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活気があるような社内であるが、単にバラバラの意見が飛び交っているだけの職場。
その中で、淡々と仕事をこなす大熊鷹士。
両手を前に出して「まぁ~まぁ~まぁ~、落ち着いて」と言って引き攣った笑顔を見せているのは係長の田村洋次。
大熊の2つ下であるが新卒で入った後輩なので相談にもよく乗る。
2人して出世はしたものの、次から次へと個性豊かな新人が入ってくる。
人事は何を基準にして採用しているのだろうかと疑問が生じるが、大した失態はないのが幸運。
その大熊の所属する課に転勤で配置替えになった者が来るらしい。
小言部長からは2人来るから宜しくとだけ伝えられ、私的電話をしていった。
部長室から出て手渡された書類に目を通したが、一見は普通の者のようだ。
だが、2人とも女性社員というのが気になった。
大熊の課にも女性従業員は居るが、大半は男が占めている。
これは男女平等の元に配属されたものなのかと思いつつも深くは考えずにいた。
大まかに言えば建造物の外装やセキュリティに関する仕事を大会社から仕事を貰っている中堅会社である。
保守課と名目上はなっているが、中身は発注業務も兼ねた営業課みたいなもの。
何を保守しているのかといえば、現場作業の下請けの会社からの要望や苦情を処理しながらの下請け会社の保守なのかと思えるほどであった。
数日後。
朝の報告が終わると同時に訪れていた2人が来て待っていますと係長の田村から伝えられ、皆にも伝えることになった。
別部屋の室内に通して、とりあえず先に係長と課長が挨拶をしていく。
訪れた1人は黒髪ストレートの綺麗系、もう1人はなんと金髪のショートカットの外国人かと思ったがハーフのようだ。
どちらも礼儀正しく言われるまで座ることもせずに立っていた。
「まぁ、どうぞ、座ってください」と言われ短い返事をして着座する。
この時点で履歴書や経歴等の文書はなく電子データでの送信で課長と係長には届いていた。
重要文書などを置いておいて部外者に見られることはない。
電子データのパスワードも身体認証なので、本人以外不可能とされていた。
大熊は部長から手渡された書類には概要のみの表記であったので、初めて知ったが1人は自分より年上と同年代ということだ。
更にもうひとつ、部長が更迭紛いの左遷になるようで胸を撫で下ろす大熊であるが、まさかの自分が部長にと思ったが、役職名が変わり管理官になっている辞令も含まれていた。
そしてその補佐役として黒髪綺麗系の美人が課長待遇として着くようだ。
業務の変更が元のようで、セキュリティを切り離し保守部門の課長職に金髪ショートカットが就任し外装業務に専念し係長職は田村のまま。課という名称がなくなり部門別になった。大熊が部長になったようなものだが、2つの部門を管理する責任者という重大な役職に就いてしまった。
目の前に居る女性2人は真面目な表情で真剣な眼差しでいる。
落ち着いた雰囲気である大熊鷹士を見て、出来る人なんだと既に確信を得ているようだが、隣にいる田村は驚きが滲みでているようだ。大熊も心の中で驚きがあるが、こうなったのかと理解をしていた。
そして改めて挨拶が始まる。
「はいっ!・・・本日付でこちらに配属になりました中村奈々美と申し」
と、名を述べていく中村に手を向けて待ったを掛けたのは大熊。
「あっ、ちょっとゴメン。そんな堅苦しいのは抜きにして、これから宜しく。業務内容は既に聴いてるはずだから、このあと皆に紹介するから、その時に自己紹介をね」
と言って微笑みを浮かべる大熊であるが、女性2人は更なる緊張感を抱いたようだ。
この時、中村は管理官である大熊に余計なことは通じず要点のみをハッキリ伝えるべき人なのかもと思っていた。
その後、職場内に声を掛けていく係長の田村であるが、一向に静まらない。
隣の部屋のドア付近で出番待ちしている2人も、その様子は見ていた。
そこへ、1発で職場内の皆を黙らせたのは大熊であった。
各机に備わるPCに警告音を一斉配信したのである。
「はい、皆さんいいですかぁ~。ご自分の席に着いてこちらに注目していてください」
静まり返った職場内にも緊張感が走り、業務変更と名称、各役職名の変更に新たに配属された者を紹介していく大熊。
そこへ紹介された2人が登場するが、手足を同時に揃えて歩いてくるような気配があったが、普通に両手を体の前で組んで歩いてきて、1人ずつ自己紹介をしていく。
金髪ショートカットの方も流暢な日本語で話していて、職場内には安心感も生まれているようだが、別の視線も生まれているようだ。
だが、どちらも上司になるので下手は出来ないと思ったのは男女共にである。
一見、外壁とセキュリティに何の関係がと思うが最初は外壁のみであったのだ。
そこへ科学の発展が来て、外壁にセンサーが埋め込まれるようになり、二重の防壁で自然災害を防ぐ仕組みに。もう一方のセキュリティーはその名の通りであり、外壁にカメラを仕込む場合も増えて何らかの衝撃物が飛んできても全体ではなく個別にも対応出来るシステムを取り入れていた。
立ち並ぶ家々の中で只のセンサーだけでは広範囲は難しいので全方位カメラも需要がある。
組み合わせ方によって自分の家だけを守ることからお隣さんと共同設置もある。
業務変更の中にはシステム開発も含まれており、独自のシステムで利益をもぎ取りたい社長の意向があった。
配属初日だが、もう色々と聴きに回っている2人。
便利なアプリも役立っているようで、音声収録しながら文字起こしもするスマホ。
