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RE:START  作者: 神宮寺湊
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プロローグ

 


 ざくり。嫌な音と共に体を貫く刃の感触。その数瞬の沈黙の後、どすどすどすと体中を貫く衝撃が、立て続けに俺の体を襲った。

 口から溢れ出した鮮血のお陰で、ようやく自分が刺されてから立て続けに撃たれたのだと理解した。痛みはない。ただ、薄れる意識の中で、自分から溢れる血の赤だけがとても鮮明だった。

 自分の倒れる音が、やけに遠く聞こえる。誰かが俺に触れているいる体温さえ、まるで一枚壁を隔てたのように鈍く、意識しなければ、溢れ出る紅の暑さと混じって分からなくなってしまいそうだ。

 今俺を必死に揺さぶり、死ぬなと叫んでいるのは、同行した奴だろう。逃げろと言ってみたが、果たして聞こえたか。

 もう、自分は駄目だ。不意にそう思った。呆気なさすぎる死の予兆に苦笑しか浮かばない。本当にあっさりとしている。

 人の命は儚いとよく言うが、確かにそうだった。自分で体験して、初めて理解した気がする。

(さて、地獄へと行きますか)

 手が見えなくなるほど、真っ赤に染まった俺が、天国に行けないことぐらい分かってる。

(けど、1度で良いから……家族というモノに触れてみたかった)

 この世に生まれてから数十年。物心が付いた時には人を欺き、殺していた自分。理由や快楽など無い。ただ単に、そうしなきゃ生きていけなかっただけだ。

 でも、街でたまに見た家族という存在に、俺は少なからず憧れていた。利害一致で一緒に行動する奴はいたが、所詮それだけだ。あの輝いて見えた家族という温かい存在からは、とても遠い。

「けど……」

 もしも、神様というのがいて、気まぐれに、本当に気まぐれに俺の最後の願いを叶えてくれるなら。

「来世は……」

 一緒に笑って過ごせる家族が傍にいてくれますように。そう呟いた自分の声を聞きながら、俺は意識を闇へと葬った。



 

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