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皇帝室の前まで来て「あ、そういえば・・・」と、言う鷹士。
夜は就寝で地球に戻っていたので気にもしていなかったが、こちらで風呂に入った試しもなかったと気付く。
マリアンヌに聞くと専用の浴場がありますというので、入りたいというと早速、メイドに指示し浴場へ案内されていく。
だが、何故か4人ものメイドが一緒に着いて来るではないか。
さすがに脱衣所にまではと思ったが、そんな脱衣所は存在せず、専用だけあってだだっ広い浴場が目の前に広がっていた。
後ろで失礼しますという声が聞こえた時にはもう、メイド4人は某国の民族衣装の深いスリットの入ったドレスに形状が似ているが、明らかに薄く、丈も短く、両サイドはスリットどころの騒ぎではなく無いに等しく、前後のみに布が掛けられているような際ど過ぎる衣装であった。
浴場だけに欲情しそうであるが、指定されているように用意されている椅子に座ると、その容姿の4人のメイドが鷹士の両脇に別れ体の隅々まで洗浄を施していく。
体は洗浄されていくが、鷹士の心の中は理性との戦いの戦場であった。
大事な部分までは際どいとこまで来たが、そこは自分で洗った鷹士。
湯の張られた場に浸かり疲れを癒す。その間、メイド達は待っていた。
『風呂というより池か?これは』と思ってしまうほど広い。
その風呂から出ると次は全身マッサージになり、鷹士は最高の気分。
その後、浴場に向かう時よりも早くドア1枚で皇帝室に戻った。
「ん?もうここか。まぁいいや」と相変わらず深くは考えず現状を受け入れる。
就寝に入ると、珍しくイビキを掻いて大文字で寝ていく鷹士。
相当、疲れが溜まっていたようだが精神的な面が多いようだ。
意識せずに寝ていたので地球に飛ばされることはないようである。
次の日の計画の方が大事のようだ。
その頃、地球側の鷹士の補佐役である中村奈々美はシッカリと課長職をこなしていた。
連絡が取れない鷹士のスマホや自宅の電話には留守電が積もりに積もっていた。
外壁担当のほうのクリスティ鈴木も上司という役職を上手くこなし、係長の田村洋次は犬のように働いていた。その他の部下も効率よく仕事を回し、成績も上々。
管理官である鷹士が不在の2日目に突入していたが、業務上は問題は起きていない。
問題が起きているのは世間であり、大々的に報道されている宇宙船接近遭遇と、頼りなく情けない姿を披露してしまった代表と閣僚への批判が大量発生しているくらいだ。
他に被害も出ていない国民のほうが落ち着いて、現状を維持しているようである。
そこへ飛び込んできたニュースは他国がその宇宙船に向けて攻撃を開始したとなったが、まるで歯が立たない状況で「なぁ~にやってんだよ。あんなデカイもん浮遊させる科学があんのに敵うわけねぇだろ」という意見が大半を占めていた。
特に影響はないが、鷹士の在籍する会社はもとより親会社も下請け会社も外壁部門、並びにセキュリティ部門にも設置機器の強化を申し込むお客が居るので商売的には宇宙船万々歳であった。
ホーク側の朝。
寝起きで目を擦る鷹士がアクビをしながら周りを見ると皇帝室に居ることに気付く。
夢を見る間もなく深い眠りに憑いていたようだ。睡魔恐るべし。
何故か寝巻きは膝丈バミューダにTシャツであったが、着替えればビシッと決まる。
2日目の今日も同時刻に日本側と交渉に入るよう指示していたので、マリー少佐も準備をする。
アイン中佐の艦に攻撃が続いていたが、鑑は疎か艦内も何の変化もなく命令通り任務遂行中であった。
その攻撃をネタとしてマリー少佐に持たせ、交渉を有利に持っていく。
集団的意識の協調はまだないのが日本であるが、役人のお堅い頭のおかげもある。
戦闘経験も訓練しかない隊員が訳も分からない物体に砲撃はしない、というより出来ない。
何もせずに消えていったのだから撃ち様もないのだ。
昨日と同時刻に現れたマリー少佐の艦に対し、また同じ面子の者が空港の滑走路に佇んでいた。
同じように光に包まれ艦内に入り、交渉の場に入る。
先に述べたのはマリー少佐のほうで、何か協力になれることはないかと訪ねる。
その場で予想外の展開になったようで小声で話し合う代表と閣僚達。
他国の攻撃も知っているが、それを突っ込まずにいるマリーが協力を申し出たからだ。
ここで、いや結構ですなんて言おうものなら、攻撃された事へ対して報復されかねないと思ったようだ。当然、優れた科学技術を欲しているが、出来ることなら友好関係を結びたい。
困っていることは沢山あれど、何を言ったら協力してくれるのだろうか。
「あの・・・では、技術的な協力をお願いしても宜しいでしょうか?」
と始まり、様々な提供を求めてくる日本側代表達。
マリーは技術提供でしたらと小型無人偵察機を1機差し上げますと言い、ご自由にお調べくださいと。浮遊の仕組みや燃料に動力源なども知りたい技術者も同席してるようで喜ぶ表情を浮かべる。
更に製造をしたい場合は拠点が必要になると申し出て、ここで他国の攻撃のことを取り上げる。
