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14~

   14


 地球側にワープゲート設置をするには最初の1回目で機材を導入しなければ始まらない。

その為の今回の訪問時の交渉も含まれていたのだ。


だがゲート設置は地球側にまだ伝えて居ないので拠点の設営だけに留まっているようなもの。

その拠点が地球側でも特区に成りうるので、気軽に出入りは出来なくする予定である。

次の交渉ではそのことを含める会合になるであろう。


鷹士はとりあえず一旦地球に戻って現況を把握しておきたいようだ。

夜まで待てそうにないのでこの日中に意識を集中して試してみようと思いつつ、他の者達にも知っておいて欲しいと思っていた。

着替えも終わり、テーブルに着いて朝食を食す鷹士。

「ふがげ・・・んごーぬ、んごーおごっでんがげほ・・・」

口に物を頬張りながら喋れば、何言ってんのか解らないのを知りながら行うユーモアさを披露する。

ソフィは真面目に「はっ?・・えっ?・・な、なんと仰ってございますか?」であったが、マリアンヌは肩を窄めて笑いを堪えていた。


目の合図で良い反応だとマリアンヌに伝えつつ、飲み込んだあとに「それで、向こうに行ってみようと思ってんだけどって言いたかったんだ」と言い換えて地球に飛んで現況把握してきたいと伝える。

ソフィはすぐに解ったようだが、真横に居たマリアンヌはまだ知らぬ為に小声で「艦隊の準備をしたほうが良いですか?」とソフィに聞くが、手で待ての仕草が出る。

「陛下、いつ頃戻られる予定でいらっしゃいますか?現状況においては、どちらも建設的ではありますが」

「ん?すぐだよ。向こうに行って試したいこともあるし、向こうの仲間にも正直に言っておきたいし・・・って、全く信じてもらえんだろうけどさ。まぁ・・・ん~時間差あるから何とも言えんが・・明日には戻る・・・と思う」


そして食事も終わり片付けていくメイド達がドアを閉めた。

「ソフィはもう知ってるからいいけど、少尉は知らんから言うぞ。・・んぉっほん。俺ひとりで地球に飛ぶ。しかもここからだ。1度行ってハッキリした風景とかが思い出せれば行ける・・・はず。最初はビックリするだろうけど、慣れてくれ」

と言った直後に瞑想に入るように目を閉じてジッとしている鷹士。

何を言っていたのか理解出来ずにいたマリアンヌであったが、目の間で皇帝の姿が透けていき光に包まれていくようにその場から消えた。


ビックリした表情のまま片手を前に差し出した体勢で固まっていたマリアンヌ。

「こういうことだ、少尉」と一言だけ言って任務に入る為に移動を開始するソフィ。

訳も分からず着いて行くしかない少尉であった。


地球側の自室に無事に着いた鷹士であるが、風景は意識していたが自分の着ている服のことを忘れていたようで、向こうのままであった。

「ありゃ、これは着替えないとな。えぇ~っと・・・まぁ、スーツでいいか。あのジャケットとかはボロボロになって捨てちったし。ん?留守電が・・当たり前か、って、おいっ!なんだこの件数は」

