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いきなりの訪問で何事かと思いきや、鷹士の両親の死の知らせであった。こちらの技術の薬の注入を拒み、地球での一生を全うしたいという気持ちがあったようだ。殆ど会いにも行っていなかった鷹士の後悔もあるが、一銀河の長になっていることも知らせずにいたのだ。突然の訃報に周りも動きを止めてしまう。しかし、知らせていない事実があるので、このホーク銀河には関係がないとして、他の皆には通常業務を命じ、中村から地球側の事も聴く。
一応、地球側では大熊鷹士は海外赴任として、母国へ帰還出来ずにいたということにしていたようだ。時間の進みが違い、地球側では争いごとも未だにあるようだ。ホーク陣営の拠点は無事であるが、攻撃はあると。ホークの両親は田舎に暮らしていたが病気のせいで入院し、介護を受けつつも体力が持たずに大往生したようだ。
すぐに本国へ戻るホーク。
女王でもあるソフィには伝え、後を任せてワープゲートから移動する。日本のホーク陣営の拠点に来て着替えて、田舎へ向かう際にはホーク側の技術がもう浸透している車輪なしの車で高速移動。葬式には間に合ったが、親戚からのクレームは仕方がなく受け止める。だが、見た目の若さから本当に鷹士なのか疑われるのである。
その場で本当のことを言っても誰も信じてはくれない。
こんな場で厨二病的発言に誰が耳を貸すかであった。
いくら技術改革があって発展したとしても、それがホークこと大熊鷹士のトップの世界の技術提供とは誰ひとりとして知る者はいない。宇宙人の訪問は知っているようだが、未だに受け入れられずにいる者もいるのは確かなようだ。鷹士の見た目の若さも科学技術によるものとして片付けられ、送ってきた部下たちにも嫌悪の視線を向けてしまう親戚。
父と母の死には1週間ほどのズレがあったが、父の時に来られなかったのも嫌悪の原因のようだ。その頃、とある銀河系での戦闘があってとは話せず全てを無言で受け止めるしかなかった。部下の鷹士に対する態度が王族並であったので社長にでもなっていたと思っているような親戚連中であるが規模の格が違い過ぎるのである。
その場にいても謝罪しか出てこないが、親戚に嫌悪感を持たれているので去ることにした鷹士。この場に艦を上空に来させて信じさせたい気持ちもあったが、嫌悪感は拭い切れないであろうと来た車でその場を去った。日本のホーク陣営の拠点内では知らせを受けていたので、全員が喪に服すように静かであった。
専用室が設けられた中で、1人になる大熊鷹士。
地球側に送り込まれた隠密行動中のアンドロイドにもデータとして送信されていて、皇帝の両親死去の訃報はホーク星の本部内に激震を招いたが第2惑星及び第3惑星の方の上級士官にも伝えられていた。国葬のような銀河葬の催しも提案もされたが、女王でもあるソフィに止められた。
ホーク星の本部では故人の本当の死去日を中村から聴き、知らせに来た日までを特別休日とすることにしたが、それはホーク自身の許可待ちとしたソフィ。他の者も同意を求められる前に従うようだ。殆どのものが皇帝の両親など知らぬので、何の休日かも理解できぬであろう。休日にしても動く箇所もあるのだ。
地球で約3日を過ごしてる間にも、小さな争いな攻撃があるが、強力なバリアなシールドのおかげで無傷を継続している拠点。地球側の世界も変化をしているので首脳陣も変わっていた。艦隊が上空に現れることはなくしているが、技術提供の成果は目に見えてあった。
それでも、受け入れる国、敵対する国、技術は受け入れても攻撃性を持つ国など様々である。相変わらずな日本の様子見傾向や大国に対する姿勢は変わっていないようだが、進歩はあるようだ。何しろ、核兵器を根絶した過去がある為、強気に出る国も出てくるものだ。だが、技術を根絶したわけではないので、また製造している国もある。
太平洋上に拠点を作ったホーク陣であるが、まだ住民はいない。地球上の宇宙空間にある囚人用コロニーは今も稼働中で、大いに役立っているようだ。どこの国の囚人であろうとコロニー行きになるのは重犯罪者である。骨の一本も残させたくないと思う遺族にとっての法案も通り、その死刑囚は個別に隔離された個室ごと太陽に向かって発射されるほど。墓要らずで土地の有効活用にもなるようだ。
そこまでしても地上では犯罪者は生まれる。
思い立ったかのように大国の首脳に問い掛けを送らせたホーク。
犯罪者一掃計画という名の狩りを持ち掛けたのだ。
