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 目が覚めた時、頭痛がしていた。いつもこれだ…あの気まぐれでテストしに入った後からおかしい。ここでの記憶が断片的に現実では思い出せなくなっていた。致命的なバグだと気付き、現実の自分に対して強い違和感を覚えさせるようにしたり、思いが強い時に強制ログアウトを試みたがダメだった。


 以前、メモを残した内容…そう機器がないのに関わらずログインしたことを紙に書いたものさえ見ればきっと思い出すと思っていた。あれはかばんの中にしまったままだ、かばんの中身なんてそうそう取り出して整理しない自分なので、見つかるのがいつになるかわからない。


 たとえ見つかっても思い出せるかどうかは別だ…


 あれ以来、機器がない時にログインする回数も多くなった。カフェでうつらうつらして、一瞬でこっちにログインすることが多くなった。

 明らかに異常状態にも関わらず、武具がメンタルケアを行い冷静にしてくれる。その都度、どうしたらこの状況を冷静に打破出来るのか思考するのだけど、答えが見つからないままになっていた。


 アーリーアクセスで今、ログインしていることで他のプレイヤーを探すしていくしかないと思った。現状問題、この会社はゲームを使って何らかの実験を行っていると思った。何のためにかはわからないし、とにかく利用されているというだけで不快だった。


 ゲームそのものは面白いし、楽しめてる。しかし、ここでの自分と現実の自分の記憶障害が発生してる時点で不安だった。

 もし、このシコリが解消されたとして、現実の自分にフラッシュバックされるとどうなるのか、という不安があった。


 悩んでいても仕方ない、毎回ログインする度に同じことを考えるが答えが見つからないからだ。


 頭痛は毎回起こり、気になったけど、すぐに収まるのでいつのものことだった。


眠兎「はぁ…」

 ため息をつき、物語を進めようと思った。なんだかんだで、悩みはあるがゲームには悩みはなかった。楽しいからというのが大きかった。だけど、とりあえずこのバグ現象の大元にはイラついていた。


 コンコンッ


 ノックする音が聞こえ、返事をすると恵那だった。寝起きだったので食堂に先に言っててと伝え、支度を行った。遺跡にある世界の縮図を使い、RIO傭兵団の近くの町まで来て今日はそこに泊まっていた。

 恵那のお姉さんがいるとされるRIO傭兵団…彼らは大所帯ゆえに町ではなくキャンプ地を作り拠点としてるとのことだった。ここは壁にもっとも近い町と言われていた。その分、傭兵が多く冒険者も傭兵よりも少なかった。

 治安は内地に比べれば悪いが、そこまでひどいものではなかった。町として機能していてギルドも問題なく機能していた。


 私は重装状態に移行し、食堂へ向かった。食べるときは頭部開けるが、上の部分だけはそのままで下の部分のみ開閉することが出来たのでそれで飯を食べることにしていた。


 三人で朝食を済ませ、RIO傭兵団のキャンプ地へ向かった。重装状態での行動は今でも奇異な目や恐れられて見られていて苦手だったがオドオドしていてもはじまらないし、いい加減慣れた。

 キャンプ地まではそう遠くはなく、歩いて1時間もしない距離だった。近くまで行くと見張り役というわけでもなく団員の一人が声かけてきたので、恵那は自分の名前を明かし、姉の名前を出し接触をしようとした。


 私は、レーダーマップで異常を感じ取った。恵那が自分の名前を明かし、姉の名前を出した後に警戒時のような動きをし始めたのだ。何かがおかしいと感じた。


 キャンプ地の中には入っていないので、取り囲まれる状態ではなかったのが幸いかなと冷静に思っていた。秋導院美夜から恵那のことを本当に本人か?という質問をしていたのがお互い頭にひっかかっていたからだ。


