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20~

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 移動した先にて周りをキョロキョロと見てしまう中村。

まさかの、ホーク艦隊の主力艦内に居るとは思っても見ないであろう。

と言ってもまだ本部のある場所にて停泊中である。


内部を案内されている時も、地球では管理官である鷹士に挨拶する者全員が片膝着きであったのが、中村自身も漸く『本当に王様になってるの?』という気が湧いてきた。


只でさえ巨大な艦体なので、案内図が欲しくなるのは皇帝になっても同じ思いを持っているのは鷹士も同じである。

付き添うようにソフィとマリアンヌが同行し、その2人に挟まれるように中村。

艦内の説明で通常では有り得ない常識外れのオンパレードに、中村の脳内は沸騰し掛けていた。


何しろ、艦内に街があるようなもので、作物に限らず、工業製品のようなものまで造っているのだから、中村の中にある常識的な知識は崩壊間違いなしである。

全長5000mの艦であるのは納得出来よう。

鷹士から簡単に言われたのが自給自足が出来ているであったが、まさにその説明が正しくもある。


場所取りしてる小型、いや、全長50mはあるので小型とは言いづらいが、可変式なので更に小型化も出来る。何十機か下ろせば、空いたスペースに住民を乗せる事も可能。その住民用に部屋の確保も出来るようアレンジも出来る優れものが備わるが、これは戦闘時の万が一の時に閉まるシャッターのようなものが本来の使い方なのである。


艦内からはモニターを通してのみ外側を見れる。

外側からは一切の繋ぎ目も見えないので、敵側からすると武器等もある場所が確認できないのだ。そんな艦でも突如現れる放射ビームは強烈の一撃を食らわすであろう。


遂に司令室に入った中村は、何とか常識的範囲内に収まるような配置であったのが少しの安心だったようだ。

それでも数段高い位置に備わるので、下の色々な装置類を扱う者を見下ろすようだ。その場にあるクッション性が豊かで肘掛けも付いたユッタリした椅子が皇帝専用席であり、鷹士しか座れない。

しかも鷹士がカムオートという言葉を発すると目の前に装置が出て来て、鷹士が1人でこの巨大戦艦を動かすことが出来るという全システム制御装置である。


呆気に取られている中村であったが、非現実的なことが目の前で起きているので信じるしか選択の余地は残されていない。まさかの夢オチとも思ったようだが自分の行動を振り返っても現実であった。

「ちょっと出るくらいイイよね?それとも別のに乗り換える?今、上に居るのはどの艦?」

と、ソフィに訪ねていく鷹士を見ていた中村は、何のことかサッパリであった。


ハキハキと答えていくソフィに憧れを抱きそうな中村であった。

そのソフィが鷹士に敬礼と同時に「了解しました」と言ったあとに部下である者達に一斉に命令を伝えていく姿も格好いいと眺めてしまう。

マリアンヌもソフィからの指示で動き出し、鷹士はと言うとフカフカの椅子に座ったままであり、中村はその隣に置かれた椅子にチョコンと座っていた。


直後に何かが動き出した音がして、ジェットエンジンの始動音にも似ていたが微妙に違った。

すると目の前に巨大なモニターが現れ、向かう先が表示されるが宇宙空間に向かう空の映像であった。

飛行機が飛び立つ感覚が襲ってくると思って椅子を手でシッカリ握るのは中村。だが、シートベルトもないのが非常に不安だったようだが何の変化も感じない。目の前に映るモニターには超高速で空を突き抜け宇宙空間に飛び出ていたのである。

「えっ?・・・嘘っ?ホント?・・・ちょっ・・えっ?えぇ~っ?」


落ち着きもなくキョロキョロしつつ、目の前のモニターに映る映像すら信じれない様子の中村であったが、すぐ隣に居る鷹士はまた信じがたい事を発していたのにも驚く中村。

「あれ、1回だと2~3時間だったよな?3連チャン出来るか?この艦。・・・ん?おぉ~出来るのかぁ、そりゃイイ。向こうにはアインかマリーが居るだろ?帰りはそっちに転送すれば早いな。じゃ、やってくれ」

すぐに対応に動くソフィにまた見蕩れてしまう中村であったが、ものの数秒後に少々の衝撃があった。


モニター上には流れる光の大群が映っていた。

「あ、今ね、ワープ中だから景色は然程変わらないよ。あと2回するからまたズンと来るけど、大丈夫?・・・みたいだね」

と、普通に声を掛けてくる鷹士に頷くしかなかった中村。


2度目、3度目と宇宙空間の映像が映るが、すぐに前方から押されるような感覚があれどキツくはない。

そして遂に3度目のワープから出た先に、目を疑う光景を目にする中村。

そう、まさに地球の姿がモニターに映っていた。

「今・・・火星の横っ面に居る感じか。あれはアップで映してるから実際はもっと離れてるけど・・・あと数分で地球を肉眼で捉えられる位置に着くよ」


管理官である大熊鷹士しか知らない中村であるが、人が変わったのか、別人なのか、本来の姿なのかと疑問符は沢山浮かんでいた。

すぐに月も見え、地球の上空に漂う艦隊のレーダー反応らしき物もモニターに映る。音声のみであるが聞こえてきた声は、あのマリー中佐であった。

「こちら、マリー中佐であります。中村様のご帰還準備、整えてありますので、いつでもどうぞ」

この声が聞こえた時点で鷹士の事を陛下呼ばわりしていたのをツッコミたかったようだが聴き慣れた声に安心もする中村。


本当に宇宙旅行をしてしまった感覚を信じれないままの地球帰還になった。

ホーク艦から出る時も「俺、こっちのほうが住み心地良くなっちゃってね。まぁまた会うと思うけど宜しく」と言って手を肩ほどに上げて見送る鷹士。

それに対して言い返す間もなく手を振りつつ光に包まれ、マリー艦に転送。

そのマリー艦から日本に造られている拠点に再転送され、マリー中佐とご対面。

「お疲れ様です。どうでしたか?我が星ホーク星での滞在は」

微笑みながら聴いてくるマリー中佐に「んっ・・まだ、信じれない」と驚きの表情で固まっているようだが、見ようによってはホラー映画での驚きの表情にも近い。こんなこと言ったら素早い平手打ちが飛んで来そうである。


