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不治の病と本当の私
ある朝、体の走る激痛で目が覚めた。息が浅くなる。ひゅうと浅い呼吸を繰り返すたびに、痛みは私の体に根を張るかのように広がっていく。
なかなか起きてこない私を起こしに来た親が異変に気づき、病院に運ばれた。
曰く、この病気は治らないそうだ。症例も珍しく、緩和ケアの研究も進んでいない。色々な方法を検討するうち、どの患者も枯れ果てるように死ぬのだという。
大切な人にそのことを打ち明けた。彼はひとしきり泣いたあと、絶対に治療法を見つけるのだと息まいた。
だけど、どんどん私の容態は悪くなっていく。それに続くように、彼も疲労でやつれていった。
病床の私の手を、痩せこけた彼の手が包む。冷え切って、ひび割れて、傷ついて、いったい何をしてきたんだろう?
「ねぇ、私の最後のお願い聞いてくれるかな」
彼ははっと息を飲んだ。
「大層なことじゃないの。私のコレ。治らないじゃない。いっそのこと受け入れようって。──丸ごと愛して。今までありがとうね」
ぼろぼろと泣く彼を抱く。大丈夫、私はもう病気じゃない。少しだけ、彼より早く天国に行くだけだ。