充電器に刺したままのスマートフォンの着信履歴には【中村】が連なっていた。

しかもスクロールしても続いていた。数十秒置きに着信してるような偉業でありながら留守電には【んもぉっ!】や【なんで?】とかの一言のみであった。

意外と数ある留守電に録音された一言を繋げると文章になるのかと思ったが、そうでもなかった。

「ん~~~こいつは見た目と違ってストーカー気質と束縛気質があるのかも」と口に出してしまった。


着替えを済まし、腕時計も嵌める。

時間はゆうに遅刻間違いなしであるが落ち着いていた鷹士。

もう一方の自宅にある電話機にも着信があり、見てみるとやはり【中村】のオンパレード。

逆にも思った鷹士は「なんだぁ?そんなに俺が恋しいのか?全くもう中村め」とか言うが、こちらでは2日目と思っていたのは鷹士のみであった。

向こうでは確かに2日経ち、交渉も2回行った。

だが、無礼講の日から明けているのを忘れてはいけない。


3日間の無断欠勤になってるかもと焦りを感じたが、一瞬であった。

いつもと違う人の流れで、電車内も混雑はあってもギューギュー詰めではない。

会社に着くと、普通に挨拶してくる社員も居る。

だが、目が赤く輝くような、髪が逆立っているような風貌で近付いて来る気配を感じた鷹士。

「管理官っ!」この一言に思わず「はいっ!」と答えてしまった。


振り返ると心配してた表情ではなく、やはり怒りが篭った表情の【中村】が居た。

「一体、どこに行ってたんですか?一応、上には外回りの挨拶って言っておきましたけど、3日間ですよ。普通、3日も掛けますか?何度、電話したと思ってます?業務は滞りなく進んでいますが、あの宇宙船のせいで新規のお客様が下請けに殺到してるんですから、それに・・」

バルカン砲で耳に連射されてるような気分で、風圧さえ感じる勢いでマシンガントークを繰り広げる中村にタジタジになる鷹士であった。


鼻息が荒く肩も上下してるような中村に返した言葉は。

「だから、この間も言ったと思うけど、ちょっと隣の銀河に行ってたんだって。で、こっちに拠点を造ることになってだな。部下に交渉を任せて・・・あ、やっぱり信じてないようだね」

「当たり前です!今はそんな妄想的な冗談に付き合ってる場合ではないんですから」

と返されてしまうが、業務第一な中村は仕事に戻るようだ。


こうなると、どうしようもないが、別の誰かを向こうから連れて来て証明させるかと思った。

だが、資材搬入もまだ行われていない。3回目の交渉もまだである。

「んんん~~・・・まっ、いっか」

楽観的になった鷹士は、いずれは解ることだと括った。

その後、社長にも連絡を入れるが、話は聞いてくれたが笑われ「あはははっ、そうかそうか。休暇が欲しかったのか、それならそうと言ってくれれば良かったのに。君は十分頑張ってくれているし、新しく配属した2人も良く指導してくれてるみたいで安心していたんだ。うんうん、解った。暫く休養だな、ユックリ休んできなさい」と、何か上から被ささたような気分であったが、休暇扱いにしてくれるようで良かったと思った。


昼食時になり、中村と鈴木を呼び珍しく一緒に昼食を取ることになり、鷹士の奢りということで素直に着いて来たが、その言葉を耳に挟んだ係長の田村も同席することになってしまう。

この時に明日から休暇を社長に貰ったからあとは頼むと自然の流れのように放つ鷹士。

「はっ?」、「えっ?」、「これ旨いっすよ」とそれぞれの返答が帰ってくるが、単に奢り飯が旨くて仕方がないのが若干1名であった。

後頭部を打たれる田村は金髪上司である鈴木にやられた。


一応、何かの場合の対応を教えていくが、一部、業務に関係なさそうなのも含まれていた。

それは「でな、見たことないような軍服姿の者が来ても驚かずにお客様として丁重に扱ってほしいんだ」であった。

もう、誰かを連れて証明させないと絶対に信じない奴らと思っているようだ。

若干1名はコスプレの人が来るかもと思ってるだけの平和な野郎である。


午後も普通に業務に入り、中村と鈴木は対応策について確認を取ったり、報告書の電子データを渡しに来たりする。

何事もなく業務も終了時刻になり、他の社員は帰りにどこに寄るかの相談などをしながら帰路に着いていく。

2度も宇宙船の飛来があったにも関わらず、何とも平和な日常が繰り広げられていた。


最後まで残っていた鷹士に、帰りの挨拶と疑問を投げ掛けにきたのは中村であった。

やはり全く信じれずに休暇というのも、女でも出来て旅行にでも行くんじゃないかと変な想像をして口に出してしまう。違ってはいないが、鷹士の脳内に浮かんだのは赤髪ドS級のソフィ、青髪のマリー中佐、マリアンヌ少尉であった。

