12.開戦
投稿遅くなりすいません。
そもそも、エンダードラゴンの普段の住処は洞窟の奥深くというかなり閉鎖的な空間だ。
漏れ出した死の瘴気ーーエンダードラゴン自身の魔力が空気中に満ち、エンダードラゴンはその空気を体内に取り込むことで循環させて魔力不足を防いでいる。
けれど、今回原因はわからないが洞窟から出てきてしまった。
それもよりにもよって遮るもののなにもない平原である。
漏れ出した瘴気は空気に混ざり合って広がり体内に取り込める魔力が薄くなってしまった。
その結果の魔力不足なのだろう。
もう暫くは持つかもしれないが出現から一日と経たずにこの状況なら持ってあと一日二日といったところだ。
現地点からイーストポリティアまでは寝る間も惜しんで進んだとしてもあと五日はかかる。
どう考えても間に合わない。
戦って勝てないと分かっている以上は考えていても仕方がないのでとにかく先へ進むために足を動かす。
本来なら魔物の活発になる夜は布などで四方を覆って身を潜めるのが常識だが今回ばかりはそうも言ってられない。
早く進むのが最優先事項だ。魔物の数が減る明け方に二人ずつ二時間睡眠をとりお昼前には出発、夜通し歩き続けて再び明け方になったら睡眠をとる。
全員が平野遭遇する可能性のあるBランク程度の魔物なら瞬殺できる程度の力があることを大前提の強行突破な作戦だった。
エンダードラゴンの瘴気を抜けてから増えてきた魔物をレイン、ミラン、リアナの三人が次々と切り捨てて行く。
俺はこの即席パーティーにおいてその魔物の魔物核を回収するのが専らの仕事となっている。
最初は当然ながら俺も戦闘に参加していた。
というよりは俺が敵を一掃しながら進んでいたのだが、いかんせん体力が無さすぎた。
無詠唱無アクション低魔力で発動できる俺の魔法は発動までの時間もかなり短くスピード重視で雑魚を蹴散らすのにもそこそこ強い敵を瞬殺するのにも適してはいたが、魔法を使うたびに使用する集中力に持っていかれる体力が割に合わない。
このままではイーストポリティアにたどり着く前に俺が体力切れで倒れるのがオチだとレインに戦闘を禁止された。
どちらにせよ至近距離まで接近されれば俺は回避以外の行動を取れないわけで、エンダードラゴンの件が片付いたら体力作りを兼ねてレインに剣術でも教えてもらおうと決意する。
当然生きてどうにかなったらの話だけど。
ーーーー
大森林から4日、エンダードラゴンの出現から2日。
ひたすら前に進み続けた俺たちが足を止めたのは空が鮮やかなオレンジに染まる夕暮れ時だった。
立っていられないかと思うほどの地響きと響き渡るドラゴンの咆哮。
エンダードラゴンが"捕食期"に入ったのはもう確かめるまでもなく真実になった。
さらに足を早めて先に進もうと歩き出したのは俺とレインで、蒼白な顔でけれどエンダードラゴンを食い止めなければと歩みを止めたまま決意したのはミランとリアナ。
「まって!その、エンダードラゴンを足止めするのに、魔法使いがいない私たちじゃ多分……。」
歯切れが悪そうに俺たちを引き止めたリアナにレインがため息をついて立ち止まる。
「勝てないとわかってる戦いになんで挑もうとする?
今から全力で走ればあるいはエンダードラゴンの一番近くにいる生命体が俺たちではなくソリエの町になるかもしれない。
俺たちが逃げ切る勝算はそこにしかないだろ。
こんな話し合いをしている時間ははっきり言って無駄だ。」
そもそも俺とレインに立ち止まる理由は存在しない。
目的があって旅を始めてエンダードラゴンはその障害に成り得ないのだから、他の何を犠牲にしても逃げるのが優先だ。
レインの言葉に反論しようとするミランとリアナに俺も振り返る。
「ミラン、リアナ。
あなた達だけでも立ち止まってエンダードラゴンの相手をする、なんて馬鹿な真似はやめてくださいね?
