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技術部に伝達されたアンドロイドの仕様依頼を見た技術主任のアンバー。
「ほぉ~、そういうことね。アイアイサー。・・・ポチッとな」
落ち着いているようだが、話す言葉はどうも不安が残る。
だが、腕は確かで頭脳明晰は言うまでもない。
オートメーションで次々に完成していくアンドロイド。
皮膚から受ける感触すら人間と同様に感じられるよう設計されている。
食べ物も人間と同様に食せるが、栄養は皮膚にだけいき、あとは排泄。
体は合成金属のようだが軽くて丈夫。唯一の難点はレントゲンを遮断してしまうくらい。
何も食さずとも動けるよう、艦に組み込んでいるパワーコアの小型版が組んである。
更に非常時等は膨大な力も発揮出来るので、鋼鉄製のドアも障子を開けるかの如くである。
重量が軽い分、足の裏と掌にもアンカーを装備し、足場の固定や建物の壁でもよじ登れる。
完成されたアンドロイドは各自が命令を受信し、自分で衣装替えもして艦に乗り込んでいく。
性格も大らかからユーモア満載、エロに興味津々、喧嘩っ早い印象まで男女共に取り揃えているが、相手を殺すことは決してないように設定されていて、ホーク陣営のデータもインプット済み。
全てが乗艦されるとアイン中佐は出航命令を出す。
同時にマリー少佐も出航し、宇宙圏に着くと早速ワープ開始。
先に待機している艦隊にも命令が届き、通信艦の役割を果たす艦も新たな配置に着く。
新人だらけの艦も交代で、後退しながら命令された配置に着いて行く。
アインとマリーが所定の位置に着くと、作戦開始の命令がソフィ司令官から一斉に発せられた。
アイン中佐の艦隊が今度は本物で上空に飛来し、日本の上空にはマリー少佐の艦隊が陣取りステルスモードで待機。
案の定、空港の敷地内の端に対空砲やらなんやらを装備した車両が居た。
アイン側は人気のない場所をそれぞれ選び、アンドロイドをライティング投下。
地上に着いたアンドロイド達は何事もないかの如く溶け込むようにして歩いていく。
交渉の場は設けられているようだが、空港内に居る自衛隊は緊張感がなく笑顔で話している者まで居た。まさか上空から全て見られているとは思ってもいないであろう。
ステルスモードで待機している巨大戦艦が真上にいるとは思いもせずに、黒い車が近付いて来る。
どうやら、交渉の場に現れる代表たちのようだ。
「いつ来るんだ?向こうは」というセリフを吐いているのも聞こえている。
そして次の瞬間、ステルスモードを解除し全体を表す艦体を見て驚きを隠せない、代表と自衛隊員。
「デカッ!」・「ぬはっ!」・「なっ、なんじゃこりゃぁーっ」と、一斉に声を張り上げる。
そして音声で代表に命じ、サーチライトで照らした部分に移動を願った。
「その明かりのもとへ居らしてください。交渉テーブルに労れる方は何人様ですか?」
何故か日本の代表と着いて来た閣僚は指で人数を表した。
言われるがままに光の下へ移動していく代表達。
その直後、別の光が直上から降り注ぎ眩しさで見えなくなるが、代表たちの姿は消えていた。
警備をしていた隊員達はイリュージョンマジックでも見たかのように唖然としている。
そして代表達は艦内に着いて立ち尽くしていた。
初めての宇宙船内を見学したい気持ちはあれど、同じ人間の容姿をしたものが手招きで案内をしていく。
案内された場には如何にもなマントを羽織ったマリー少佐が居た。
その横に2名ずつの男が軍服姿で立つ。
外国の軍服にも似ているがボタンはなくファスナーでもないが前開きタイプ。
左胸部に階級やホーク陣営の紋章があり、右側はシンプルで何も付けていない。
通常はネームが入るが、この時は全員取っていた。
最初に何をどう話したら良いのか解らない日本の代表達。
