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地球の大気汚染をものの1時間足らずで改善に導いたホーク陣。
まだ改善しなくてはならない状況もあるが、地球も歳なのだろう。
北と南に位置する軸と磁場に少々変化があるようだが、宇宙に上も下も左も右もないので本来の軸もないようなものであるが、太陽を軸として他の惑星との距離感を考慮し地球の自転自体には変化はない。
コロニー増設を進めるのも各国に打診していき、本当の窮地に至る前に人類移動計画も視野に入れさせていた。その計画には火星の改造も含まれているのである。
地球側からは見えぬ位置で火星に拠点を建設し、環境改善を施す開発も進められていた。
別案では洋画に出てくるような星1つを人工的に作り上げる事も可能なホーク陣であるが、イザという時に移動も出来ない巨大星はイイ的にもなり兼ねないのである。
その別案は鷹士の意見ですぐに変更され、コロニー同士を連結させられれば円形の形にも出来そうな案であったが円形に拘らなければ十分可能の域じゃないのかと技術部門に伝えたので、今では連結用部位の開発と装着にも着手していた。
更に連結した際の動力源のパワーアップに既存艦の流用も含めていた。
コロニー内へ利用出来る部位が数多くあるので、超大型艦のリサイクルも可能である。
既に新規の艦体も建造中なので、何れは主力艦のホーク艦も小さくなっているであろう。例え小さくなっても戦力は変わらずなので問題はない。
鷹士はそういう物かという単純明快な理解で居るが、動力源のパワーコアの鉱石を簡単に説明すると、光を当てると反射する物。より強く光を当てれば強く反射するのでその反射した光に圧力も含むパワーがあるので当てる光の調整と反射した光の加工でパワーコアになるのであった。しかも半永久的に宝石のように存在するので別の衝撃を与えない限り壊れもしない。
ただ、小さい鉱石には光を当てても少ない反射になる為、それ相応の物にしか使用されないが、小さくてもパワーは十分にあるのだ。
その鉱石が取れるのは無人惑星の1つの方であるが、他の惑星でも採取出来る。
その無人惑星の軌道が変わり、太陽に晒された場合の被害は強烈になるであろうと思索しているホーク陣。そのせいか、その無人惑星には保護膜を全体に施している。鉱石が太陽の光で反射してしまったら近くにある星は壊滅的になり、無人惑星がもう1つ増えることになってしまうからである。
もう一方の無人惑星は獣人族が襲来して以来、窪みが出来るほどの放射をした形跡が残っている。自転はしていないが裏側に鉱石が存在するので無下には出来ない。
そして何度か地球とホーク星、第2、第3の惑星間を行き来した鷹士やソフィと補佐官であるマリアンヌは一緒に行動することが多い。
商業メインの第3惑星のバークレイも相変わらずの様子。
まだ、何かと理由を付けては訪れているのはエロジジイの異名も持つジャーマン大将。
武器関連の調達には欠かせない代わりに、別のサービスをしているようだが、深くは追求しないでおこう。
第2惑星ではあの戦闘後も気になり、捕虜の状態で居るシル星のシルビア第2王女の様子も見ていく。
街の復興も進んでいるようで安心はしているが、慰霊碑前で祈る鷹士。
その行動が住民達にも慕われている皇帝である。
ガーネット王に会い、近況報告を直に聴いていくと、シル星からの通信は頻繁に来るが責任逃れを投じている様子。
「いやぁ、参りますね。最初は文字列の解読に多少時間掛かりましたが、内容は誰が悪いだの状況が複雑だので、肝心の捕虜引渡しの話も出てこない有様です」
ガーネット王が頭に手を乗せて悩むほどのようだが、返答は如何にしてるかを聞いていくのはソフィであった。
返答はこちらから第2王女を連れて行こうかというものであったが、戦闘行為に関して何の関係もないという始末で逃げの一手に思えるシル星側。
シルビアの独断専行であると言いたげであった。
「そのシル星ってのは、そういうとこなのか?明らかにオマエのとこの者だろって言いたい気分だが・・・まぁ最初に会った時から解らずもないな、あのシルビーの強気加減」
責任も取れないのが女王になってるのか、はたまた報告されずに違ったことにされているのかは定かではない。
