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10.フルーラビット

ハッキリ言おう。


レインは史上最強の存在である。


なにが、とは当然ながら料理の腕が、である。

兎に酷似したフルーラビットなる魔物はBランクのそこそこ強い魔物だ。

僅か50cm程度の小さな体でとんでもない機動力を誇る厄介さこそが、大した生命力も防御力も持たないフルーラビットを高難易度ダンジョンや僻地でもない通常フィールドに置いて最強のBランク足らしめる要因である。

彼らはその小さな体に一本のツノを持ち、目にも留まらぬ速さで獲物を一撃で貫く。

力が強い魔物ではなく、けれどその攻撃力にはとんでもない"速度"が過剰され大抵の魔物や冒険者では歯が立たない。

さらに言えば、こちらからの攻撃はやすやすと避けられカスリもしない。

逃げようにもフルーラビットの速度を抜けられる存在などそうそういないわけで、Cランク以下の冒険者からすれば遭遇することが絶望的事態であり、Bランクの冒険者ですら出来れば遭遇は避けたいと考える。

詰まる所フルーラビットはその速度を保持するためにすべての筋肉を、エネルギーを、その二本の後ろ足に凝縮しているのである。

故に、足は固くとてもじゃないが切断すらかなわないが他の部位は極上の脂肪となっている。

ただでさえ美味しい食材であると名高い(これは本の知識だが)フルーラビットの肉であるが、レインに出された夕食を食べ、俺は衝撃を受けた。

いや、衝撃なんてものではない。

もはやこれは常識の革新だろう。


一口目で溢れ出る肉汁が口の中を蹂躙し、程よい塩分がそれを追随して追いつき、ついで甘めのソースがフルーラビットの肉の旨味と塩分とを一纏めにして舌に絡みつく。


食べたことのない美味しさだ。

いや、今までの美味しさだと思っていたあの味はもしかすると不味かったのかもしれない。

きっとそうに違いない。


レインが料理がうまいなど想定外だし、魔物を食べるとか獣くさい臭いがするんじゃないだろうかと考えていたがそれは杞憂に終わった。

他にも持ってきていた僅かな食材で作られたサラダや果物を使ったデザートまである。


"食"とは俺にとって最大の生命活動であり最優先事項である。

これは珍しく前世からの性格というわけではなく、けれどおそらく心のどこかで餓死というトラウマに対する恐怖心から来ているのだろうと思う。


ようはハークス・ストラトフルとして生まれ変わってから俺は、食に傾倒するようになったのだ。

そして目の前には自身の理解を超えた美味しさを持つ食べ物。

当然夢中になって食べた。


80m先の声を聞き分けた俺の聴力は完全に外界をシャットアウトし、事態が動くまでなに一つ気がつかなかった。


唐突に、剣を抜き放ったレインが真っ直ぐに剣を構えるのと黒い布を突き破って数匹のフルーラビットが飛び込んでくるのは同時だった。


一凪に剣を振り抜きレインが2匹のフルーラビットを同時に片付けるのを横目に、俺は上に跳躍することでフルーラビットの突進を避ける。

あまりに唐突で理解が一瞬遅れるがフルーラビットの攻撃が俺に届くことはない。

脚力特化のフルーラビットは、こちらも脚力特化のネコの獣人である俺には残念ながら一歩スピードが及ばないのだ。

これがもし、俺が人間ならあっという間に心臓を貫かれ死んでいただろう。

ぞっとする話である。


「ハークス、外だ。

お前の幸運はこんなものまで招くのか?」


俺を襲ったフルーラビットを含め俺たちの幕内に侵入してきたすべてのフルーラビットを切り捨てたレインが、先ほどのフルーラビットの襲撃で布が真っ二つに開けて見えるようになった外を警戒しながら口を開いた。