しかも目の前にいるのは、どう見ても自分らの娘くらいにしか見えない若い女の子。
だが、司令官らしい格好をし、男の軍人を従えているようにも見え、まさに司令官。
マリー少佐の方から話し始めることにした。
「こんにちは。で、合っていますか?私はマリーと言います。この艦の司令官です」
と流暢な日本語を話し、これだけで驚かれていた。
どこから来て何をしに来たのかを問われ、答えていくマリー少佐。
挨拶に参っただけというのを信じていない日本の代表達は、我慢できずに侵略という言葉を口にしてしまう。無言で立ったままの男の軍人が威圧感を与えているようだが、マリー少佐は微笑んで侵略はしませんと答え、次の質問でもある要望にも答える。
「攻撃もしませんし占領もしません。ここはあなた達の星ですから。近くに来たのでご挨拶に伺っただけですが、変に捉えられてしまったのか、何も返答がなかったので交渉の場を設けさせていただきましたのが現在です」
本当に攻撃も侵略もないのかと再度の問いがあれど「ありません」の一言で済ましていくマリー少佐。
逆にマリー少佐からの問いに困った日本の代表達。
「こちらからの要望は、暫く上空にて滞在させて頂きたく申し上げます」であった。
それに対し日本側代表は「いや、このままは困る。こ、こんなデカいのが滞在だなんて」と言う代表を黙らせるようにして別の者の意見が出る。
「いや、その。・・・んぉっほん。失礼。えぇ~、と、突然現れたように見えましたので光学迷彩?か何か使用されてるようで、滞在中は・・・その・・・観光目的でしょうか?」
もう、外国人扱いにされてるようである。
「申し遅れましたが、仲間も居まして今は地球の周りに待機しています。様子をご覧になりますか?」
と言ったマリー少佐が真横に手をかざして映像モニターを出し、上空からの世界各国の主要都市の様子を見せていく。昼のとこもあれば夜のとこもありライブである証拠であった。
この時点でも科学技術力の違いを見せられた日本の代表達は驚きの表情のまま固まっていた。
全ての様子をホーク星の本部がある皇帝室で見ているのは鷹士とソフィ。
「いい感じじゃないか、マリー少佐。なぁ、そう思わないか?」
ソフィも微笑みながら見て、皇帝に「はい、そう思います」と答える。
当然、科学力が欲しい代表達であるが、挨拶だけで来た者に寄越せとは言いづらい。
グッと我慢をし、今回の交渉ならぬ会合はお開きになることに。
最後に確かめたのは滞在場所であったが、大気圏外であると答えたのである。
ほんの少しであるが安心をした代表達であったが、完全に去るわけでないのも確信していた。
そしてまた案内され、指定された場に立ち地上に降ろされる代表達。
驚きや情けない表情をした代表達は全世界にライブ中継されていたのである。
緊張感の解けたマリー少佐はダルーンと体をソファに預けるようにして休んだ。
それも見ていた鷹士は拍手しながらマリー少佐を称えていた。
「あっはっはっはっ。解る解る。良くやった。休んでいいぞ」
音声だけであったが皇帝の声が聞こえた瞬間に立ち上がり「はっ!光栄です。ありがとうございます」と直立にまたなっていた。
初回はこんなものであろうと思い、2回目を楽しみにしつつ、もう一方の計画の検分の報告を見ていく。
太陽系内最大の惑星、木星では大分時間を要するようで、土星に関しても同様で海王星が有力と見ていたが、もっと地球に近い火星なら粒子放散ミサイルを数発撃ち込み、地底にも別のパワーコアを撃ち込むことによって環境は激変し地球に近い状態になるとの概算が報告されるが、既に地球の探査機が複数入っている。
「ん~~、ってことは近くにコロニー持ってったほうが早いか」
ホーク銀河に現存するコロニーは自転機能も重力反転も備わっているので、どこへでも行かせられるが移動速度は遅い。と言っても地球側のシャトルと同程度の速度は出せるのである。