少しばかりシルビアに同情しそうになってしまうが、母星では権利剥奪もされていそうで捕虜の引渡しにも触れずにいるのかも知れない。
その敵であった艦隊等の残骸から調査した結果も報告される。
地球と似た技術であり、補給なしでは今回の距離が限界域のようだ。
そんな星を相手にまた戦闘しても利益にもならんのは承知の上。
別の何かを持って謝罪させ続けるほうが、ホーク陣側の住民への弔いになるであろうと思っていく。
死んだものは生き返らないが、思いは続くのである。
その住民の中には敵の殲滅を願う者も居るが、敵の母星にも普通に暮らす住民が居るはず。こちらの住民に被害が出たからといって同種の敵の住民に武器を向けることは出来ない。
だが、そんなホーク星の思いとは食い違うシル星では、戦いに犠牲は付き物という思いが強いようで、あって当然のような言い回しや、責任逃れが多いのも苛立ちになりそうなホーク陣営。
仕方なく、このまま謝罪なき場合は敵と断定し、貴殿星域からの出撃は全て排除すると通信し、その星域も記したデータを送る。
獣人族が生息する区域にも近付けないので、銀河を抜けることも出来ない。
自分の住む場でジッとしていやがれ的な通信で終了した。
返答は期待もせずに、残された捕虜のシルビアの扱いについて話し合いが設けられていく。例え、逃げたところで特区内からも出れない身分証なしの1個人となったのだ。武器を手にして反撃しようものなら誰でも抹消出来てしまい、罪にも問われないのが問題であるが、住民は敵の元指揮官であると知らないのが唯一の救いかも知れぬ。
よって、再教育を施し王室内での係りに仕立て上げるのが無難という結果に収まる。
「でもさ、元とは言え、第2王女だったんだよな?王女の暮らしがどんなか知らんが、再教育で出来るのか?」
鷹士の意見と疑問も確かであるが、今のところ薬物投与もせずに大人しいと。
思い込みと乗せられた感があったが、現実を前にして悟ったのかも知れない。
ホーク星に戻った3人も考えることが増えた気がしていた。
その点、鷹士に対して2人はそのままで素晴らしいと乗せてくる。
最高責任者であり、最上級司令官の皇帝でありながら庶民的発想を持ち、住民と肩を並べられるのは偉業とのこと。
下手なことも言えない状況もあるが、格も桁違いな強さも持つのでジョークすら無礼講の時でさえ言えないのに、住民と居る時は平気でジョークが飛び交っているほど慣れ親しんでいる鷹士。
地球からの訪問者が近々来るとの報告が届き、誰が来るんだと思っているとあの中村と会社の社長であった。
その日がやって来ると、ワープゲートから現れた2人はスーツ姿。
最初に出迎えたのはソフィの補佐官であるマリアンヌ。
少尉から中尉、戦闘終了と共に中尉から大尉に昇格しているが見た目は若い女の子。
ただの案内人かと思ってしまった中村と社長であるが、擦れ違う者が立ち止まって敬礼をしていくのでそれ相応の身分の者と認識した。
とある部屋に通されたが中村は以前にも来た部屋である。
既に軽食と飲料が用意されており、躊躇なく食すのは中村。
「あっ、見た目は見たことないと思いますが凄く美味しいので社長もどうぞ」
「ん?あ~そうか?・・・どれ・・・これをいってみるか・・おっ!確かに」
暫くしたあとにドアらしき場が開き、更なる上級士官に見える者が入ってきて片膝を着いて横に着く。まさにソフィであるのは中村は気付いた。
直後に鷹士が参上し気さくな挨拶が始まる。
「あっ!社長ぉ~、ご無沙汰してますぅ~、お元気で居られましたか。・・・あ、中村君も居たな、アハハハ」
対応と態度の違いに困惑しそうになる中村であったが、憧れの対象でもあるソフィに出会えた嬉しさもあって緊張していた。
地球側の状況などを踏まえ世間話にも花が咲くが、大事なことを今更聞いていくのは鷹士。
「あ、そう言えば非常に不愉快になられてしまうかもですが、社長・・・お名前なんでしたっけ?いつも社長としか呼んで居なかったし社長室に入ってもネームプレートなくて・・すみません」
「ん?不愉快?・・・アッハッハッハッハッ、そうかそうか。確かにネームプレート置いてなかった。・・・僕は田中です。物凄く平凡だが改めて宜しくです、皇帝陛下」
