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恵那のお姉さんがどこにいるのかわかり、それに向けて動く事になった。秋導院美夜とは特に何もなく別れる事になった。
美夜「ま、そのうちまた会えるでしょ、何かあったらこっちから探すし、ほんじゃね~」
と言ってぶらりとどこかに行ってしまった。どこに行くんだろうと気になって聞いてみたら
美夜「企業秘密~」
謎だな~と思った。そういえば、昨日の夜に乃陰と会ってるのがレーダーに映っていた。秋導院美夜にもロックオンしているので同じ町や近くにいたら次からは表示されるようになっていたのだ。二人が夜会っていたのは気になったけれど、詮索するのもなんだかなと思ったので聞いていない。
あ、そういえば黄拳士や心創士について聞くの忘れいていた…まあ、本人に聞けばいっか
眠兎「ねぇ、黄拳士とか心創士って何?」
二人に聞くと目をそらした。おい、乃陰お前は目が見えてないだろ、顔逸らしても意味ない。乃陰の方を思いっきり凝視してやった。
乃陰「チッ」
とんでもなく説明したくないような感じなのは伝わってきた。
乃陰「眠兎、お前に話すと絶対に厄介だから隠していたんだよ」
なにそれ私がまるでトラブルメイカーだと思われてるんだけど、心外なんだけど
恵那「う、うん。ごめんね…黙っていたのも、この名称は―」
様々なギルドで高ランクになると称号が付与され、一種のステータスだそうだ。称号有りと無しとでは持ってる方が待遇がよく、依頼も指名されたりもするらしい。
まあ、そんなことだろうと思った。多分、私も称号が欲しいとか言うと思って黙っていたんだろうな
眠兎「別に私は欲しいとは思わないよ」
二人に驚かれた、そういえば…ギルドに登録はしたけれど数えるくらいしかギルドに行ってない。
眠兎「そういえば、ギルドに行きたいんだけど?」
二人は微妙な顔をした。明らかにギルドには足を踏み入れてほしくない顔だ。
眠兎「な、何よ?なんか問題でもあるの?」
恵那「う、うん。実はね…」
・・・
眠兎「ぶっ殺す」
乃陰「ほらな!ほらな!こうなると思ったんだよ!」
恵那「やっぱりか…」
どんな問題があったのか、一言にすると「セクハラ」だ。とりあえず女冒険者は絡まれる、絡まれ方が下品なのは男冒険者が多いのもある。言うまでもなく男社会で形成されているからだ。
魔法使いやそういった筋力のみで解決するような世界観じゃないからそれは仕方ない。うん、仕方ない。
だが、言ったやつは相応の目にあってもらおう。
乃陰「いいか、眠兎…言ってくるやつをいちいち相手して倒せるだろう。だがその先に何がある?」
眠兎「能書きはいいわ―」
乃陰「眠兎、今は謎の武具使いで通ってるがな…棒を使ってるのを知れるとなんて言われるかわかるか?」
ハッ
いやわからなかった。わからないことに…あ、ダメだ乃陰は私がわかったことに気づいてる。クソ
乃陰「な?俺らは気を使ってそういうバカどもから遠ざけてたんだよ。確かに言ってくる奴ら全員倒して黙らせるのもありだ。でもな…それを聞いて腕試ししたい奴が来たりすると大変なんだよ」
恵那「人探ししてるのに逆に探され戦いを申し込まれたり、いらない恨みを貰うよりも平和だしね…」
ってことはギルドには一生行けないってこと?!
眠兎「私、いいこと思いついた。フルプレートアーマー状態だったら何も言われないんじゃない?」
恵那は固まっていた。乃陰は一瞬固まり、何か考える仕草をした。
乃陰「あの状態のお前って自我保てるの?いやむしろ危険度が増してるイメージなんだけど…」
恵那「どうしてもそんなにギルド行きたいの?」
眠兎「私思ったの、確かに二人が心配してくれるのはわかる。けれど、ちゃんと自分で稼いだり依頼を受注したりしたいのよ」
女は行動力だ、あれこれ気を使ってくれるのは確かに嬉しい。だけど、ここは冒険の世界だ。冒険してこその楽しみ方だ。
恵那「わかった、何かあった時は助けるよ」
乃陰「ああ、もちろん俺もだ。周りのバカな冒険者が死んでしまうのがあまりにも悲しいからな」
恵那「そうだね」
眠兎「ちょっとー!」
私は血に飢えた猛獣か!そりゃあ、よくありがちな絡まれイベントで返り討ちにするというお決まりをやってみたいけれどさ…死んでしまうとかどんな目で私を見てるのよ。
乃陰「さっきぶっ殺すとか言ってたじゃねえか!」
眠兎「え?そうだっけ?まあ、そんなことよりもちょっとアーマー状態になれるか試してみるね」
出来るかどうかわからなかったけれど、多分行けるんじゃないかなと思って、意識を集中して暴走状態時の見た目を意識した。
結構ゴツく威圧感があるし舐められないだろうと思ったからだ。問題は武器の棒だが、常時ビーム刃を出すのはさすがにやめよう。秋導院美夜が正体不明の武具使いと言っていたのでわざわざ手を明かす必要はない。
意識を集中していくと、画面がポップアップし、重装状態に移行しますか?と出てきたので肯定の意思を画面に向けた。
インナーがスルリと身体に広がっていき、軽装だった装備が変化していった。胸の部分が更に厚みを増し、胸から下腹部にかけてアーマーが形成されていき、腰回りに軽装時のポシェットが更に拡張される。