そもそも地球の常識が全く通用しない世界であるが、最初の頃から鷹士は「こういうものか」の一言で様子見の結果を踏まえ、理解してしまい慣れるしかないと。
時間が出来たので技術部にも顔を出し、新たな地上用の持って撃つタイプの重火器の試作を真っ先に試したいと、ワクワクして技術主任に頼んだ。皇帝の頼みなので断れるはずがないが、操作法などを説明しているとドォーゥーン!「おっほぉーっ!スゲェ~ッ!」と、最後まで聞かずに放射して喜びの笑顔を浮かべていた鷹士。的になっている場は壊滅的損傷をしていた。更に照準に自動追尾も付いているので動く的にも効果的。親指が当たるとこにロックオン機能、あとは銃のように撃つだけの無反動砲でもある。形状はロケットランチャーに似ている。
威力を確かめ重量も申し分ない為、認識用装置を組み込んだものを頼んだ鷹士。
それは最悪、敵側に渡ったとしても自軍の者でない限り撃ても操作も出来ないようにする為であった。そこが一番、難しい作業なんですがと言いたいのは技術主任であったが、皇帝である鷹士は既に歩き始め後ろ向きで手を振っていた。
次に向かうのは食堂であった。
オヤツなプリンを2つ食しただけであったので、胃の方が「次は?まだか?メインは?」と催促してるように感じていたようだ。普段というかいつもは自室に運ばれてくるが、この時は気分が良いようで士官用食堂に顔を出す。料理を作っているのはアンドロイドであるが、プロ級である。
ドアを開けるのは、大人しくずっと着いて来ているマリアンヌ軍曹である。
中に入るとそこに居た士官達が気付き、一斉に片膝を着き礼儀を行い、立ち上がると敬礼もする。
食ってる途中の者も居て頬が膨らんだままでいた。鷹士が片手を上げると敬礼を収め直立になる。
これは例えアンドロイドでも徹底されているのだ。
そしてマリアンヌ軍曹に「奢るぞ、好きなの選んでいいよ」というジョークを飛ばす鷹士。
完全無料なのに何を奢るのかという疑問が発生するが、そのノリに付き合うマリアンヌ。
まさかの皇帝と一緒に食事なんて光栄の極みであり緊張で全身が強張りつつあった。
他の士官も同様で、それまでバカ話もしていたのに静かになってしまう。
この時、鷹士はハンバーグを食しているが何の肉かは気にしていない。
マリアンヌはピラフを可愛く少量ずつスプーンで掬って食していた。
その食事が終わるとデザートであった。
プリンのことは忘れたかのようにショートケーキ風を食す鷹士。
こちらの世界でも地球と似た食事があるのが救いでもあった。
だが、アルコール物は無いようで、他の地区に行かないとない。
別の救いを求めに来たのか、鷹士を探し回ってしまったのはソフィ。
勢いよく食堂のドアを開け、中を見渡し鷹士を見つけると真っ直ぐに向かってくる。
途中、邪魔な椅子もあったが、お構いなく突き進む。
「あ~満足ぅ~。・・・ん?あ~ソフィも食いに来たのか?」
と、物凄く余裕でいたが、マリアンヌは敬礼をし他の士官も同様であったが、ソフィは片膝を着き報告をしていく。
余裕を振っこいている場合じゃないと言いたげであるが、また地球の早とちり野郎が居たようでアイン中佐の艦にミサイルを撃ち込み、戦闘機も砲撃を始めたというが、船体に損傷は一切見られずバリア外で全て受けているとのこと。
「あ~やっぱり居たんだ、そういうの。でも反撃してないよね?・・うん、それならいい。2回目の交渉の時の良い札が出来たってものさ」
他の士官らは戦闘が始まったと聴き、一気に緊張が走ったが皇帝の余裕ぶりに安心もしていた。
戦艦に豆鉄砲を放っても無駄というのを地球側は知ることだろう。
気が済むまで撃たせるだけ撃たせてあげなさいと言い、アイン中佐にもマリー少佐にも伝えるよう指示した。
その後、ソフィは戻り、マリアンヌと鷹士は皇帝室に戻っていく。
士官全員からの見送りも敬礼である。