既に隠密行動で情報収集しているアンドロイドにテロの拠点を襲撃させるというものである。未だに人間そっくりなアンドロイドがいることを信じていないが、機械化の技術はありサイボーグは認識されている時代になっていた。余計な法案も承認もいらない殲滅が出来ると持ち掛け、元々認識もない者がする分には責任も掛からないであろうと。どこの国の派遣でもないから自然消滅にもなるのではと。
承認要らずであるが、首脳陣との会合は開かれることになった。
大国を含む数カ国からの参加があり、電子会議が開かれた。
情報だけを差し出してくれれば良いとのことで、あとはどこで始末すれば良いかを求め、コロニーの提供も視野に入れたホーク。直接、ホークが交渉に出ても良いが間に入れた派遣将校にさせた。
その間に、ホークは艦体の1つを移動させ地球上空に待機。
コロニーへ直接転送するためである。犯罪者の拠点の建物ごと転送することも出来るので逃げも隠れも出来ずに、気が付けば宇宙空間にあるコロニー内で戸惑うであろう。要望が多い場合に備えての小型艦も備え、転送を容易にすると。わざわざ承認を得て部隊を出撃させたりして死傷者が出ることもないが、アンドロイドの出撃では多少の破壊は止むを得ないとし、転送の場合は失踪扱いにしてはと求めた。
問題はその報酬に対する同意に時間が掛かることであった。
ホーク側はやるのは簡単なので、ホークの命令1つで完了する。
アンドロイドを使うと時間は掛かるが、転送は一瞬に近い。
人違いもあるので、確認したいなら転送で出来るがアンドロイドの方は確実に抹殺すると注意も施した。すぐに容認する国もあれば、検討する国もあり、やはり時間は掛かるようだ。
実際のアンドロイドを取り寄せての確認も求められ、仕方なく太平洋上の拠点で披露となった。代表として来た者の前で披露したアンドロイドは2体のみ。男女の姿で至って普通に見えるので、暗殺者には決して見えない。サイボーグは認知してるので、パワーやスピードを見せると呆気に取られた表情を浮かべていた見学代表の者。
既に認識済みなのはホーク側の情報であり、どこの国の言葉でも話せるようにしてあった。普通に食事も出来るし、24時間稼働も出来るし、一切の摂取をせずにも稼働可能で、どのような乗り物でも操縦可なとこも気に入ったようだ。地球側の換算での1体の料金はずば抜けているが、レンタルとして貸出しても良いとした。その代わり何らかの故障時や仕様変更の際はホーク側の拠点に持ち込むことに。
要請のあった国に対して最初の1回は無料で提供した。
軍事要請も要らないし、人的被害を被ることもなく、軍隊派遣よりも格安なため即決した国から始めた。結果も早く、数日で完了したのである。すぐにその国のニュースで取り上げられ、重犯罪者死亡の知らせが届く。国民はまたただの1説ではないのかと疑う者もいたが、やった者が誰だか知らないからであろう。
転送の場合も素早く、地球側の捜索で確実な拠点諸共転送させ、地上から消させた。コロニー内に転送させた拠点の中から出て来て慌てふためく犯罪者の顔等の情報を送り確認を取らせ、死亡させて戻すか、好きに処理するかを決めさせた。尋問をしたい場合は地上の指定場所に転送させていく。
要望の寄せ方等を確立させ、ホーク自身はホーク星本部に戻る。
すぐにソフィやマリアンヌ、オリガー、ガーネル、ジャーマンやアイン、マリーにガーネット王にバークレイ王までが出迎え片膝を着き出迎える。皇帝の両親死去の知らせが届いていた証拠でもある。第2、第3の惑星を統治する王まで来ているとは知らずにいたホークであるが、皆の敬意に感謝していく。
一室に全員を集めると遅れて参上したのは元レジスタンスの長の女戦士マーガレットと技術部のアンバー。意外な組み合わせであったが、武器の提供や試作の試し打ちもしていたようだ。皇帝承認のマーガレットだから出来るのである。
それぞれの者から今現在の情報を聴いていくホーク。
シル星との交流はまだ完全ではないが、徐々に良い方向に向かっていると。敵陣から防衛ラインも定めて3段階にしたと。第3惑星内の戦闘も防衛ラインを築き、避難住民も落ち着いてきているという。第2惑星内では第3惑星からの避難民の住居建設が進行中で、完成まではコロニーに滞在。ホーク星内は至って平和であるとのこと。技術開発も行い、現存よりも小型な艦体を急ピッチで製造中で、ざっと5000隻は完了しているようだ。皇帝専用艦も同類で10分の1の縮小サイズでありながら、武器等は性能アップ。手持ち用の武器も最高レベルとマーガレットがお墨付きのようだ。
「おぉ、それは良いことだ。マーガレットを軍事顧問にしてはどうだ?それと、将校全員を昇格させよう。・・・で、逆にこっちの被害は出てるのか?」
良いことの報告ばかりなので被害報告も聴いていくホーク。
幸い、人的被害はなく、地上の設置武器も支障はないようだ。
