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見知らぬ手紙と見知った差出人
少し寝坊をして、慌てて教室に向かって走っていた。昨日買ったゲームが面白くてつい熱中したせいだ。
慣れた手つきで自分の靴箱を開けると、見覚えのないピンクが目に飛び込む。手に取ってみると、それは便箋だった。差出人の名前は、書いてない。
しかしそれに気を取られているだけの時間はない。何しろもうすぐチャイムが鳴るのだ。僕は乱雑に便箋をポケットにねじ込むと、急いで靴箱を後にした。
チャイムが鳴るまで秒針があと半周というところで椅子に滑り込む。やれやれと腰を下ろして思い出すのは、あのピンクの便箋。
誰からなのだろう。内容はなんだろう。好奇心から、朝の会の途中だというのにこっそりと封を切る。
──頬がかぁっと熱くなった。
初々しく、それでいてたどたどしい文で綴られた愛の言葉……ラブレターというやつだ。名前は……書いていない。
だけどわかってしまう。だってこの文字は、疑いようもなく、どうしようもなく、あいつの文字だ。
こみ上げる気持ちを噛み殺し、手紙を机の中に押し込んだ。
──どんな顔をして会えばいいんだ。