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23~

   23


 いつも冷静な判断で皆を動かしていたソフィが、怒り心頭で怒鳴るのは初に近かったので、その場にいた全員が直立の姿勢で固まった状態で震えている者も居た。そりゃ、ドS級が浸透もしていて強さも知られているので、体罰を受ける時は相当な覚悟が要ると思っている部下達。


だが、その罪を背負わされるのは情報を止めた者である。

すぐに指示を下し、より詳細な情報を調査し即報告するよう命令を下すソフィ。

このソフィも集まった情報を全て皇帝に伝えなければならぬが、どのようにして伝えるかで頭を抱えていく。

その時に補佐官であるマリアンヌが助言地味た感想を述べる。

「起きたことを検討していたら今になりましたじゃ駄目なんですかね。まだ調査段階ですし」

情報伝達の遅延は戦闘時の不利に繋がるが、まだ戦闘は起きていない調査段階が功を成していた。

「ん?・・・んっ!それ良いかも?そのまんま伝えたらと思うと滅入ってしまうが。・・うん、そうだな、まだ調査段階なんだ。ありがとう、マリアンヌ」


ソフィとマリアンヌは意気投合しているが、内面は覚悟を決めた気持ちでいた。

トーナメント中継を見て熱くなっているのも知っていたので、トバッチリや八つ当たりに値する行動があっても黙って堪えるしかないと思っていたようだ。


皇帝室の前で深呼吸をして息を整えつつも、胸の高鳴りまでは抑え切れず入室の言葉を発して返答を待つ2人。

朝は執事やメイドが居るので入室許可は求めずに入るが、入室後に名乗る。


皇帝室に入って早々、鷹士の方から一声を掛けられる。

「おぉ、ソフィ、マリアンヌ。これ見てくれるか?この女、スゲェ強いんだ。ウチの部隊の奴らが弱いんかとも思ったけど、こりゃ逸材だよ」

と、満面の笑みを浮かべているのが逆に緊張してしまうのは2人の方。

こんな時に情報遅延で敵かも知れぬ者が我が陣営の偵察機を撃墜したなどと、素直には言えない状況に置かれていた。


皇帝に対して嘘は決して付きたくない気持ちを持ちつつ、報告をしていくソフィ。

「ん?どした?・・・うん。・・・あ~あの調査ね。・・・・・消えた?偵察機がか?・・・熱源アリか。ん~・・・で、調査はまだしてるんだよね?・・・そうかぁ。ん~、オリガーも言ってたからな。部隊は出・・・って、調査隊以外はまだ出してないのか?・・・念の為、一個大隊を向かわせて後ろ盾にしてあげて」

オリガー参謀との会話で、ある程度の予想は既に付いていた鷹士だったので想定内のことのようで、冷静に対応をしてくれたことに感謝の念を捧げる気持ちでいたソフィとマリアンヌは、退室後に大きな溜め息を吐いてしまう。


中継の話題で出た女性の戦士は以前、ソフィが戦闘区域で会っている気がしたようだが思い出せずに居た。まさかの協力をしてくれたレジスタンスだったとは後で思い出すことに。しかもあのガーネル大佐と、対等に渡り合えるほどの実力と気さくさも持っているのである。


そのガーネル大佐も時間が空けば見ていたトーナメント戦。

似てるとは思っていたが本人とは気付かずにいたようだ。

地上部隊の総括をしているので、じっくり見た訳ではないのが残念。


地球側との交渉は相変わらずの遅さが目立つ。

決定権は代表者にあるが、民主的にという枠が時と場合によって邪魔にもなるのだ。意見の相違があるのはどこでも同じ。満場一致にならずとも決定の遅さが後のダメージにも繋がる。


