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気分が悪くなりそうだった、まだ私は夢を見ているのだろうかと思えた。このままもう一度寝て、起きたら元に戻るだろうと思いたかったが―思えなかった。この状態が普通だという感覚、慣れてきているのを感じてきたのだ。
あの狼が言っていたチュートリアルというのもわかる気がする。さっきまでのあの悪夢のような出来事も自分は自分を第三者の視点で見ていた。私自身、意識がより明瞭になってくると同時に何が起きてるのかわからなくなってきていた。気が付いたら突然襲われていたこと、さっき見ていた夢のこと、すべてにおいて意味がわからなかった。もう一度寝たらあの狼に会えるかなと思った時だった。
部屋のドアが開き、二人の男が入ってきた。ばっちり目が合ってしまい、心臓が飛び跳ね身体が強張る。
「お、気が付いたようだな、大丈夫か?」
いきなり部屋に入ってきて、何を言ってるんだと思った。
「何か争ってる音が聞こえて駆けつけた時には爆発したから驚いたよ」
さっきのは夢じゃなかった…
見た感じ、二人は武器などは持っていなかった。とはいえ、男二人に女一人、密室である。正直、今までの出来事を振り返ると決して安全ではないなと思い警戒心が強くなる。
服は着ていたが、ベッドのシーツで自分を隠した。
それを感じ取ってなのか、二人は近くにある木製のテーブルと椅子に腰掛けて、状況を説明しはじめ、ここに運んだ経緯を話してくれた。私もベッドの中だと何か居心地が悪くなり、ベッドから出てベッドに座る。椅子は2つしかなかったので自然的にそうなった。
自分の服装が彼らと違ったけれど、特に変とは思わなかった。彼らの服とはデザインが違い、ピッタリしたインナーがほぼ全身に覆っている。その上に柔らかいが非常に弾力性のある服が身体のいたる部位に付随してるような服だった。
どうやって着たのが自分でもわからなかった。
私がいたところはここ近辺に最近出没した盗賊一味がいる場所で彼らはその根城にしてる場所の探索をしていたとの事、その探索中に物音が聞こえて、様子を見に行ったところ爆発がありその現場に私は倒れていて、放っておけなかったのもあり、救助したとのことだった。あのまま放っておいたら他の盗賊の仲間がやってくる可能性がある危ない場所だったという。
「助けてくれて、ありがとうございます」
とりあえず、お礼を言い、頭を下げる。どうやら悪い人たちではなさそうな気もしないでもない。
「見たところ、装備からすると君はここらへんに住んでる人じゃないのはわかるんだけど、あんなところで何していたんだ?」
若干青みがかかった髪のアシンメトリーの青年が聞いてきた。
「私にもよくわからない…」
正直、思い出せない…なんでだっけ…?
「たぶん、どこからか飛ばされて、たまたまそこに落ちたんじゃないか?」
「じゃあ飛ばされて、そのショックで記憶がまだ一時的に混乱してるってことになるのかな、装備も変わってるしねぇ」
ウェーブがかかった髪をし、室内なのにゴーグルをしてる青年がニヤけながら私の装備を変わってると言っている。室内でゴーグルしてる奴に言われたくないと思い口にだそうと思ったが黙っていた。
改めてて自分がどういう格好をしてるのか見てみたら、何製なのかわからない軽量で動きやすい素材で出来た上着とパンツが一体になってる服だった。どうやって着たのか自分でもあいかわらずわからなかった。
とりあえず、なんかエロい…なめかましいってやつだ。だが、室内でゴーグルしてる奴には言われたくない。
「君が倒れていた場所には、他に何も落ちてなかったし、飛ばされて来たとしても謎だな」
「その飛ばされるってどういうことなの?」
さっきから飛ぶとか、人って空飛べるの?
この時、私は記憶を本当に思い出せない事に気付いた。そして私が質問したら二人は、驚いていた。彼らからしてみると自分がなんであの場所にこんな格好でいるのかわかっているものだと思ったからだろう。
そこでまずは認識合わせというか自己紹介をし合った。