる機械に成長してるように思えるが、物体ではなく思考のみが活動してるようなもの。それでも、いつでも近くにいる存在で絶大なサポートもする。
そのアイちゃんが発する言葉も人間じみてきているのだ。
『ホーク様・・・マズイです。最前線の激化が深刻化してきてます。システムハックも時間が掛かりそうです。如何いたしましょうか』
「ん?・・マズイか。・・・じゃぁ、防御捨てて全面攻撃に入ってくれ。って、まだ兵が出てるわけじゃないよな?・・・あっ、それと無人機の自爆モードも入れてでミサイル化にしてしまいなさい」
こうして無人機はある程度の攻撃は避けるが、目標物への突進でミサイル化になった。そのサポートをするのがアンドロイド隊。更に後方に小型艦で隊員が控えていて、そのまた後方に中型艦がおり、最後に大型艦が控えているホーク軍。敵は進めば進むほどに対処が困難になるのだ。その敵は最初に大型艦を配置してるようだが、攻撃する前から大将はここに居ますと表示してるようなものだ。
しかし、ホークは出撃した敵の中にそれだけとは思っていない。自分と同じように後方に控えている長がいるはずと。更に何らかの大型兵器も持っているのではないかと模索していた。
その敵軍の中にも頭脳派がいるようで、威力の上がった武器に対処する為に自軍の隊を盾にして回り込む戦略もしていく。数が多いのをいい事に犠牲も止むなしのような非常な手段。その回り込まれた集団によって形勢が不利になりそうなホーク軍は、第2陣も迂回して突入させる。
無人機で中心圏を戦い、その周りをアンドロイド兵の機体。迂回して外周に回るのは隊員が乗船する小型艦と戦闘機。戦闘区域が大幅に拡散されているが、まだ第1防衛ラインは抜けられていない。
ある程度、戦闘が繰り広げられている中で、アイちゃんによるハッキングが完了し、さすがの成長もあって本体とは切り離しているので逆ハックはなく、ウイルスのように解き放っているようなもの。しかし、敵もさる事ながら本体と艦隊は別にしてるようだ。命令系統が1本化されてるようで、個々の艦隊の独自戦略もしてるようで、ハッキング出来ても手動操作に切り替えが出来るのが問題であった。
だが、一度ハッキングしてしまえば手動操作にも出来ぬように仕向けるアイちゃんの放ったウイルス。狙って撃っても自軍に当たってしまうのだ。こうして敵の戦艦のいくつかは自滅していく。既に放たれている集団には効かないが、デカイ攻撃は避けられるホーク軍。各自の防御シールドのおかげで被害は少ない。
敵側には防御シールドもないが数の多い集団がその役目も果たしてるようで、直接攻撃が難しい。ホーク側が無人機をミサイル化してから暫くして敵軍も突っ込んで自爆するのが増えてきた。見方諸共、攻撃してくる様は非情そのものであった。
アイちゃんによる敵のリンド星をサーチし判明した結果。
向こうも二重構造で地下に施設があり、戦闘艦の建造をしてるようだ。しかもその地下に都市があるような3重構造。
「ほぉ~。・・・ということは、その星の表面を全壊しても問題ないってことだな」
ホークの一言に参謀長官のオリガーの表情が固まった。
過ぎった思いは当たることが多くなったオリガー。
「は?・・えっ、えぇ・・・そうとも言えますが。まだ内部の状況が完全では」
「何が?・・・都市は更に下にあるってことだろ?上面が全部戦闘用なら全部やっちゃえば問題なかろ?・・あ~いいって、俺がやる」
オリガーの忠告を半分だけ聴きながら、専用艦へ向かうホーク。内部に都市があるといっても、そこが平穏とは限らない。全てが敵になるかも知れないが、実際に行かなければ事実は解らないものである。
皇帝専用艦出撃の知らせが届いたソフィもやる気が漲ってしまう。抑えていたものが解き放たれたかのように全門開放で挑むようだ。他の士官も追従し、シル星防御をしつつも、シル星はあのシルビアに任せ前線に向かうソフィ大隊。
最前線は敵の攻防も激しく第1防衛ラインを突破させられそうなほどだった。そこへソフィの大隊が到着し一気に攻め入る。敵軍にとっては行けると思った矢先の援軍到来で守備を下げざるを得ない状況に。問答無用の一斉攻撃で外周から蹴散らされる敵軍。