唐突に中村に聴いていくのは鷹士。「にゃかむりゃ・・・んっ、咬んでしもた。あー、あ、あー、んぉっほん。中村・・・宇宙旅行してみたいか?」

この問いに中村は「はぁ~ぁ?してみないかではなく、してみたいかですか?現実での話じゃなく妄想と一緒にされてませんか?大丈夫ですか?」と心配されてしまう。


それならば次の中村の休日の時に来て見るといいと言い、日本の拠点設営地の場所を教え、その現場の者には伝えておくから入口でIDを提示しろと言う鷹士は冗談ではない真剣さがあった。

「はぁ、まぁ行くだけなら良いんですけど。何があるんです?宇宙旅行って膨大な費用が掛かるんじゃありませんか?きょっ、興味はありますけど・・そんな」

と、マシンガントークを繰り広げる中村が落ち着きを無くしていた。


そんな彼女に伝えたから宜しくと言って鷹士は普通に帰っていく。

1人残った中村は「あら?・・えっ?ちょっ・・・戸締り確認、私ですかぁ~?んもぉ~」

警備のひとりに挨拶をして中村も早足で帰路に着くが、もう鷹士の姿はなかった。

この会社が入っているビルには警備員は1階に1人のみ。

あとはセンサーや動き回れるロボットが警備に回っていた。


自宅に帰る前に地球側の楽しみを満喫しておこうと、普段は行かずにいたカウンターで食す寿司屋で夕飯とした鷹士。この時代、殆どが養殖となってしまっていたが味は良いようだ。続いているのは時価という表記であるが、以前のように高額ではないので安心して食べれるのであった。

それでも気持ちは満足に値するが、腹6分目で止めた。


別の店でデザートを買う予定のようで、シュークリーム、エクレア、ショートケーキを購入し、ニヤニヤしながら自宅に向かいつつ、また別の店が目に入り、思わず入店。

出て来た時に運悪くなのか、金髪ショートの鈴木と田村にバッタリ会ってしまいお互いに「あっ!」と声を上げてしまう。

2人はもう付き合っているのかと思うほどであったが、鷹士のほうこそ似合わない店から出て来たのを驚く2人。

ピタッとくっついていたようだが、一瞬で離れた2人を見て「おいおい、今更そんな態度取ったって、二ヒヒヒッ。別に良いのに」と言う鷹士に「大熊さんこそ、いや、管理官こそそんな店で何をお買いになられたんです?アクセですか?あ”~、女の人に送るんですか?」と、返されてしまう。


見るからにケーキショップの箱とファンシーな店の小さな袋を持った、平凡に見えるサラリーマンには不適合のようだ。

一応、誤魔化しながらも本当のことを言ってその場を去る鷹士。

アクセサリーというか向こうの3匹の猫に着ける首輪を買っていたのだ。

その猫3匹の名は、白=シロスケ・茶トラ=チャッキー・白黒=アーバンで、色がモチーフだらけであった。


そして試したいこととは、こういう物体も一緒に移動出来るかであったのだ。

向こうから来る際に軍服のままであったから帰りも行けるはずと単純に思ったようである。

ケーキ類も持って行けるかと思っていたようだが、自室内で諸共食してしまう。

猫の首輪にはホーク所有と紋章が掘られているが、店の人は不思議そうであった。

その場ですぐに出来上がるレーザー彫刻であるが、よくあるいくら以上お買い上げで無料となるものであった。


自室でケーキを食い「あ~旨かったぁ~」と、ノンビリして風呂にも入るが、圧倒的な狭さで向こうの無駄に広い欲情とは比べ物にもならない。足を伸ばせない風呂釜がまだある時代を憎むが、家賃の安さで選んだ自分が悪いのである。

寝巻きに着替えてしまった自分を責め、着て来た軍服に腕を通し、下も同じようにし、忘れないようにアクセの入った袋を大事に胸元で持ち、意識を集中させていく。


ものの数秒後に、目を開けると皇帝室に到着。

大事に持ったアクセ入りの袋もあるので喜びと共に万歳をしてしまう。

そこへ不思議な光景を見たであろう猫3匹が居たが、鷹士を見て「ニャァ~」と安心したようで、それぞれの首元に首輪を着けていく。最初は取ろうと後ろ足で蹴るようにする仕草をしていたが、鷹士が抱き上げそれぞれ撫でていると喉を鳴らしていた。


毎度のことと思って、もう1回就寝に入る鷹士であった。

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