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-END

 目覚めた時、悲しさがこみ上げてきて、恵那が可哀想に感じていた。生き別れて、ずっと姉を探すのを目的としていたんだ。きっとまた一緒に暮らせると思っていたのだろう…それにしても不思議な感覚だった。ゲームや映画、小説に感情移入は今まであったけれども、一緒に旅をしていくと親近感が湧いてくる。


 まだログインに戻れる時間があったけれど、感情の余韻に浸りたかったのでログインはやめて帰ることにした。


 いつものようにアンケートと面談を終わらせ、発売日が決まった事を伝えられる。どうやらテスターの結果がよく、発売に踏み切ったとのことだった。特に致命的なバグもなく、テスターのほとんどが好印象だったのもある。

 テスターとしての最終日も口頭で告げられたが、近々メールで連絡するとのことだった。テスターとして参加した人には購入した時に先行ログイン特典をつけるとのことだった。

 私は迷うことなく、購入し続きを遊びたいと思った。何か引っかかっていた、このまま続けて引っかかりを解明したいという好奇心があった。


 主観と第三者視点(TPS)での操作から、現実で自分をより客観的に見ることが出来るようになってきている気がした。仕草といった立ち振舞などより意識するようになっていった。

 思考についても変化してきていた、今まで過去にあった事について思い返し、考えるようになったのだ。今までここまでゲームにハマりこんだ、感情的になったことはあまりなかった。今までのが楽しくなかったというわけではなく、もちろん楽しかった。

 だが、今回は違った。何が違うのかよくわからないからこそ、惹きつけられるものがあった。


 私はテスター最終日までテストを行って、恵那を励ましながら乃陰が眼の在処があるとされる都市へ向かっていっていた。歩きではなく、もちろん移動手段は現実で言うバスだった。ただ一日二日で着くものでもなく、キャンプをしながらの移動だった。


 そして何事もなく、テスト最終日を迎えた。


 製品版はすでに自宅にインストールされており、先行ログイン権があるため、その日から遊べるようになっていた。テスター部屋と違い、1時間ではなく睡眠時間をそのまま使用できる。またリラックス度合いも違うため、夢に深く入れる。


 私はアーリー権を使い、発売日前にログインすることにした。


 正式にログインすることとなった今、私はテスターとしてではなくプレイヤーとしてこのゲームにログインした。物語を、仲間との旅を、終わりにはしたくなった。


 そして、ログインして私は現実で記憶を失っていた事に気づく、これが何度目なのか思い出せないくらいに…プレイヤーがこれはゲームだとゲーム内で気づいてしまった場合は夢は覚めていく仕組みになっている。


 それはゲームバランスに影響を与えてしまうためだ。夢を利用してプレイしてるため、干渉できないにしてもゲーム進行に問題が生じてしまったりする為だ。だが、実際にどうだろうそんな問題はなかった、GMに問い合わせようにもログオフしてから、その記憶だけが無い。


 ログインして気づく、いつもと違う感覚、自分が操作してるようでしていない感覚だった。うまく身体が動かない、むしろ重い。

 夢の中で必死になって走ろうとしたとき、うまく走れないような感覚だった。


 そして、自分が何かに気がついた感覚になる。


『記憶喪失になった私を、助けてくれるあなたは誰?』


 その声は頭に響き、何が起きてるのかわからなかった。何よりもこれはゲームだという感覚が残ったままだった。そしてこの身体、このキャラクターが自分じゃなく「サクマ ミント」という1つの存在だと感じていた。


 何がどうして…こうなってるの…


『…あなたは誰?』


 第三者視点で自分自身を見ると不安気な顔をしていた。私の今の顔はこんな表情をしていない。試しにこの声に反応してみることにした。


(私は私よ…あなたは?)