しかし、軽装の時と違い収納ポシェットに見えない装甲に変わっていた。そこから前垂れとサイドアーマー、バックスカートが形成された。見た目姫騎士みたいなシルエットに見えなくもないと思ったりした。
脚はインナーが人工筋肉と思わせる盛り上がりを見せ、その上に簡易装甲が形成され、それがつま先まで一体感のあるブーツのような装甲が形成され、ヒールが形成され視界が高くなった。同時に、胸の部分から肩、腕、手先にかけて装甲が形成されていった。
頭もインナーが後頭部から包み込んでいき、ツインテールに結ばれた髪が解かれていき、ポニーテールに変わる。頭部全体にぴったりとマスクがされた状態になり、後頭部からポニーテールとトレンドマークのうさみみが出て異様な感じに変わる。
その後、後ろの首元から装甲が伸びていき、頭部装甲が形成されていった。うさみみもよりシャープに伸び、ウサギ面のような装甲が形成されていく。目の部分は固めに二本の突起が伸びており、どこから視界を確保しているのかわからない風貌になっている。
重装状態が完成するまで、3秒もかかってなく、二人は驚いて後ずさっていた。
乃陰「あ、改めて見ると怖いな…気になっていたんだがそれどうやって外を見てるんだ?」
眠兎「視界は普段と変わらないよ、どういう仕組みかわからないけれどね」
そして、私は口の部分をガバッと開け中のインナーで保護されている顔もそれに連動して上下に開いた。
恵那「うわっ!!!」
眠兎「どう驚いた?」
してやったりとした顔をして二人を見た。
恵那「手を使わずに開閉することが出来るってすごいね」
私は再び閉じて、面白いものを発見したので声に出した。
眠兎「どう面白いでしょ?」
恵那「だ、誰だ?!」
乃陰「すごいな!声まで変えれるのか!」
恵那「今の眠兎がやったの?!」
ボイスチェンジャー機能があったので使ってみて、男の声にしてみたが、これなら大丈夫だろうと思った。
眠兎「これなら大丈夫でしょ」
こうして私はギルドに出入りすることが可能になった。ギルドの依頼がどういうのがあるのか見ることが出来るようになった。仕組みやランクなどは二人から聞いた。
そのうち一人で依頼を受けたいなと思ったが自分のランクが低い事に気づき、頭を抱えた。こんな風貌でランクが低い依頼とかどう考えてもおかしい…まあ、そのうち考えよう。
乃陰「さて、これからのことだが…」
生活費はまだ余裕があった。世界の敵を捕縛した功績はかなり高いんだなと感じた。壁近くの戦場に向かえば、会える確率が高くなると考え、向かうことになった。
眠兎「大まか過ぎない?」
世界の縮図で以前見た時、壁はかなり広範囲だった。端から端まで探すとしてもかなり時間がかるんじゃないかと思った。
乃陰「傭兵団の契約相手は誰なのか、どこで戦っているのか、そういった情報はここらへんじゃあ、わからないしな…現地に近い所に行かないとダメだ」
恵那「問題は、眠兎の武具を狙ってる奴らと出くわす可能性が高くなる」
眠兎「あーもうー!めんどくさい!どうしてこうなったー!」
そこで気付いた。レーダーあるじゃん、と…問題はどのぐらい精度があるのか効かない相手がいるのかなど、不安を覚えることもあるがある程度は大丈夫だろうと思った。
眠兎「思いついた、乃陰ってそういえば気配って消せる?」
乃陰「突然だな、まあ…狩りもやっていたから消せるが、それがどうした?」
眠兎「ちょっと消してみて」
乃陰が肩をすくめながらも、気配を消してくれた。正直、目の前にいるとわかってはいても何も感じなかった。すごいな
おっと、関心してる場合じゃなかった。レーダーを確認してみると変わらず表示されていた。うーん、気配を遮断してもレーダーを見ると表示されるってことは気配を消してもわかるってことか
眠兎「ありがと」
乃陰は気配を戻し、普段どおりにした。
乃陰「なんだったんだ?」
眠兎「襲撃してくる奴が気配消してきた場合、私でもわかるかなと思って試したかったのよ」
乃陰「だからって目の前で消したとしても見えていたら意味ないだろ」
眠兎「別の感覚が引っかかるかどうか、みたいな感じよ。まあそれを確かめたかったの」
恵那「とりあえず、事前に状況が把握は出来るってこと?」
眠兎「うん、そういうことね。それでいつどこに向かうの?」
私はこの世界の地理が全くわかってないからね、二人に任せるしかない。
恵那「そこは眠兎にお願いしたいんだ」
乃陰「ああ、俺からも頼む」
二人の言っている意味がわからなかった
眠兎「え?どういうこと?」
答えは世界の縮図だった。以前、私が死亡しまくった黄金の民の遺跡で見れたリアルタイム型の世界の縮図だ。そこで壁から近い範囲の集落や村、町、都市をチェックして行き先を決めるという流れだった。
確かに、あれを使えば場所がわかるし、長旅をするよりも効率的だ…この二人よく思いついたなと思った。
そうして、数日間、あの遺跡に通うことになった。ギルドから再調査の依頼があれば、それを受注したり、その近場で採取系の依頼があった場合は請け負ったりもした。せっかくギルドに行けるようになったので活用した。
なお、ギルドに行った時にイベントらしいいざこざもなかった。ていうか、みんな怖がっていた。受付の人も震えてた…涙ぐんでいた…頭部を開けようとすると食べないでって言われた。
かっこかわいい系をイメージしたけれど、どうやら世界観的にこの格好は怖いらしい…




