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泥濘の中の息継ぎ
固かった地面がぬかるんで、緩んで、ずぶずぶと私を飲み込んでいくような。足掻けばあがくだけ深く、重く沈んでいく。そんな感覚。
私がいけないのだ。かけがえがないとはいえ、ただの友達だったのに。勝手にこんな感情を抱いてしまったから。
あなたを見る度胸が苦しくなる。他の子と話しているのを見ると痛く、憎くさえ思う。
──ねぇ、もっと私を見て。
そんなこと言えないから、私はこの泥濘に沈む。苦しくても、つらくても、たまに投げかけられる笑顔と未だに結ばれた友情が恋しくて、愛しくて。私は抜け出すことが出来ずにいる。
笑ってほしい。その隣にいるのが私じゃなくてもいいから。いつかいい彼氏さんは見つかるかな。......あぁ。
ぎゅっと胸が締め付けられて呼吸が出来なくなる。落ち着こう。
あの子は私に笑ってくれる。その温もりが、儚い大切な思い出が、途切れかけた私の息をそっと戻すの。