銀河間を円を描くかのように回って来た中村であるが自覚はまだない。

拠点から帰路に向かう際には送迎車が出迎えてくれるので、どこかのお嬢様気分であった。

自宅に辿り着いても護衛官みたいなスーツ姿の人も居るが、もう慣れたようなもの。ユックリと茶を啜っていた父親とキッチンで何かこさえてる母親が居たが話せる状態ではなかった。

兄弟姉妹は居ないひとりっ子な中村であるが、両親からの一心が込められた真面目さは受け継いでいる。

しかし、その真面目さも今経験してきたことに対しては別要素として考えなければ受け入れることも難しい。


自室に入ってベッド上に着替えもせずに横たわる。

腕時計もしたままであるが、あんな凄まじい距離を往復したのに数時間しか経っていないので、両親は普通に週末に出掛けて戻って来た娘と思ってるようだ。


翌朝、目覚めで目の前に立っていたのは知らないスーツ姿の女性。

「お目覚めになられました?おはようございます。私、こういう者です」と言って名刺を渡す女性は政府関係者であった。

自室内にまで入り込んでくるのも問題のような気もしたが、寝てる場にまで来るとは思いもしなかった中村は文句を言う気にはなれずにいた。

至って普通に、いつもの朝の準備をしていく中村に付き纏うようにその女性は説明と要望を伝えていく。

わざと、うがい中に答えて何を返事しているのかさえ不明にしていた。


朝食の場には両親も居るが、何故か微笑ましい光景で座っていた。

『なんだ?賄賂でも渡されたのか?』と思ってしまう娘の中村奈々美。

聴いていないようで聴いていた中村は、どうやら親善大使に任命されたようだが、本人の承諾は抜けているようである。


何度か拠点に訪問しているのは中村だけではない。

政府の者も訪れて話し合いをしているので、中村の事も聞かされていたようだ。

異世界の異星人と仲が良い関係を持っている中村に、政府関連の柵のない者を親善大使として間に入って貰いたいようだが、要は更なる情報が欲しいということのようである。

確かに昨日、政府関係者も知らない異世界の状況を見てきたのであるが、驚きばかりで理解の域に達していないのが現状。

その事すら知らぬ政府関係者に話す義理もない。


こんな時に自分の住む国の政府を疑ってしまう気持ちもあった。

仕事上とも言えるかも知れないが、セキュリティ部門を任されている為か、小さな疑問も解明したくなる中村。

『何を探りたいんだ?向こうで見たのは常識外の物ばかりだったんだから、争うのは無駄だぞ。それとも交渉して更なる技術提供を目論んでいるのか?』

情報開示も未だに遅い政府は、事後報告が多い。


既に提供されている小型無人機も、まだ解体どころかそのままの状態が続いていたのだった。

反重力技術は拠点内で両方の技術者間のみで行われているが、全てを明かすことはしていないホーク側。

理解に苦しむ地球側の技術者達の頭を柔らかくしないと進みもしないのであった。


技術提供はしても技術提携には至って居らず、設計図すら持たないホーク側技術者に求めるのは古い思考が邪魔をしている状態であり、その技術を全面開放して欲しいのが政府のようである。


何か、伝言係になるだけで大層な肩書きを貰ったような気が起きる中村。

それ以外は大して変わらず、会社も普通に存続している。


週が明け、会社に出勤していく中村。

出入り口前で、いつものように挨拶も交わされるが聞いたことがあるのは当然の声の中で気付き「ん?あれ?」と、つい声に出してしまう。

有り得ないと思っていること自体が常識を逸脱していく状況に居た。

「ん?何してんの?早くしないと遅刻扱いになるよ」と、まさに管理官である大熊鷹士がスーツ姿で目の前を歩いていく。

「えっ?・・・ちょっ・・・だって、えぇ~っ?」

と、天を指差しながら見上げたりして不思議がる中村。


自分が行っていた世界から常識外の時間で転送された記憶が過ぎり、漸くと言って良いのか理解の域に達しようとしていた。

ひと月以上の休暇となっていたので、挨拶がてらに社長に会いに来た鷹士。

当然のことながら退職届を持っての参上であったが、大らかな性格の社長は鷹士がその届けを出す行為を止めたのだった。


この社長、驚異的なまでの先見性と予知的な思考が備わっているようである。

「大熊君。君には大変感謝もしてるから、言わずに行ったことは謝るよ。じつは君の住むマンションね。僕が買っちゃいました。あっ!棟全部じゃないから、君のとこだけだけどね。だからもう家賃の心配もない。いつでも気軽に帰って来れるようにしたんだ。・・・で、向こうとの関係があるんだよね?いやその、噂がね」

と、社長の話が続いていき、どうやらその噂というのが中村経由で回って来てるようである。拠点に行くとこを見られて以降、中村には社内でも聴かれているようだが、報道している中の事実との食い違いも含まれている。


鷹士が休暇申請を出したあとから、拠点内の動きも多くなり、報道関連も特集を組むほどで、そこへ中村が訪れたりで上司である大熊鷹士にも関係が伝えられているか、或いは関係自体の張本人かもという噂かららしい。

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