 私は二人にレーダーマップを共有し、こちらからは見えない位置で人が増えているのがわかった。まだもうすぐで昼ということもありキャンプ地は騒がしかった。その騒がしさのまま、こちらがわを警戒し、配置つかせているのはただの傭兵団ではないと感じさせた。


 待っているとブカブカなローブを着た、背の低い人が現れた。

「こんにちは、飛翔恵那さんですね?飛翔那美さんの弟と証明出来るものは持っていますか?」

 顔がフードに被っていて素顔が見えなかった。身長差もあり、相手の表情が見えなかったが口調からすると礼儀正しそうに思えた。


恵那「こんにちは、突然来て驚かれたと思います。対応をして下さりありがとうございます。弟という証明に、これが父と母の形見になります」

 恵那は耳につけているアクセサリーをローブを着た者に見せる。


「少し、預かり確認してもよろしいでしょうか?本物かどうか本人に確認を取りたいのですが大丈夫でしょうか?」

 たった一つの形見だし、恵那はどうするのかなと思った。傭兵団であり、盗賊団だから盗むとかそういうのはないと思うけれど…


恵那「わかりました。大事なものですのでお願いします」

 恵那はローブを着た者に渡す。


レンツ「申し遅れました、私の名前はレンツ・イツ・オータムと申します。では、こちらを預からせて頂きます。」

 レンツの声は、若く子供かなと感じさせた。声からして男なのはわかった。彼が恵那の形見のアクセサリーを受け取り、それを見た後に、近くにいた団員の一人が近くまで駆けつけた。

 レンツはその団員に対して、私達も聞こえるように言った。

レンツ「これを本人に確認させてください、そして返答もお願いします」


 そして、私達はその場で待つことになった。特に話すこともなく、なんとも気まずい雰囲気だった。そして、3分もしないうちにローブの男性は口を開いた。


レンツ「確認がとれるまで暇なので手合わせしませんか?飛翔那美さんの弟ということで力量が気になります。よかったら戻ってくるまでどうでしょうか?」


 確かに暇だったので、面白いなと私は感じた。一対一だと恵那は相手の行動を封鎖する。秋導院美夜のような化け物になると別だと思うが、実際に傭兵相手にはどのくらいどのくらいの力量なのだろうか気になった。

 私はよく恵那と手合わせという鍛錬してもらっていた。剣や盾の生成範囲もそこまで広いわけではなく剣を持っている場合は、剣が届く範囲までだった。最初から生成され、装備されている状態での戦闘だったが私自身強くなっていくと同時に生成させたりするくらいになった。

 今の恵那は腰に剣を携えているだけ、なので手合わせで盾を生成させるような相手だと強いのかなと基準が出来た。乃陰や恵那は相手が自分より格上だとなんとなく感じるらしいと言っていた。私はそういうのはよくわからなかった…マジわからん。


恵那「ええ、構いませんよ」

 恵那は鞘に入ったままの剣を手に持つ

レンツ「では、どちらかの身体に一太刀入るか、確認がとれるまでにしましょう」

 レンツはローブの中から奇妙な形をした棒を持った右手を出した。

恵那「え、あなたとですか?」

 まさか、この子供と手合わせになるとは思いもよらなかった。私も、まさかと思ったのだ。周りで気になってる人や誰かを呼んで手合わせすると思っていたからだ。

レンツ「はい、お手柔らかにお願いします」

 と言ってはいるが、持ってる武器は奇妙な棒…ナイフなのかな、あるいはローブの下に武器を他に隠し持ってるとかなのかな…


 乃陰と私は恵那から離れ、様子を見ることにした。恵那は自分よりも子供相手にどうしたらいいのか悩んでいた。


レンツ「あ、お気になさらず稽古するような感覚でも構いません。よろしくお願いします。あっ、誰か合図を」


 近くにいた、団員の一人がコインを取り出し、それが地に落ちたら開始の合図になった。恵那は相手が子供に見えても、油断ならない相手として構えをとった。


 そしてコインが地に落ち、手合わせが開始された。

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