マリアンヌからはホークの飼っている猫3匹も元気でいると報告を受け、ホークは思わず笑顔を漏らす。ソフィに付いてるはずなのに猫の様子も見ていたようだ。そのソフィも嬉しそうな表情を浮かべていた。女王の位に付いてはいるが、ホークに従うのは変わりない。
他は改善点を遠慮なく言わせ、指示も即時に示される。
その中で、いつでもどこかで発生する職権乱用事案。
仕方がないとも言えるが、権力を不法にかざすのは恥である。
住民の中でも発生はあるが、指導者は必要。
加減も人によって違いが出るのだ。
かと言って規制を厳しくすれば良いものでもない。
発生していても口にして言えない者もいるはず。
その情報収集にアンドロイドを使い、根源や原因を突き止めるようにさせていく。小さなものは上司が気に入らない程度から出るが、厳しくても結果を出してる場もある。必要以上な場合は罰を与えていくことに。ホーク陣営内ではより厳しく躾けられることに。
ホーク銀河内では犯罪者に厳しく、住民に優しい法が制定されているのだ。元、国は地区制になっている。その地区内の文化も守られているが、他の地区ではその地区の文化に従うべきとなっているので、強制は出来ない。地球の某国のように自分の国では普通だからと言って他国に強制は出来ない。それをホーク銀河内では個人にも当て嵌めている。よって、受け入れられないなら他の地区に行くなということにもなるのだ。
何度も行き来して嫌がらせと思われると強制的にブラックリストに載り、一切の行き来を禁じられる。これは3度目でなるが、1回目でも被害を出す違反があれば執行官の強制力が発生する。それ以外の行き来は自由であるが、個々に認証チップが埋め込まれているので誰がいつ地区越えをしたかがデータ化されているのである。その認証チップを改変などをした場合は重罪としている。
そして、シル星に帰投したシルビアとサマンサにも認証用チップが埋め込まれているが、ホーク星に来るときのみ認証が許される。シル星にそのシステムはない。
太陽系内の拠点も火星付近でコロニーを使用して作られているが、住民と言えるものは技術者とアンドロイドくらいである。鉱石加工にて原料は確保され、火星への移住も視野に入れていた。ホーク側の科学技術によって火星を地球のように蘇らせるのも可能であるが、内部までとなると難しい為にコロニー連結で新しい星型移住地を建設していた。地球側からは火星が影になって見えない位置で刻々と進んでいた。完成すれば、それごと移動可能な優れものである。
地球では未だに燃料仕様のロケット噴射にて宇宙へ飛び出す機体もあるが、宇宙ステーションよりも大きいホーク側提供のコロニー型停泊地で宇宙船の建造を行い、地球側の技術者の育成も兼ねていたがアンドロイドに教育されているとは知らずにいた。AI技術も発展させたが、どうも固い頭を柔軟に出来ない者が多く、発展途上の傾向がある。何はともあれ、AIに認識させることが重要なのだ。
ホークと同じ思考を持てば、とっくに発展しているであろう。
全てを理解するのではなく、こういうものだという思考と認識から入るので基本設計なんぞ二の次である。使えるかどうかの判断が最も重要視される。皇帝となっているホークは全てを覚えて理解してるわけではない。部下がそれぞれの部署から情報を持ってくるので、大まかに言えば概要だけ知ってれば良いのである。
それからひと月ほど経ったある日。
シル星防御ラインにいる偵察隊から情報が入る。
リンド星に動きがあるとのこと。並びに、シル星での女王交代もあり第1王女のサマンサが就任したと。第2王女であったシルビアは宇宙艦隊の総司令官に就任し、ホーク陣営との架橋にもなる。このシル星では王族が仕切っているが、男は労働者階級で女のほうが偉いとされていた。その為、一言王族と言っても女性将校が大半である。これも文化なので文句は言えない。
ホーク側は男女平等の実力主義なので、2階級特進なんぞもザラである。頭脳派と武闘派に分かれる場合もあるが、両方備わっていれば申し分ない。例はマリアンヌが入隊後から凄まじい勢いで昇進し、今では女王たるソフィの側近かつ補佐官にまで上り詰めているが、これもホークの目に止まったからである。
そんな特区から度々、1人で出掛けて街を散策するのはホーク自身。もう特区内でホークを知らぬ者はいないほどであるが、銀河を統治するトップの座にいる者が庶民的であるのが意外な一面でもある。通常、どこに行っても無料奉仕を受けられるが、ホークはシッカリと料金を払う。その代わり、急な出向き等で移動する場合はすぐに車両等が用意される。直属の特殊部隊がいつも近くにいるのも当たり前となっている。