ソフィはホーク銀河の地上大隊のほうも画面で見ながらであるが、楽しそうにジャーマンやガーネルと通信していた。それも束の間で、思わぬ攻撃で損害が出てしまう。敵の高出力砲の次の兵器の出現で、バリアなシールドごと吹き飛ばす勢いだった。滅多に効かぬ警報が鳴り響く最前線の艦隊内。そこからの通信で救助要請も発令されてしまう。ソフィ側の大隊に損害はないが中心圏での戦闘中のようだ。
高性能レーダーで確認すると敵の母艦らしきものから発射されてるよう。その母艦級が複数出現し、攻撃を仕掛けてきていた。飛び回る無人機は敵のそのビーム砲で塵になるほどだが、そのビーム内での爆発によって威力が抑えられてもいる。ただし、直撃を食らうと被害は甚大になる。シールドが効かないとなると戦略も変わる。
光速移動しつつ敵軍を減らしていくようにし、見方の救助もしていくホーク軍。米粒の形を巨大化した形状なので滑るようにビーム砲は避けられるが、被害が出ないとは限らない。その表面上の裏には無数の兵器が備わり、全方位射出が出来るが、敵弾が当たれば爆発して内部にも損傷が及んでしまう。
それならばと、いちいち開閉せずに本当の全門開放で敵のビーム砲から放たれたものへの直接攻撃も辞さないソフィ。無人機にも同種のコアが備わり、その爆発でビームが弱まるならと考えたようだ。
ワープで敵の死角に進むホークにも知らせが届き、まさかの事態にも備えた。ホークは最新型の専用艦に乗船してるが、以前の10倍を誇る超大型艦も追従していた。その超大型艦に爆雷なども詰め込んでいるが、自動操縦に切り替え、乗組員を小型艦に移動させた。
戦闘激化の中、敵もまさかすぐ近くにワープ移動してくるとは思っていないようだが、空間異常を察知したようでいくつかの戦艦が向かう。リンド星の目と鼻の先に現れるのはホーク専用艦と隣接する駆逐艦たちの10隻のみ。ワープゲートを出る前から攻撃を仕掛けたホークたち。出迎えようとしていた敵軍は攻撃に転じる前に大破してしまう。
すぐに特殊部隊が乗船する小型艦が敵地に降りて行き、ホーク自身も乗り込む。ステルス機能と光速移動を活かしてアイちゃんによる自動操縦で専用艦たちは敵の攻撃を逃れつつ迎撃もする。一応、大気圏があるようだが突入は難なくこなし地上からの砲撃にも耐える。
たった10隻でリンド星の全域に突入し、攻撃をしていく。
その間を上空から艦で攻撃もして、特殊部隊とホークは地上戦に突入。
全てが的と言えるほどで、攻撃する武器も強力なのを装備していた。
しかも残弾を気にすることがなく、個人専用銃のID認識タイプなので敵に奪われても撃たれやしない。
上空での戦闘も流れ星のように見える光景の中、動くものは撃ての精神で戦う。1箇所に50人の特殊部隊員が降り立ち、一気に殲滅していく。ホークのほうはいつもの5人のラ行の特殊部隊員と3つの小隊で計35人、戦闘用アンドロイド10体である。誘爆をするように計算された手法で攻撃をし、地下空間への侵入方法も探す。他の部隊との交信は最低限にしていた。
携帯用食料は持っているが、そう長くは居たくもない環境。
上空にいるアイちゃんによって、より詳しい詳細を得て突き進む。爆薬を仕掛けては次へ次へと進み、破壊工作を進める。ホークは地上に設置してある砲台の砲身内にも仕掛けていた。発射すると自爆するように設定したりと、一見、見た目では解らないように工夫する。
そして必ず駐屯地のような建造物が存在するが、近寄っていくのではなくド派手にランチャー攻撃で爆破。敵もまさか地上に来てるとは全ての地域に伝わっていない。それに、見た目からして違いがハッキリしてるから見分け易いのだ。
他の部隊から地下壕発見とのことで侵入を試みると。
似た施設を発見し、地面も確認すると開閉するような筋も見えた。当然、内部で建造してるなら出口があるはずなのだ。ランプが点在してる場を見つけると同時に、そのランプが点滅し地面が盛り上がる。大きく開いたあとに敵の戦艦が発射されるように飛び出して行ったのだ。上空での戦闘が不利になって来たのか、増援を出しているのだろう。
手持ちの武器では戦艦級に対応出来ないが、ステルス状態の自軍の艦が飛び立っていく敵艦を攻撃し破壊もする。思わず地上から握り拳で親指を立ててしまうホーク。さすがに小さすぎて見えないが、アイちゃんはホークからの『よくやった、グッジョブ』に嬉しそうであった。
地上から発射されるものを尽く打ち落とすアイちゃん。
敵軍も自分の星の地上に攻撃は出来ないようである。
援軍を待ってるようだが、破壊されては来るはずもない。