それに、逃げるに徹していた俺も外を見る。

そこにはおびただしい数のフルーラビットがこちらに照準を合わせている。


「えっ?」


思わず漏れた声はただ純粋に驚きを表す。

少し前まで影も形もなかったフルーラビットの大群。

それも10や20ではない。

何百、いや、何千と存在している。


唐突の出来事に、けれど思考は急速回転を始める。

フルーラビットとは元来群れる魔物ではない。

常に単体で、厄介だが倒せないほど強いわけではない。故にBランク。

けれどフルーラビットは法則性を持って集団行動をとることがある。

例えば、フルーラビットは春先になると4、5匹の塊になって行動をとるようになる。

これはフルーラビットが子供であるシェルラビットの子育てを夫婦で行うためだ。

他にも冬になり餌場にまともなエサがなくなった時、10数匹程度の集団を作って身を守りながら少し遠出をしたりする。

ではこの数はなんだ。

4、5匹や10数匹程度の数ではない。

フルーラビットがこれだけの群れを作る理由。

思い当たるのは一つ、強大すぎる外敵から身を守る時だ。

つまり、何かから必死に命からがら逃げていて、常に臨戦態勢の状態である。

目の前にたちはだかる逃走にじゃまな困難は切って捨ててひたすら逃げ、集団で仲間を切り捨てつつでも種の存続のためにひたすら逃げる。

フルーラビットは現在そういう状況なのだ。

そしておそらく、俺とレインは切って捨てるべき邪魔な困難と判断された。

これだけの数から逃げるのは到底無理だろう。

ならば戦うしかない。


「よくわかんないですが、とにかくすいません。

取り敢えず、全力で数を減らします。

近づかれたら、俺は逃げるしかできないので。」


俺の言葉にレインは打てば響く、そんな受け答えで応えてくれる。


「全力で行け。

撃ち漏らしは俺が切る。」


レインの返事に応えることなく、善は急げと詠唱を開始する。

俺の魔法に詠唱は本来必要ないが、初見の魔法は詠唱を入れた方がレインにも内容が伝わり対処しやすいだろうという判断だ。


「天と地は凍え、あらゆるものに氷結をもたらす。

これは永久に溶かされることない氷の世界を形成し、あるゆる生命を奪いつくす。

氷はその冷結を世界に示し、天と地とが氷の世界に閉じ込められる。

そこから逃れられるものはなく、そこは一切の生命を許さない。

小さな命も大きな命も、平等な死を与えられ、美しい無が訪れる。

ここは氷の世界、生命の果て、全てを奪う美しい場所。

"永久凍土(ニヴルヘイム)"」


ヒヤリ、はじめは微かに感じるほどだった冷気がフルーラビットの大群を中心に目に見える速度で低下を始める。

空気中の水蒸気があっという間に水に変わり、氷へと姿を変えて詠唱終了と同時にほとんどのフルーラビットは凍りつきそれでもなお下がり続けたその温度に耐えきれずに魔力核を残して雲散した。

一応、全てのフルーラビットが魔力核に戻るのを確認してから魔法を解除しレインの方をむけば、俺の魔法効果範囲から抜け出した数匹のフルーラビットを片付け終わったレインがこちらに近づいてくるところだった。

次回、新しい登場人物が出てくる前にこの世界での"強さ"についての補足をさせていただきます。

物語の進行自体に関係のある話ではないので読んでくださっても読み飛ばしてくださってもどちらでも大丈夫です!


まず、純粋にレベルについてですが、この世界ではLv.50を超えると超人的な強さということになります。


それぞれの冒険者ランクの平均と人数割合は以下の通りです。


SSSランク→Lv.100(0%)

SSランク→Lv.83(0.0001%)

Sランク→Lv.78(0.0008%)

Aランク→Lv.53(0.0091%)

Bランク→Lv.48(18.93%)

Cランク→Lv.33(23.56%)

Dランク→Lv.28(20.50%)

Eランク→Lv.16(19.38%)

Fランク→Lv.8(17.62%)



数値が細かくてわかりにくいですが、ようはLv.50以上からステータスは跳ね上がり人数は圧倒的に少なくなると思ってください。

また、魔物の強さのランクと冒険者ランクは基本的にはそのままリンクしています。

SSランクの魔物を単独討伐できる冒険者=SSランク冒険者、です。

が、通常魔物討伐は高ランクの魔物でも低ランクの魔物であっても数人でペア、パーティーもしくはレイドを組むなどして討伐するのが一般的なため単独討伐はしないことが前提です。


また、ややこしいようですがレベルとステータスは連動してはいますが、個人によってレベルアップによるステータス上昇率やLv.1の時の初期ステータス、潜在能力、素質の開花等よるレベルとは無関係のステータス底上げなどに違いがあるため、低レベル=低ステータス、高レベル=高ステータスとは限りません。

例えば、Lv.40の凡人よりLv.30の天才の方が強いという場合もあります。

Lv.50の剣士の魔力がLv.5の魔導師より少ないという場合もあります。

レベルはあくまで個人における成長度合いを指していると考えてください。

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