後になって、あの人なんて言ってたっけというのがなくなるのである。
当然、黒髪綺麗系美女の中村は最後に大熊の元に来て確認をしつつ、補佐役もしていく。
まるで秘書が付いたような感じであるが、自分より年上の女性が敬語を使って接してくれているのが妙に嬉しい感覚となっているが、見た目はいつも通りの落ち着き感があった。
チラっと見た先には、もう犬のように働く係長の田村が見えた。
『そりゃ、新しい上司が金髪ショートの美人とくれば、そうなるかねと』と思う大熊である。
そんな田村に気を遣うクリスティ鈴木は、少々苦笑いを浮かべていた。
そしてこの日の業務終了の夜に、早速の歓迎会が2人に振舞われた。
飲み屋に繰り出すわけではなく、会議室を使用しての歓迎会であった。
何故かこの時は皆が意気投合してるかのように役割分担も早急にこなしていた。
会社内なのにアルコール摂取も、車通勤者も居るが飲酒運転は皆無になっている時代である。
医薬品も発展していて、一粒飲めば二日酔いもない。
そうでなくても、タクシーが自己判断して薬剤投入を促し自宅に着く頃には元通り。
それでも飲み過ぎで潰れる輩は未だにいるようだ。
自宅に帰った大熊がまず、するのは一声の「オープン」と生体認証で玄関が開き自動で照明が点き、次に「起動」でPCが立ち上がる。
始めるのは当然セーブしているゲームであった。
忘れずに買ってきていた弁当やビール1本は、2人の歓迎会の残り物を貰って来た庶民的な大熊。
大規模イベント内の惑星間戦争には昼も夜もない。
意外と難しい場面もあるが、部隊強化が幸をなして何とかクリア。
白熱した戦いのあとの1杯が旨いと思いながらも1本じゃ足りなかったようだ。
冷蔵庫にストックはあれど、飲み過ぎないようにと2本目で止めた。
就寝に着いて30分もするとあの夢が再開する。
夢の中なのに起きると目の前と周りにメイドが居る。
さすが皇帝とも言うべきか、身の回りの世話役は数え切れない。
着替え終わった頃に、ドアをノックし許可をすると入ってきたのは赤髪のソフィ本部主席司令官。
軍服であるがミニスカ丈でスリットが入っているので歩くと美脚が拝める。
見た目は平凡であるが、心の中はニヤニヤしていた。
だが、すぐ後ろに着いて来ていたのは参謀長官でインテリのオリガー。
真っ先に口にしたのは本部の主席司令官のソフィであるが、礼儀は忘れない。
片膝を着き、目を合わせぬように顔を下に向けつつ片腕は胸元に置いていた。
見ていても良いのは近付くときと去る時だけであった。
「ご報告があります。我が銀河系より先の銀河に生命反応を感知致しました。先の戦闘の際の生き残りではなく、新たな脅威になるかは只今誠意調べております」
先の戦闘では、こちらに損害はなく勝利になったが敵が撤退しただけであり、またいつ襲って来るかは不明であったが、今いる銀河系内の種族ではない者が居ると言う案件のようだ。
「ん~。・・・距離は?あと、何らかの信号の探知は?こちらからの一方的なサーチで発見しただけだよね?今どのくらいの範囲出来るんだっけ?」
初歩的な疑問でありながら、どのくらいの範囲をサーチ出来るかは既に知っている為、撤退した敵の残影を捉えられんのかという攻めの一声も含まれていた。
『ヤバイ!マズった。・・・敵の残党の事を先に言っておけば』
身を強ばらせて体罰を覚悟していたソフィ司令官であるが、何もせずに居る皇帝の方が恐怖に値いしていた。
そこへ空かさず申し入れるのはインテリ気味のオリガー参謀長官。
「てっ、敵はワープ航法にて戻ったようでサーチ範囲内には存在はしているものの動きに変化はありません。大口径砲でしたらすぐにでも敵陣に撃ち放えます」
敵の抹消を目論む参謀長官に対し、手っ取り早いが面白みが欠けると思ったようだ。
「いくら敵の非道な行為が他の惑星に向けられていたからって、いきなりそれは面白くないな。まぁ、襲撃受けてた惑星からの依頼もあったから、やっただけでもあるが・・・そうだなぁ。もう1回だけチャンス地味たものをやろうじゃないか」
皇帝、大熊の言葉に疑問符を頭上に浮かべてしまう2人であるが、圧倒的な戦力差があるこちらの部隊なら1つで十分。新しい別の銀河内の探索をメインに、途中の敵には花火を上げて貰おうと思ったようだ。
「ある程度、敵さんに撃たせてあげてからお返しは大サービスの総攻撃で殲滅かな。それを大佐に伝えておいて。で、あっちの惑星のなんてったっけ?ガーなんとかって王にはお宅の敵さん殲滅しちゃいましたって報告で。んで、その新銀河のほうの探索は・・・分遣隊長のアインに出発させてくれるかな」
2人同時にハモるように返事と了解を込め、力の入った返答「イェッサー!」をしたあと部屋を後にした。
その間、ずっと体の前に両手を重ねて立って待っているのはメイド達と執事たち。
皇帝、大熊鷹士の一言が無いと決して動かずに居る従順さを持っているのである。
1度はこの堅苦しさを無くそうと思ったようだが、古えの頃からの王や重鎮に対する敬意の習慣は止められないという意見が大半を占めていた。他国でも同じ習慣があったようだが、これじゃ本当の昔の某諸国みたいだと思ったので、少しずつ改善していった結果、同室内での意見交換が可能となったぐらいであった。それまでは王に近付けるのは側近の1人か2人だったのである。
この夢の中で眠りに着くと、現実世界の鷹士に戻り、起きると現世での自分を認識する。
まさか、夢の中の世界が現実と繋がっているとは、この時点では思いもしないのである。




