02
久しぶりのギルドだ。異世界に来た当初とは違って、今は金銭的にも余裕がある。金を稼ぐ必要はない。だが、今日は呼ばれての訪問。いわゆるご指名というやつだ。
「アイン。よく来てくれたね。これが例の依頼書だよ」馴染みの受付の女性が声をかけてきた。異世界に来てから大分日がたつ。アインという呼び名も違和感がない。むしろもともとの世界では、なんと呼ばれていたか思い出せないくらいだ。
「ありがとうセレスさん。いつになったら、ご主人と別れて、俺のところに来てくれるのかな」
「バカ言っちゃいけないよ。うちの人はあんたとは年季が違うんだ、坊やに興味はないね。それにあんたの周りにはいつも若い娘さんがいるんだから。ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと依頼を確認しな」お決まりの冗談を言い合い、封のされた羊皮紙を受け取った。
依頼の内容は、大型の魔物退治だ。正直なところ誰にでもできそうな印象だが、人に必要とされるのは悪い気がしない。依頼主は、隣の村の村長らしい。
「引き受けるよ」
「さすがだね。でもアインなら楽勝だろうさ」まだ解決してもいないのに、持ち上げすぎだ。くすぐったい気持ちを覚えながらも顔は緩んでしまう。
セレスさんと話をしていると、後ろから声をかけられた「すみません。もしかして、アインさんですか」
振り返ると、幼い少年がたっている。少し気恥ずかしそうなようすだが目をまっすぐこちらに向けていた。
「どうしたら、アインさんみたいな冒険者になれますか?」
僕は授けられた能力を駆使しているだけだが、それをこの少年にくどくど説明しても意味はないだろう。「自分を信じて、仲間を大切にすることかな」かなり月並みで中身のない言葉だろうが、そのほうが、この子も自分で考えを巡らせることができるかもしれない。
「うん。わかった!」よかった。これ以上掘り下げられたらどうしようかと思った。
「がんばれよ」そういって、頭をなでる「それじゃ、俺は魔物退治にいってくるから」
「はい!アインさんもがんばってください」
声援を背にギルドを後にした。