俺たちの位置に近い位置のあなた達が目をつけられたらあなた達が死んだ後狙われるのは俺たちになる。
まさか、ソリエの町の人間は守る代わりに俺たちに犠牲なれなんてことは言わないでしょう?
もしそんなことを考えているのでしたらあなた達の正義はとんだ自己満足の押し付けでしかない。」
ソリエの町は小さい所だが100人以上の人間が生きる町だ。4人の犠牲で守れるなら守るべきだというのは間違った正義ではないのだろう。
けど、俺はせっかく生まれ変わった命を5才で捨てるつもりはない。
俺の言葉に詰まったリアナを後ろに下がらせながらミランが咎めるように言う。
「お前たちは冒険者だろう?
戦える者が戦えない者を守るのは当然の義務だ。」
強い口調で言い放ったミランにレインが吐き捨てるように答える。
レインは今にも前へ走り出しそうな様子で、不毛な話し合いに時間が惜しいのだろう。
「冒険者は自分の夢や望みのために命を賭ける職業だ。
お前ら騎士みたいに自分以外の何かのために命を使えるほど崇高な意志は持ってない。
そもそも、俺にとって冒険者は副業でしかないしハークスはまだ冒険者ですらない。
戦えるから死の道を選ばなきゃいけないなんてそんな理不尽はないだろ。」
レインの指先がイライラを表すように組んだ腕を叩いている。
ミランに押しのけられていたリアナが再びミランを押しのけるように前をでて訴えるように言う。
「レインやハークスの言い分が正しいのは分かるわ。
別に騎士でもないあなた達に命をかけて人を守る義務はないし、死にたくないなんて当然の感情だって。
けど、人を助けるのに正しいとかそういうの関係ないでしょう!」
途中まで冷静を装うとして結局最後は殆ど叫ぶ形になる。
おそらくリアナにはレインに何故伝わらないのか理解できていないのだ。
人を無条件で助けるのが彼女の常識でその為に命をかけるのは当然のことで根本的な価値観の違いが理解できない。
レインとリアナの言い合いは全く終着点が見えてこない。
こうなったら無理やりリアナとミランを引きずっていこうかとカバンからロープを引っ張り出した所で、俺は絶望的な事態に動きを止めた。
ゴオッと風を切って巨大な何かが迫ってくる音が聞こえる。
それはドンドンと大きくなって次第に迫ってくる何かが視認できるほどになる。
ここでこのまま言い合いをして決着がついた所でどのみち既に手遅れだ。
まさか大森林から出発して4日目でこんな事態になるとはおもってもいなかった。
全く幸運とは一体何だったのか。
思わずため息が溢れるがとにかく先手必勝だ。
「天は審判を下した。
何が悪で何が善か。
それは天によって定められ、世の理を支配する。
我は天に求める。
我が敵を撃つ何にも負けぬ強固な力を。
我は天に欲する。
我が正義を貫く悪を裁く確固たる力を。
我が意思は天の意思である。
故に、これは天から下される裁きである。
"断罪の落雷"」
バチバチと遠くの空が電気を纏う黒雲に包まれていく。
ビーストオウルのときよりずっと大規模に広がった雷雲は詠唱と共に段々と大きくなる点の上で凝縮されていく。
極一点に集中した電撃が俺の詠唱が終わるのと同時に小さな迫る点に向かって放たれ、轟音を響かせながら辺り一帯を光に変えた。
言い合いをしていたレインとリアナ、ミランが突然詠唱を始めた俺に向けていた怪訝な表情を雷鳴と雷光に驚いたように空を仰ぎみる。
収まった光を突き抜けるようにしてとうとう姿形がはっきりわかるようになったエンダードラゴンが出現した。
リアナのステータスです。
ーリアナー
Lv.32
職業:騎士、冒険者
クラス:剣士(片手剣)
称号:「蒼穹の騎士団」第三隊隊員
加護:剣聖の栄光の余
属性:火
適性:剣術
天職:聖騎士
種族:人間
ステータス:
体力 1200
魔力 83
生命力 2300
能力 1500
知力 32