『私は咲真 眠兎…他のことは思いだせない…』


 意味がわからない。アバターの中にもう私が存在している。いや、この世界での私がAI化したのが彼女なのかなと感じた。ゲーム内で現実の記憶は保持してるままで、現実だとその記憶が失ってる状態だし、ここで更に自分が操作出来ずにAIに乗っ取られてるとなるといよいよもってこのゲームは怪しい。


(心配しなくても、私はあなたの味方よ。名前がわからないと呼ぶときに困るし、そうね…ミナと呼んで)


『う、うん。改めてよろしくミナさん』


(ミナでいいよ)


 私の方が不安だけど、一緒に不安がっていても何も解決しない。今の自分の状況はどう考えてもおかしい、この状態で何が出来るかわからない。

 私は武具に意識を集中させ、はたしてこの状態でも使えるのか試してみたら、普通に表示された。


『えっ?なに?!』


 どうやら彼女にも見えるようだ…


(ちょっと試してみたいことがあって、試してみたの…これ消せる?)


『…む、無理みたい』


 どうやら武具の機能は私が掌握してるのがわかった。それにしてもこの現状で自分の冷静さが異常に慣れきっていた。


(OK、ありがとう)


 私はもう一人の自分とうまく付き合っていき、このゲームの謎を解明していく事に決めた。ただのバグじゃない、このゲームはゲーム内で自分がゲームをしてると思ってはいけないのにゲームをしていると自覚している。

 ログオフも任意にしようと思っても機能しない事に気がついた。今までログオフしたいとすら思わなかったのもおかしい。あのテスター部屋そのものが何か仕掛けがあったのかもしれない。

 どうせ、睡眠から起きたとしてもここでの私の記憶は覚えてない状態だろう、恐らく今のAIが持ってる記憶が現実で思い出せる記憶になる。


 さて、どうしたものかな…


 眠兎は身体を起こし、ベッドに座り下を向いてる。私が何か言うのを待っているのだろうか…


(ねぇ、眠兎…今日は何するの?)

 私は彼女に聞いてみた。

『乃陰の眼があるとされる都市までもうちょっとあるから、今日はこの町で冒険者業をして資金調達してから向かう感じ』

(よし、今日もがんばっていこう!)


 私は自分が置かれた状況をなんとなく予想してみた。もしかしたらここはゲームの世界じゃなくて、異世界なんじゃないかなと思ったりした。さすがに死亡しまくったことについてはありえないだろうって思うけれど、何が目的で私をこんな風にしているのか謎だ。


 これからのことを考えると不安しかない、この世界に初めて来たばかりの時の恐怖とは違った感覚が湧き上がる。どうやって誰に解いだ足せば納得いく答えを得られるのかわからないからこそ、私はワクワクした。


 現実の出来事なんて、調べたり辻づま合う。人の心理なんて論理式に当てはめられるようなパターンが存在する。逸脱した性格の持ち主や一種の天才や奇才は置かれた環境によって変異するものだと実証もされている。


 それに比べて、今自分が置かれている状況はどうだろう。意味がわからない状態だ。そんな中、好奇心をくすぐられていった…不安はある。恐怖はないといえば嘘になるがそれをはるかに超えるものが感情があった。

 現実では大概のことは夢を利用したゲームやセミナーなどで経験して、感情を揺さぶられ、精神的に様々なことを学び慣れすぎていた。だけど、ここは初心の状態にいるような感覚だった。

 ゲーム内でしか体験したことがなかった海を現実で初めて訪れて、ゲーム内とは違った感覚を得た気持ちがここにはあった。それは夢の中で経験する擬似的に近いものじゃない感覚だ。限りなく現実だと感じてしまっていた。


 私の感覚は麻痺していた。


 この時代、夢を利用し学力、思考力が数世代前と比べ格段と平均精神年齢や平均EQが上がり、年齢による経験差はさながら精神と時の部屋で補えてしまっていた。もちろん、脳の個体差によって差があるものの、その成長速度は実年齢では測れないものと化していた。後期高齢老害者時代と呼ばれる中、若い世代は感性が豊かになっていったが一定まで上がり切るとそれは慣れに慣れ、求める先は娯楽になっていった。


 現実はクソゲーだ。


 バグなのか意図的なのか、そもそも現実の記憶とここの記憶がおかしい。おそらく意図的だろう…狂ってる。とことん付き合って、解明してやる。女は行動力だ、縛りプレイだろうとやってやる。

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