中村からも聴いていたようで、社長に跪かせて挨拶させてしまうのが悪い気がしてすぐに通常に戻ってもらうよう願った鷹士。
今回の訪問は社長の会社の子会社設立を記念したものだったが、その子会社と社長に中村を抜擢し、既存の部門はまた統合して金髪ショートのクリスティに任せ、田村が部下として補佐していくそうだ。
しかも聴く所によるとそのクリスティ鈴木と田村が婚約したと。
「はぁ~?あの田村がですか?・・・ん~まぁ、その傾向はあったような」
贈り物を吟味して送りましょうとなり、本題の話題に戻る。
子会社と言っても国とホーク陣営との橋渡し的なもので、一般人との間も取り持ちたいという意向らしい。気が付けば重要人物になっていた中村なのでその子会社、じつは国からの支援を取り付けているので親会社の田中社長も認定済みの信頼獲得で業績は上がる一方という。
更にその上の親会社からも独立して提携はしているが、平等の扱いに等しくなったという。
下手をせずとも中村が社長の会社のほうが利益が多く、取り扱う品目が地球外の物である為、交渉力も必要。以前の観光地味た訪問が、こんな時に役立っているとは思いもしなかったのは中村本人。
小声で鷹士の耳元で囁く田中社長は中村を嫁にどうだという案であった。
先に部下であった者に婚約されたこともあって自分を振り返る鷹士。
だが、その話題の本人の中村はソフィと楽しげに話している。
それを見た田中社長は「あっ、ゴメン。あの人が有力候補だったか」
と、この話しをなかったことにしていく。
ホーク星での結婚制度は数あれど、一夫多妻制も存在するが逆もある。
しかし日本生まれの日本育ちの鷹士は妻は1人が良いと思っている。
確かにソフィとは意見も合うことが多く、よく気が利く女性でもある。
言わずとも理解して即行動に移せる行動力もあり、部下の扱いも上手い。
だが、皇帝である鷹士という役職が大きな差を生み出しているのかも知れぬ。
本人はどう思っているのかを知りたくはなるが、強制はしたくないものだ。
口にはせずに居たが、社長も苦労してるようで若干の白髪が増えていた。
中村は大して変わらずに居るようだが、暫く見ない内に責任感も増大しつつ落ち着き感も現れていた。
その中村からも質問があるようで聴いていく鷹士。
「あの・・・反重力技術の件なんですが。・・・本国と他国からと自動車業界からも問い合わせが殺到してまして、何か案がないかと」
「ん?案?・・・イタリアン?ホメラニアン?それとも、こし餡か粒餡?・・あ~エイリアン?ってオチか?アッハッハッハ・・・ハァ・・・ノリ悪いな」
冷たい視線で鷹士をジッと見ていた中村は口元だけ作り笑いであるが、真面目な返答を期待しているのも確かであった。
その案というのは値段の交渉が含まれていたのである。
アインとマリーに知らせていたのは、こういう技術があり提供可能ということだけで説明が主であり技術面の説明で地球側の技術者の育成から入らないとならない段階のようであった。
そこで地球側は提供も無償と聴いてはいるが、特許に値する為にそれ相応の支払いが発生すると見越し、無償提供ではなく技術を購入して独自開発にも繋げたい自動車業界や軍事利用にと思う国も居る。
交通網を最初になんとかしようと思っていたのはホーク陣。
何れは様々な利用方法が出るのは予測済みであるが、技術の値段となると難しい。
詳しいことは鷹士にも解らないが、今のところ中村が社長になった会社が窓口の役割のようなので、いっそのことレンタルしたらどうかという提案も出す。
何しろ異世界の物であるが、要望があれば作れる技術を持っているので試作品は出せるのである。
特許という括りが問題あるが、異世界の方のホーク側にとっては何ら関係もなく、法律すら無関係なのだ。
よって中村の会社は単にホーク側に依頼し、出来たものを引き渡す仲介会社になるので、形式上は問題なく著作権などはホーク側にあることになる。
地球側の法律が全く通用しないのが良い面であろう。
拠点の土地は借用扱いなので、その技術の提供で得られる資金から賃料を支払うということに国は同意するしかない。既に無償提供したのは国のほうだが、土地の賃料の支払いを言われたのには驚いたようだ。
中村はシッカリとメモを取り、交渉に役立てようと熱意を持って社長と地球へ帰って行った。