しかし、鷹士は元?地球人。

そんな場面はいくつも見てきたので想定内。

待たずに拠点内で進めていく案件もあり、上空に待機する艦体でも同様である。決定事項を持った代表者が現れたら即時実行が可能になるよう準備万端なのだ。


アイン大佐はヨーロッパ方面、マリー中佐は日本を拠点としてアジア方面を任されている。次の予定は中東地域と大国であるロシアとアメリカだ。

互いに牽制し合いながらは未だに続いているのがこの2国で、軍事国家健在とも言える。

少々変わった思考を持っているが、民の為の共和国と表しながら半強制的に国を挙げてやるのは中国であった。


問題の戦闘行為をした某国は世界に駐屯地を持つ、アメリカの一部の部隊であった。血の気が多い者が居るのは知れた事だが、上官がそれでは困ったものである。


その地球の日本で重要ポストに就いてしまっている中村はというと。

休日が殆ど交渉時の仲介に入り、会社の社長からは平日に休みを貰っていた。

どっちが本業なのかが解らなくなりそうだが、何とかやっているようだ。

同時にクリスティ鈴木の役回りが広がり、田村は相変わらず犬のように走り回っているようだが、性格的に喜びに捉えているので問題はない。


そんなとある日。

鷹士は自身の転送スキルではなくワープゲートを通り日本へ。

地元まではマリー中佐に頼んで付き添いを付けず、普通に移動手段を使っての自宅帰宅。社長の恩義もあれど、自宅内にある物を売却していく鷹士。

思った以上に優れものと思ったのは充電器に刺さったままのスマホ。

久しぶりに両親の居る田舎に電話をして何気ない話しをしつつ和む。


普通の人間を満喫して、気持ちを切り替えて拠点に戻り、ホーク星にも戻る。

戻った時に早速報告の嵐が訪れるのだった。

猫3匹も元気で室内を駆け回っているのがほのぼのするが、報告事項の中には深刻さが伺えるものもある。

「何ぃ~?地球から取り寄せるだとぉ~!誰だ、この要求出したのは。てか、こりゃアインが受けたな。まぁ、確かにこっちに麺類はないがパスタの取り寄せかよ。アンドロちゃんに行かせて修行させて覚えて帰ってもらえよってんだ。アホか、向こうの職人取り寄せるなんか出来るか」

と言った、常識外感覚の深刻さがあった。


ホーク星でのトーナメントも決勝戦である3人対部隊の者も決着が着きそうであった。

あの女戦士の戦いも白熱し、なんと優勝してしまう。

部隊から出場した者はサイボーグ化を余儀なくされるほどの重症を負う。

この時点で有名になってしまった女戦士の名はマーガレット。

ソフィも思い出し、ガーネル大佐も思い出してモニターを指差して叫んでいた。

「あ”ーーっ、この女ぁ、知ってるぞ!んぐぐぐぅ、生きていやがったか、ガッハハッハァ~。・・・まぁそうだろうな。こりゃ、ウチの部隊に入れたくなるが・・・」

と、周りを見るガーネルは部下達がひ弱に見えてしまっていた。

ソフィほどではないが、強さはガーネル本人が保障している。


優勝者であるマーガレットには皇帝自ら賞と賞金を手渡す。

片膝着きの礼儀も忘れないマーガレットであるが、以前の戦闘時にお見かけしたことを伝え、ソフィにも挨拶を施していくのであった。

ホーク陣営への誘いもしたが、マーガレットは丁寧に断りつつ自分の部隊があることを教える。

レジスタンスを今でもしているようだが以前とは違い、平和活動の名の下で悪を退治していると。

ロクでもない奴らが蔓延る地区だったのに、平和になって住民に笑顔があるのは、このマーガレットのおかげでもあるのだ。

皇帝自らホーク陣営を無償で使って良いと施しを受けるマーガレットは喜びを露わにしつつ忠誠を誓うのであった。


地上部隊に強い仲間が加わったことにもなり、活気が漲る。

マーガレット自身には大佐級の扱いを与え、ガーネル大佐自身も納得していた。

ソフィとの対面時にはあのソフィに拳で胸元を叩けるマーガレットが、どれだけ凄いのかを皆がその一瞬で理解した。珍しいほどの笑顔になっているソフィでもある。

積もる話もあるだろうからと思ったが、自身の部隊が居る地区に戻るのはマーガレット。


残った鷹士とソフィ、ガーネル大佐は当時を思い出しながら話が弾む。

補佐官であるマリアンヌは話しを聞きながら、当時はまだ子供だったが戦闘区域に居た記憶を持って聴いていくと、このマリアンヌも当時、鷹士の戦闘を見ていたのだ。ソフィとの共同戦闘も見ていて、そこから憧れを抱き、のちに入隊した経緯があった。

「アハハハハ、そうだった、そうだった。いやぁ、あの時はソフィのキョトンとした顔が面白くてさ」

などと、ソフィを弄る鷹士であるが、ガーネル大佐も無礼講のように弄り、ソフィ本人は嫌がらずに一緒に笑っていた。マリアンヌはその仲間に入れた光栄を今でも大切にしているのである。


