中毒者
物凄く暗いです
暗い話が苦手な方は逃げてください!( ´;゜;∀;゜;)
深いまどろみの中から目覚めに引き起こされるのは誰しも不快な事だ。
特に彼女はそう、広いベッドの中瞼を開けても隣には愛する人の姿は無く静寂の檻に虚しさを持て遊び、哀しみの濁流に身を預ける
(また居ない)
彼女はかさついた唇を少し噛んだ
彼好みに伸ばされた長い髪は憂い顔を隠すには丁度よく朝日からも守ってくれる、けれど寂しさから守ってくれる腕は此処には無い
どうも私達は恋人としての次のステージに進めそうもない
それの証拠に時々帰ってくる彼から甘く芳醇な女性の香りがするのだ
(きっと違う、そうじゃない、違う)
嫉妬でシーツに爪を立てる
昔はお互いの愛の言葉でこの部屋を埋め尽くしていた
飽きもせず朝から晩まで、時間が許す限りあの頃は求め合っていた
私は必要とされていた
(だけど今は?)
ガチャリと音がした
「いるか?」
彼の声だ
「うん、お帰り」
私を見つけてほっとした表情にする彼、嘘でも凄く嬉しいだから彼に聞きたい沢山の疑問も飲み下して微笑む
「来るの遅くなってごめんな」
「ううん、平気だよ、朝かご飯食べる?」
「ああ、ありがとう」
なんてことない会話でなんて事ない日常
キッチンに立ちご飯の支度をする
彼はネクタイを緩めながらソファに座り何処か遠くを見る
そんな何処を見てるか解らない彼の視線は私の事なんて見えていないのではないかと心の中で不安と恐怖という大きな爆弾に早変わり
爆発はいつま不発だがちょっとの刺激でドカンだ
ふと、炒めていた料理の中身を睨む
もし痺れ薬をこの中にいれたら……そしたら昔みたいに彼を朝から晩まで一人占めが出来るんじゃないか、そしたら、いつ捨てられかもしれない恐怖とおさらばだ
「熱いから気をつけてね」
「うん」
出来上がった朝食を彼の前に並べる
なんの疑いもせず彼はその料理を口に運ぶ
「美味しいよ、ありがとう」
別に毒やら痺れ薬を入れてはいない
がこの場に有ったなら入れていたかもしれない
(だから私を不安にさせないで)
心の底からの言葉だ本当はそんなことしたくない
でも彼をここに留められるとしたら
くしゃりっと彼を見るのにもう邪魔な長い髪をかき上げる、彼の事をよく目に焼き付けておきたいからだ
目の前の愛しい人の帰還で帰って来なかった事も許してしまう
例え彼が一年帰って来なくても、季節が何度私を通り過ぎていってもきっと私は彼の帰りを従順に待つ
(それが例えどれだけ惨めな事でも、構わない)
彼はどんどん私の作った料理を口に運ぶ、私は皿を洗いながらその姿を見て口元だけで歪に笑う
生き物とは快楽に酷く弱く造られている
生き物がどれに一番の快楽を感じるかはそれぞれ違うがはっきりしていることは、私にとって彼が一番の快楽の源ということだ
傍にいるだけで優しく胸が締め付けられ
微笑み一つで幸せが満ちてくる
他人が知れば愚かで恥知らずと嘆くだろう
仕方がないのだ、もうこの幸福という麻薬を前にしたら抗う気持ちさえ、ちっぽけになるのだから
こんな不健康な感情から逃れるすべを知っているのに、底なし沼に自ら足を踏み入れ溺れて欲と快楽を貪っている
否応なしに私は愚者である
彼はきっとあの甘い香りの女性との幸せな結末を望んでる
これだけ長く隣にいたら頭の中の望み位は解る、好きな味付けも、好きな色も、好きな曲も、解るのに、貴方をそれだけ強く愛してるのにそれなのに
貴方の心が手に入らない
彼を想うなら別れるか?
答えはいいえだ
そんな勿体無いことしないし、彼を失えば私はもっと醜く狂ってしまう
「おかわりあるよ?いる?」
おぞましい心を隠して彼に尋ねる
いや、もう既に何もかもが狂っているのかもしれない
彼も私もこの部屋も何もかもが
愛を求めても与えられるのは渇望ばかりで、欲は膨れ上がり、地を這いずり一人よがりな夢を見て絶望に突き落とされる
そう、私は貴方の快楽中毒者
あまり投稿した事が無いので不安です
楽しめた方がいれば幸いです