すると、自国とは一切関係ありませんと保身に走る日本代表達。
「そうなんですか。我々にとっては地球人からの攻撃と取っていますので、交渉中止にしても構わないのです。縁がなかったということで、この先に何かこの星にあっても我々は関与しません。ということで宜しいんですね?」
強気に出たマリーに対し、対抗出来ることがない日本は渋々、拠点として提供をするしかないように仕向けられた。同時に他国の攻撃には強く抗議する約束をして、拠点になる場所の詳細を詰める。
資材投入も兼ねて宇宙空間にもコロニーを持ってくる用意があることも伝え、拠点での建設は全てこちらで行い、日本側には一切手を煩わせませんと伝える。
そして日本側が折れた。自衛隊の敷地の一角に拠点を作ってもらい技術提供をしてもらうことを承諾。まずはそこから始めましょうとお互いに握手をしようと思ったが、その挨拶を知らないフリでいるマリー側の軍服の男が前に出て手をかざし防御する。
「あっ!ししし、失礼致しました!あ、あ、あ、あの、地球での挨拶であ・く・しゅ、というものでお互いの手を握り合う行為なんです、はい」
慌てて説明をしていく閣僚のひとりであるが、代表は怖気づいていた。
一触即発の雰囲気であったが、何とか無事に地上に降ろされた代表達。
すぐに防衛省や関係各所に連絡を入れ、拠点候補地の整備に取り掛かる。
それでも確保まで何日掛かる事やらである。
マリー少佐の艦はまた上空に消え、待機位置に戻り、本部へ報告する。
交渉は思ったよりも時間が掛かったようで2時間は掛かっていた。
マリー自身も思っていたのは、やはり決断も進行も遅いということ。
皇帝である鷹士から聴いていたので覚悟はしていたが、本当であったのだ。
その頃、アイン中佐の艦への攻撃は諦めたのか止んでいた。
ほぼ全世界から批判を浴びたようで、発言力も驚愕的に下がったようだ。
報告を受けた本部はコロニーの建造を急ぎ、拠点に配置する建造物も部品単位で造る。
地球側の常識では既に来ている艦隊の中にもう用意してあるのではと思っている。
だが、ホーク陣営のほうでの常識ではない。光の速度を超えられる技術があるのだから。
時空間すら超越してしまい、まるで宇宙空間を折り紙のようにしてジャバラにし、出発点と目的地を近付けられるワープが出来るのである。
マリー少佐は忘れる前に部下に命令し、小型無人偵察機の1機を地上に降ろすようにした。
全方位カメラも備わるので地上での作業などが全て筒抜けで入ってくるのである。
小型であっても全長50mの物体が飛来してきてヘリコプターのように垂直で着陸。
念の為なのか自衛隊がユックリと近付いて来るのが見えていた。
誰も乗っていないのにコックピットを探しているようだ。
車輪もないのに宙に浮いた感じで地上から僅かに離れている。
その物体を警戒し、その状態で数時間が過ぎていく。
何とも我慢強い種族と思ったのはマリー少佐のほうである。
他国からはウチには来ないのかという問いが日本国へ。
技術提供が日本だけというのは納得出来ないというものもあった。
強行的に奪いたい大国もあるが、上空には宇宙艦隊が潜んでいると思っているので下手に手は出せずにいる。
それでも、見えないのをいい事に情報だけでも盗みたい超大国もいるようだ。
そんな状況下で密かに活動しているのはホーク陣営の放ったアンドロイド達である。
国民と政府では意見が全く違うことが多いようで、別行動にも値していた。
本部に居る鷹士に報告が次々とやって来る。
「ん~、やっぱりそうなんだね。こっちの国はそうでもなさそう。ん?何これ。・・・崇拝?アハハハハッ!おいおい、何で崇拝されちゃうの俺ら。このアンドロちゃん、どこに投下したんだ?」
考えられることや、笑えそうな状況、また攻撃に転じそうなとこまで多種多様であった。
「あっ、そうだ。これで上手くいって軌道に乗ったら偉業に値させてマリー少佐を昇進させよう。んで、アイン中佐にも交渉させてみるか。・・・どの国で交渉させるかが問題だな。あの性格だし」
と、自軍のほうの悩みに入っていく鷹士である。
アイン中佐が居る場を他に変わらせ、穏便にことが運びそうな国の上空に移動させた。
攻撃をした国の上空から消えたので、その攻撃を指示した者は思い上がっていた。
「ケッ!逃げやがったのか?反撃も出来ねぇ臆病もんだったか」
まさにアホである。
だが、攻撃中止命令が大統領から直で打診され、撤退を余儀なくされる。
それを見越したかのようにまた現れる船体に、口からの攻撃だけは止めないアホ士官であった。
日本との交渉は上手くいったようで、様子見に入っているが他国の場合はどうだろうか。
アイン中佐も同じ内容を持って、他国である英国に出向く。
こちらでも似た光景が見て取れるが、日本と違い女王の参上であった。
アインは武器使用術が有能であり少ない射撃で多くの成果を生む。
複数の敵が一直線上に並んだ時に本領発揮したりそうなるよう仕向けるのも得意。
一見、穏やかな性格だが、戦闘時には頼りになるものだ。
そして英国の上空から地上に降りて行くアインの艦である。