そこへ報告と戦略を持って来たのはオリガー参謀長官だが、同じく弄られる。

「あ~、このオリガーも無表情で冷静にツッコミ入れるんだよ。な?・・・ん?なんだ?・・・んー。・・そうか、解った」

笑顔から真面目な表情に変わる皇帝の鷹士を見たソフィとガーネルも察知した。一瞬遅れて周りの雰囲気がガラッと変わったことに気付いたのはマリアンヌ。


報告によると無人探査機は撃墜された証拠が出たとのことで、敵の正体を暴く戦略に移行することになった。科学技術も持った敵軍が姿を消しつつ、先制攻撃を仕掛けたと判断された。

やはり、後ろ盾として大隊を派遣して正解だったと思う鷹士とソフィ。

まだ敵の概要も解らぬが、熱源から探知した予想によると約20隻ほどの艦隊が存在するようと報告していくオリガー。

敵の艦隊の大きさは然程大きくないと見ているが、油断は禁物。


本当の深刻さで検討しているホーク陣営であるが、敵と見做された側のSSことシルビア女王の艦隊では、撃墜を行った艦長を厳しく成敗していた。

逃げ帰ったら母星で批評されるのは間違いないので、戻れずに居たようだ。

だが、押し迫る恐怖もありつつ、他の艦長からは戦闘を指すものも居る。

「そのデカイ艦体であっても、こっちは20隻も居るんですぜ。囲んで一斉放射を浴びせてやりましょうや」

などと勝利を前提に言ってくる艦長はビーム砲の威力を知らない。

しかも撃ったのは主力艦のホーク艦であり超巨大戦艦なのである。


熱源で察知されているとは知らずに居るが、逆に調査されていることも知っている。近付く艦と撃墜したものと同様の戦闘機影を捉えているのはSS側であるが、砲撃はしていない。

「あ”~もう。先制攻撃しちまったのは、こっちなんだぞ。まぁ、それよりも前に獣共を使って仕掛けてたのもあるが。ったく・・・やるしかないんかぁ?こうなってから謝罪で許してもらえる訳ねぇし・・・他の奴らはやる気だし」

髪をグシャグシャと掻き乱しながら悩むシルビアである。


妙な悪知恵は働くので今までは勝利していたが、今度の相手はデカ過ぎると思っているのが正直なところであった。

ビーム砲の発射時の範囲から予測したデータが物語っていたのだ。

無人星にポッカリと大きな窪みが出来てしまうほどの威力を持った相手に、どう戦うか。

ある程度、戦って途中で私は止めたんだけどという言い訳も考えているシルビアは保身に走っていた。


着々と戦略が検討され、迫る戦闘に備えるのはホーク側。

獣人族を嗾けた奴らなので、その時の被害も考慮し徹底的に殲滅させる戦略に辿り着こうとしていた。破壊する壊滅ではなく、跡形もなくなるような殲滅である。敵に対しては冷酷無比なホーク陣営を決して敵に回してはイケないと知るのが遅すぎたのはSS側である。


あらゆる探査とサーチ機能を駆使し、敵を追い詰めていく。

いくらステルス機能で保護していても、その範囲を特定すれば全容が明らかになる。光学迷彩を施しても局面部分は多少の歪みが生じてしまう為にその部分を辿ると大きさが判明する。

ホーク側はそのステルス機能に別のホログラフィックを映し出し、誤魔化すことも出来るので本体の大きさも誤魔化すことが可能。

無人偵察機4機を使用してのダミー戦艦も映し出すので、敵は撃っても当たらず本当の戦艦数も把握できずに敗退するであろう。


待つだけなど焦れったい艦長は女王の命令を待たずに出撃してしまう。

20隻中の過半数が釣られて出撃してしまい、止めはしたシルビアだが聞く耳を持たずな思い込みの激しい艦長は行ってしまい、額に手を当てて嘆くのはシルビア。自分にも当て嵌る思い込みもあるが、知った時には既に遅しである。


発進した艦隊の熱源と見られるものが大きくなった反応を発見した、ホーク側調査隊。すぐに後方に居る大隊にも報告を入れ、調査隊は撤退をしつつ大隊と入れ替わる。


当然、本部にも通達が入り出撃要請の命令が下り緊張が走る。

地球側でもそうであるが、開戦時にトップである者が出ることは無いに等しい。だが、このホーク星では皇帝自身が出ることが当たり前のように思えていた。部下だけに辛い思いはさせないという鷹士の信念であるが、周りは逆のことを思い、自分らで抑えてみせると意気込むのがまだ多いのも真実。


そして、開戦の火蓋が切られようとしているのは他の第2と第3惑星にも知らされる。

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