食中毒に似た化学兵器
創作系お題bot様よりお題お借りいたしました
https://twitter.com/sousakukeiodaib
結婚してから何年が経ったことだろう。僕と君はすっかり枯れ果てた。もう何度目なのかわからない結婚記念日に、少し贅沢な夕食を準備した。
だけど君は気づいているかな。親密故の油断が君を変えてしまったことを。それで僕が君に嫌気がさしていることを。
風が物を削るように、水滴が岩に穴を開けるように。ゆっくりと、しかし着実に、心は蝕まれ君から離れていったんだ。
──だからもう、決着をつけよう。
上等な赤ワイン。そのグラスの縁に僕は微量の毒を塗った。症状は食中毒に似ていて、足がつきにくい。
「乾杯」
そしてさようなら。持ち上げたグラスの中で赤が鈍く光る。美味しそうに飲む君を見て、僕は微笑んだ。
「ああそうだ──」
君の一言で、僕は自分が......そんな.....。
動揺で落したグラスが割れてワインが飛び散るのと、君が倒れるのはほぼ同時だった。その顔から笑顔が消えていく様は、一瞬だったはずなのに僕の脳裏に焼き付いて離れない。
本当の君は昔からずっと変わっちゃいなかった。擦り切れ、目が霞んでいたのはこっちだったんだ。
どうか、帰ってきておくれよ.....。